TEST RIDE

[試乗記]

スポーツトラックは生活を激変させてくれる相棒

2009 フォード エクスプローラー スポーツトラック

レアモデル故に人とかぶることがないSUT

4代目エクスプローラー時代に存在したスポーツトラックを取材した。

更新日:2023.03.07

文/石山英次 写真/古閑章郎

取材協力/ABE CARS Tama Garage TEL 042-311-0041 [ホームページ] [詳細情報]

単なるピックアップとは一線を画す

 たとえばひと昔前のピックアップトラック(1990年代)は、荷台を荷物運搬に使うことが一般的で、だからアメ車の場合、リアにリーフサスをして貨物的な乗り味を示すのが一般的だった。

 SUVは、そのピックアップの荷台部分にキャノピーを載せた状態を作り、乗員を安楽に移動させることを目的として開発されたが、当初はそのリーフサスが快適性を損ない、後に脱ピックアップを図った乗用車的SUVが一気にブレイクした。それが2000年前後のこと。

 フォードエクスプローラーとは、まさにそうした乗用車的SUVの代表格であり、ラダーフレームは継承するものの、サスペンションは4輪独立懸架、4WDシステムは切り替え不要なオンデマンド式を採用するなど、快適性能や走行性能を一気に高めたのである。

 取材個体はそんなエクスプローラーの2009年型。モデルはスポーツトラック。2009年型ということだから、2005年から2010年まで続いたFRベースの4代目エクスプローラーとなる。

▲2005年から2010年まで存在した4代目エクスプローラー時代に登場したスポーツトラック。

▲SUVのエクスプローラーの2列目シート直後でボディを閉じ、その直後に新たに荷台を追加している。

 で、エクスプローラーのスポーツトラックとは、乗用車的な洗練性を伴ったエクスプローラーをベースに、リアに荷台を作ったピックアップ。当時はSUTというカテゴリーに属していた。

 が、実は逆転の発想から生まれた傑作品と言っても過言ではない。「(当時)全米一売れていた快適SUVに荷台を付ければ、乗り心地やハンドリングの良いピックアップが出来るじゃないか」と。

 だからこその「SPORT TRAC (スポーツトラック)」であり、同じトラックでも綴りに「TRUCK」を使わないことで、一般的なピックアップでないことを強調しているのである。

 ボディサイズは、全長×全幅×全高=5370×1870×1840ミリ。荷台は、ホイールベースを425ミリ延長して3315ミリとすることで稼ぎだしている。

 ベースとなるエクスプローラーのフレームシャシーを前後に伸ばし、横方向にクロスメンバーを追加して強度を確保。さらにドライブシャフトを2ピース化し、スプリングやスタビライザーを硬めに設定するなど、スポーツトラック独自のチューニングが施されている。

 そして新たに追加されたベッド部分は、1280×1415×555ミリというサイズ。表面には軽量かつ耐腐食性を備えるコダワリのSMC(シート・モールディング・コンパウンド)材を使い、錆びない高強度の荷台を製作。

 着脱可能なキーロック機能つきハードトノカバーが標準で装備されており、中央のヒンジを軸に前後の個別開閉が可能である。またゲート両サイドやキャビン側底面に収納ボックスや12Vソケットを備えるなど、ユーティリティにも富んでいる。さらに水抜きの穴を備えるという周到ぶりである。

▲搭載されるエンジンは4リッターV6SOHCで、213ps、最大トルク35.1kg-mを発生させる。

▲ホイールは阿部商会の自社ブランドAVENTURA(アベンチュラ)に255-75R-16インチタイヤは新品が装着されている。

▲バグガードとグリルが社外品で飾られている。

 こうしたボディ構造に対し、搭載されるエンジンはエクスプローラXLTと同じ4リッターV6SOHCで、213ps、最大トルク35.1kg-mを発生させ、5段ATと組み合わされる。

 余談だが、のちに4.6リッターV8SOHCエンジンモデルが追加されている。このV8は、296ps、最大トルク41.5kg-mを発生させ、V6モデルにプラス100万円高の価格設定で当時限定販売されていたが、現在ではほとんど目にすることがない。

 ということで再び取材個体である。2009年型で走行約2万4000キロ弱という超ミントコンディション。フロントグリルとホイールが社外品となり、ホイールは阿部商会の自社ブランドAVENTURA(アベンチュラ)を使用、また車高が2インチアップしているが、それ以外はノーマル状態を維持している。

 ちなみに、ホイールと車高アップは販売店であるアベカーズが入手したのちに手を加えているということだから、品質や質感に問題はない。ということで、しばし試乗。

 スポーツトラックは、2列目後席のスペースはSUVと同じだけの容量を確保している。が、その後のスペースがなくなり、その分だけ車体の剛性が高まっているように感じるし、実際にハンドリングやブレーキング、また乗り心地等に粗さがまったくなく、それでいて抜群のレジャー感覚の持ち主だけに、実用車というよりはファンカーとしてドライバーの期待を裏切らない。

 しかも古典的な4リッターV6エンジン搭載車ということで動力性能に不満はなく、アクセルを踏み込んだ時に聞こえる重低音とともに満足感はかなり高い。くわえて今となっては数少ない貴重な存在ということで、他とかぶることもほとんどないだろう。

▲上質な雰囲気が備わったインテリア。基本エクスプローラーと同様のもので明るめのタンカラーがアメ車らしい。

▲5速ATが組み合わされる。

▲正規ディーラー車でナビ付きの個体。

▲2連のアナログメーター。

 取材車は2009年型ということだから約14年前の車両。だが、走行2万4千キロ弱という走行距離が示すように状態はかなりいい。インテリア各部にはほぼほぼ使用感が感じられないのだ。

 くわえて販売しているのがフォード認定サービス拠点であるアベカーズであるということ。すなわちフォード車を熟知しているというだけでなく、本国フォードから純正パーツを入手することが可能であり、万が一車両にトラブルが出た場合でも本国フォードからフォローを受けることも可能な認定サービス店である。

 しかも営業スタッフには元フォードディーラーマンが在籍しているというだけあって、エクスプローラーの現役当時のことを知っており、そういった店舗の見立てによる車両というだけでも安心感が高い。

 アベカーズには現在ブロンコスポーツやラプターといった直輸入車から国内ディーラー車ベースの中古車が多数揃い、今や日本一のフォード車販売店となっているのである。

 ということで、レアなエクスプローラースポーツトラックに乗るなら今が最大のチャンスと言えるのである。

▲高い視点からの着座位置が可能となるシート。各種調整機能が装備されており、座面の調整もかなりの幅で可能。

▲サイズ的にも座面がたっぷりしており、ルーズに座っても気にならないのがアメ車的。個体のコンディションも素晴らしい。

▲リアベッドの表面には軽量かつ耐腐食性を備えるSMC材を使い、錆びない高強度の荷台を製作。着脱可能なキーロック機能つきハードトノカバーが標準で装備されている。

▲アベカーズのショールーム内にはブロンコスポーツやラプターといった他店ではお目にかかれないフォード車が展示されている。

▲直輸入されたフォード車や中古車が扱えるのは、アベカーズがフォード認定サービス拠点であるが故である。

▲この年代のエクスプローラーのパーツ事情に関して、営業の遠藤氏よれば「走行性能に関してはまだ大丈夫」ということ。

▲工場内では新旧フォード車の整備が今なお的確に行なわれている。

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