フォードが過去の名作をリバイバルする復刻物語を始めたのが2000年前半。サンダーバードに始まりフォードGT、マスタングと続き、ちょうど取材日前日にブロンコが登場した。
他メーカーの方から言わせれば、「いつまでそんな低レベルな新車開発してるんだ」ということになるのだろうが、われわれにしてみれば、よくわからんデザインの新車が登場するよりは、「まだ期待が持てる」と思っているし、アメ車の場合、過去の名作がたくさんあるだけに、それらを現代版にリテイクすることは悪いことではないと思っている。
今回登場した新型ブロンコも、なんだかんだ大人気だというし(本国で)、日本での評判もそれほど悪くない。
で、今回たまたま偶然だが、復刻版のマスタングの初期モデルの取材ができた。この年代のマスタングは2005年に登場し、モデルチェンジを繰り返しながら2014年まで続いたモデル。
この初期型はまさしくマスタングデビューの64年モデルがベースだが、後半(2010年以降)は67年型をデザインベースにしているから、後半しか知らない方々にはこの初期型が妙に古臭く見えるかもしれない(笑)
ファーストマスタングに原点回帰してデザインされたこのフォルム。ロングノーズ・ショートデッキのプロポーション、往年のファストバックをイメージさせるルーフラインなど、昔のマスタングの復刻モデル。
リアも独特な台形のヘッドライトハウジングに縦型3連のテールランプなど、旧デザインの意匠が用いられる。
だが、今改めてみると、「この古臭い感じが妙に懐かしい」と思ったし、商品としても非常にまともだった。取材した個体は2007年型。V6エンジン搭載のMT車。フルノーマルの走行13万キロ超。
走行距離だけを聞けば「それなりかな」とも思ったが、実際に乗ってみると想像以上にシッカリしており、またMTの操作性も極めて良く、体感的に「まだまだ走れる」と思うだけの状態が感じとれた。
それにしても「うまく復刻デザインしているな」と取材中何度も唸っていた。初代マスタングのロングノーズ・ショートデッキのプロポーション、往年のファストバックをイメージさせるルーフライン、そして独特な台形のヘッドライトハウジングに縦型3連のテールランプなど、全体の統一感が素晴らしい。
これはこれで妙に完成しているから、「古臭いけどいいね」を連呼。現代の最新アメ車は、妙にパキパキしたマッチョ系のデザインが多いから、このふんわりした柔らかいタッチのデザインに非常に好感が持てる。
一方で、搭載されるエンジンは4リッターV6。当時のスペックは213psということだから、それほど速いということはないが、それでも妙に感覚的に訴えてくるエンジンであり、まるで音質チューニングされているかのごときサウンドを響かせドライバーをめちゃくちゃ刺激する。
搭載されているエンジンは、4リッターV6で213ps、トルク33.1kg-mを発生させる。決してパワフルではないが、濃密なエンジンサウンドとエキゾーストノートによって、ドライバーを高揚させる魅力でいっぱいなエンジンに仕上がっている。
古典的な味わいを演出するインパネ。ステアリングの大きさなど、絶妙なため違和感を感じることはまったくない。逆にその緩やかな雰囲気に浸ることができ面白いはず。ただし、全体的な質感はあまり高くはない(笑)。
古典的なフォントを用いたアナログメーターが車体によくマッチしている。またMY colorイルミネーション付き6連メーターパネルと呼ばれ、計125色のカラーリングでメーター内を色替えできる。
いや~、絶賛です。決して速くはないが、サウンドが素敵。運転していて面白い。クラッチにクセもなく、MTもなかなかの小気味よさで、楽しい。
アクセル操作をするたびに「ドゥルルルル…」っといった低いうなり声を発生し(まるで大昔のエンジンのように)、恐く燃費はそれほど良くないだろうが(笑)、間違いなく運転していて面白く気分が高まっていく。しかもこのデザインである。
一方で、足回りは非常に穏やかな印象だ。道路の段差を「タンッ」とは越えず、「バタンッ」といった感じではあるのだが、その感じが古いアメ車の味わいにそっくりで、これまた「微笑ましい」とニヤけてしまう。ただ、ボディ全体の剛性感は現代的であるから、安っぽさは微塵も感じない。
サスペンションのロール量は過大ではなく適切であり、昔のような恐怖感を感じるほどのものでは全然ないから、まさしくエンジンパワーとの絶妙なマッチングが堪能できる足回りと言った感じ。
搭載されるミッションは、今や懐かしきの5速。シフトは明確かつ適度にタイトでストロークも適量。クラッチ操作とストローク量が適切だから、本当に運転しやすいMT車。
シートカバーをあえて取らず撮影。全体的に中古車としてのヤレは少なく、シートの状態も良好。
真横からのファストバックスタイルも絶妙。
この当時のV8とV6モデルとの違いは、外観ではV8が4灯ヘッドランプなのに対し、V6が2灯となりリアスポイラーが省かれる等若干変わっている。取材車はまさしく2灯のV6モデル。
ブレーキも、究極の安心感とまでは言わないが、それでも確実に速度を殺すタイプだけに、自信を持って走ることができる。走りに関して言えば、完全に古典的な味わいだが、あえてわざとそう設えている感じがするだけに、「わかってるなぁ」という気がする。一般道をのらりくらり走っているだけなのに、かなり楽しいのだ。
エイブル代表の原氏は「V6とはいえ4000ccもあるし、こういったクルマで走りの楽しさを味わったり、走りを覚えたりするのにちょうどよい素材だと思います。まさしくアメ車の入口にどうぞ、といった感じですね」
MTの操作系にクセがないから誰でも普通に運転できるだろうし、それでいて濃密なアメ車風味が味わえて、しかもオールドテイストなデザインがあって…。
気になる走行距離の部分に関しては、まったく影響がないとは言わないが、それでも旧車を維持するよりは10倍は楽と言えるだろうし、消耗パーツに困ることもまだ年式的もないだろうし、何より今やほとんど見かけない初期型に乗っているということに価値が見いだせる方なら、絶対に気に入ってもらえるはず。
とはいえ、200キロの世界に興味がある方には全然向かないし、そういう方は是非新型を買うべきだし、ちょっと古いものに興味があったり、ファッションテイストとしてこの初期型が気に入ったというような方になら、逆に断然オススメと言いたい個体だった。
この個体の長所は、距離の割りに社外品パーツがほとんど使用されていないこと。だからガタガタになっておらず、消耗品の交換のみで生き返らせることが可能になる。
この年代のV6モデルのボディは至ってシンプルなので、この素敵なボディラインは絶対に維持したい。なんせ官能値が高いだけに、乗ると絶対に興味を持つはずである。
19,404円
PERFORMANCE
6DEGREES
19,998円
PERFORMANCE
6DEGREES
3,480円
MAINTENANCE
GDファクトリー千葉店
48,070円
EXTERIOR
6DEGREES