もうじき梅雨に入り、あと一ヶ月もすれば夏到来という、アメ車を含むクルマ全般にとって過酷な時期がやってくる。で、季節柄か、今ユーザーからの点検依頼の多くがエアコンという。
だが、個人的に夏時期に常に気にしているのが、バッテリーである。
ちなみにバッテリーにとってベストな気温は20~25℃程度と言われている。すなわち、暑すぎても寒すぎてもバッテリーには良くないということ。
それが証拠にロードサービスにおける出動第一位がバッテリー上がり。しかも夏の時期に多い。その次に冬の時期という。
理由を想像するに、夏の暑さにバッテリーが耐えられず尽きた(暑くなればエアコン使用が増え、それにより電力使用が増え負担がかかる)。そしてなんとか夏を乗り切ったバッテリーをそのまま使い冬の寒さよって尽きるという流れだろうか。
バッテリーに話を戻す。こうしたバッテリー上がりを防ぐためには、言わずもがな、定期点検が必要になる。そして弱ったバッテリーは交換が必要になる。
ひと昔前なら、こうしたバッテリー交換についてDIY情報を取材したりしていたが、今やNG。現代のアメ車においてバッテリー交換をDIY作業することは勧められない。
それはなぜか。ひと言で言えば、車載コンピューターによってあらゆる部分が監視されているから=クルマを走らせていない時にも内部で動いている=だから電気を全オフしてバッテリー交換することは避けたい。
もちろん、登録していたパワーシートやオーディオ、ラジオ等のメモリーが消えてしまうということもあるが、それらは大きな理由のうちの一部に過ぎない。
ということを踏まえ、アベカーズ多摩ガレージにてマスタングV8のバッテリー交換における注意点を取材した。
まずはエンジンルームを開ける。向かって左上位置にあるのがバッテリーである。余談だが、ダッジチャレンジャーの場合はリアトランクに、シボレーカマロの場合はリアトランクサイドにバッテリーが搭載されている。
カバーを外し、バッテリーを確認する。まず分かるのが、バッテリーマイナスターミナルに繋がる配線上に位置するセンサーの存在。これ、電流値をモニターしているセンサーであり、このセンサーが車載コンピューターにバッテリーの状況等の情報を伝えている。
今の時代のアメ車には、こうしたセンサーが様々な場所にあり、車両全域をモニターしている=電子制御化が進んだ現代のアメ車ならでは=車両の診断に専用の電子デバイスが必要になる理由がこれである。
で、まずはバッテリーの診断である。診断機を繋ぎバッテリーのヘルスチェックを行う。ようはバッテリーの状態確認である。この車両は問題なし。この段階で問題があればバッテリーを交換することになる。
バッテリーを交換する場合の手順は割愛する。
だが、プロショップで行う場合の利点は、交換時にバックアップ電源を取り、車両に予備電源を流したまま交換作業が可能になること。
すなわち、電気を全オフすることなく交換することが可能になるから、車載コンピューター等を止めることなく交換が可能になる。
そして交換後のもう一つの大切な作業を行ってもらうことも可能になる。それが交換後のセッティング作業。
バッテリーを新品に交換したことで、発電量等の状況が変わっているはずである。それを車両側に伝える必要がある(バッテリーが弱っているという認識はするが、新しく交換されたことを自動で認識するレベルではまだない)。
それをしなければ、古いバッテリー使用時の設定のまま走ることになるから設定をリセットする。それらには専用の電子デバイスが必要になる(フォード専用VCM3)
フォード車の場合、バッテリーが弱った状態でエンジンをかけずACC状態で電気を使用していると、センターモニターにモニターバーが現れ、一定時間を過ぎると電源が自動的にオフなる。
それは、車両側が「バッテリーが弱っているからこれ以上電気を使用していると危ない」という判断を各種センサーで行っているからであり、仮にバッテリー状態が悪くなければ、上記のようなモニターバーが出てくることはない。
よってこうした車両側の認識を、バッテリー交換後に改めてやる必要があるということである=ガソリンスタンド等でも交換は可能だろうが、上記のような設定変更を含めればプロショップにて作業を依頼した方がいいに決まっている=アベカーズ多摩ガレージはフォード認定サービスセンターでもある。
仮に自分でバックアップ電源を取ってバッテリーを交換することが可能であったとしても、こうした交換後の設定はDIY作業では絶対に無理である。
メカニックの法霊崎氏によれば「単純なバッテリー交換作業に見えるかもしれませんが、一歩間違えれば車両にダメージを与える可能性があります。そのリスクを考えるとユーザー交換はお勧めしません」
たかがバッテリー交換という思いがあるかもしれないが、車両の進化とともに作業における手間や手順が変わっていることをまず認識すべきであり、同時に夏前にバッテリーの状態を一度確認すべきである。
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