TEST RIDE

[試乗記]

チャレンジャーのSUV版のようなマッスル的存在

2018 グランドチェロキーSRT8

右ハンドルディーラー車ベースの6.4リッターV8エンジン搭載車

グランドチェロキーベースのモンスターSUV、その名も「SRT8」に試乗した。

更新日:2022.11.09

文/石山英次 写真/古閑章郎

取材協力/エイブル TEL 044-857-1836 [ホームページ] [詳細情報]

ジープ系も得意なエイブルが放つ現代版マッスルSUV

 サードカマロやシボレーコルベットC4等の90年代を代表するハイパフォーマンスモデルを扱っているエイブルでは、近年のハイパフォーマンス系モデルも扱っており、最近ではグランドチェロキーSRT8を積極的に探している。

 というのも、エイブルといえばサードカマロといった印象があるが、一方でジープ系の取り扱いも多数あり、例えばグランドワゴニアだったりカイザーワゴニアだったり・・・、そうした魅力的な旧時代のジープ系モデルを扱っている延長線上の存在とSRT8を考えているからである。

 と同時に、現代的なパフォーマンスカー、例えばチャージャーSRT8やキャデラックCTSV等を扱っている関係から、現代パフォーマンスカーに対する認識やパーツの互換性等の情報を持っており、そうした流れからSRT8が十分に魅力的存在という認識を持っている。

 ということで、入荷したての2018年型SRT8ディーラー車に試乗した。

▲2018年型のSRT8。走行約9万5000キロの個体。もちろんディーラー車。

▲全長×全幅×全高:4850×1985×1800ミリ、ホイールベース2915ミリ、車両重量2400kg。

 このSRT8は約9万5000キロ走行ということで、その距離数だけを見れば「若干多いな」と怯むかもしれないが、聞けば「あえて九州地方から仕入れた」ということで、エイブルのネットワークを駆使した情報網から「良質車」との見立てを行い仕入れたということだから、距離数に惑わされない状況把握をしっかりしたいと思う。

 というか、正直に白状すると、筆者が距離数を知ったのは車両を返却するときであった。で、なぜそう思ったのかは不明だが、勝手に4万9000キロと思い込んで走り回っていた。

 だが、それでもヤレ感が全くなかったから、返却時に距離数を知ったときには通常の三倍くらいの驚きがあった。

 ということで、まずはSRT8についてざっくりと。この型のSRT8は2012年に登場し、2014年モデルでマイナーチェンジが行われており、そのマイナーチェンジ後のモデルたちの人気が特に高い。

 ボディデザインは、オフロードをイメージさせるジープらしくなく野性的なフォルムをまとい、フロント正面から見たマスクの強面感は圧倒的であり、特にフロントマスク、ヘッドライト周りの造形が変わったことにより、一層凄みが増している。

 搭載されるエンジンは6.4リッターV8HEMIで、468ps、最大トルク63.6kg-mを発生させる。いわゆるチャレンジャーのR/Tスキャットパックと同様のエンジンであり、この仕様で0-60mph(約100km/h)までの加速はわずか4.8秒、ゼロヨン加速13秒台中盤と、当時の世界中のSUVの中でもダントツの数字であった。

▲搭載されるエンジンは6.4リッターV8HEMIで、468ps、最大トルク63.6kg-mを発生させる。速さは言わずもがな。好きな人にはたまらないビート感。

▲295/45ZR20インチタイヤに大径ブレンボブレーキの組み合わせ。まるでマッスルカーのような豪勢な装備である。

▲オフロードのイメージがあるグランドチェロキーからは想像がつかないインテリア。チャレンジャー&チャージャーSRT系の意匠によく似ているインパネの雰囲気。

▲メーター周りのデザインや質感にも好感。視認性も良好。中央にあるタコメーター、そして300キロまで刻まれたスピードメーターがこのクルマの性能を物語る。

 SRT8専用のエクステリアには各部にエアロが装着され、車高をダウン、エアダクトがただならぬ雰囲気を醸し出しており、足元にはブレンボ製ブレーキ(フロント6ピストン、リア4ピストン、ローターはフロント15インチ、リア13.8インチ)と295/45ZR20インチホイールを装着する 。

 一方インテリアは、クロームパーツとカーボン素材を組み合わせたスポーティなもの。ピラーにはスエード布が貼られ、高級車としての質感も圧倒的に高い。シートは、ホールド性に優れたSRT8専用のバケットシートが奢られる。

 で、ディーラー車ベースであるから右ハンドルであるが、まったく違和感なく着座できる。考えようによっては、あの6.4リッターV8エンジンを右ハンドルで乗れるのだから人によっては価値が高い、とも言えるのではないだろうか。

 ということで早速試乗してみる。ステアリング左側にあるボタン操作にてエンジン始動。それにしてもジープらしくないSUVである。スターターボタンを押した瞬間にチャレンジャーやチャージャーを連想させる獰猛さ。そして振動。重低音サウンドを轟かせ、極太ステアリングと硬質なシートがSUVであることを忘れさせる。

 もう何度もチャレンジャーを取材しているから分かるが、SRT8に装備されているステアリングの形状やグリップの太さはヘルキャットと同じである。そんなステアリングがまた素敵である。

 そして走り出した瞬間の硬質感。そして物凄い振動とエンジンパワーの衝撃。だがそれをまったく苦にしない強固なボディが与えられている。これまでかなりの数のアメリカンSUVに試乗してきたが、これほどの感触はフルサイズSUVでは味わえない。ちょっと想像を絶するマシンである。

▲2014年から新たに搭載された8速ATは、小刻みな変速を繰り返しV8エンジンの性能を余すことなく発揮させる。

▲ステアリング周りやパドルシフトはヘルキャット用と同じパーツ。

▲スエード素材のシートのホールド性はかなり高い。その分、中古車となれば若干のヤレは致し方ない部分。

▲乗ればこのクルマの魅力が一瞬にしてわかるはず。いわゆるマッスルSUVの瞬発力とハンドリングに感動するに違いない。

 しかも明らかに速い。動き出した瞬間の振動やエンジンサウンドからも「速さ」が感じられるし、実際にアクセルを踏んでも「速い」のだが、それでいて乗降性や居住空間はSUVなのだから極めて楽チンであり、チャレンジャーのようなタイトなスポーティカーが好みの方であればそれはそれで良いが、一転タイトなスポーティカーよりもちょっとラフなSUVが好みという方であれば、このグランドチェロキーSRT8以上の存在はないだろうと断言できる。

 ちなみに、この当時のキャデラックエスカレードは6.2リッターV8エンジン搭載で426hpを発生させていた。SRT8はそれよりも車重が約300kg軽く50hpパワーが多いのだから、その速さといったら! 簡単に想像出来るはずだ。

 というか、個人的にはこのSRT8のみ「モパー系マッスルSUV」と称したいし、もっと言えばチャレンジャーのSUV版と言ってしまっても差し支えないと思っている。

 ちなみにSRT8はグランドチェロキーではあるが、この年代は2列シート5人乗車モデルであるから、イマドキの3列シート7−8人乗車SUVが欲しければ(ミッドサイズ以下で)、最新のグランドチェロキーLか旧時代のエクスプローラー&デュランゴ、または国産系ミニバン&SUVを求めるしかない。

 で、この個体、冒頭で申し上げた通り驚くほど状態がいいのがよく分かる。特に走っていても嫌な低級音や異音は皆無であり、ステアリングの反応も十分に素早く、実際にヤレを感じさせるのはスエード素材のシートくらいであり、走る部分に関してはかなりシッカリした個体である。

 おそらく、関東近県でストップ&ゴーを繰り返しながらチョロチョロ走るといったよりももっと交通状況の良い田舎道を淡々と走っていたからの距離数であり、だからこその距離数と程度の良さが保たれているのではないかと予測される。

 この年代のSRT8は、積極的に直輸入された車両は少なく、そのほとんどが国内ディーラー車ベースと言っても過言ではない状況である。すなわち個体数がそれほどある車両ではないからこそ、探していた方はチェックしてみると良いと思う。想像以上に良い状態にきっと驚くに違いないから。

▲リアシートの状態はまるで新品のよう。前オーナーの使い方がなんとなくだが想像出来る。リアシートは若干リクライニングするから窮屈感は皆無。

▲2列シートの5人乗車であるから、リアには広い荷室が存在する。リアシートは6:4分割の可倒式。

▲オフのイメージのあるグランドチェロキーだが、SRT8は路上でこそ威力を発揮するのかもしれない。

▲まるで黒い弾丸のような勢いで疾走する。

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