4代目セビルとシャシーフレームを共有するエルドラド・ツーリングクーペ。4ドアのセビルよりパーソナルカー色の強いビッグクーペだ。全長5mを超えるクーペは、いまとなってはほとんど存在しない。まさに贅沢の極みである。撮影車はその最終型のデビュー年となると92年モデル。スタイリングこそそれまでのコンパクトサイズからフルモデルチェンジしたが、搭載エンジンは、前年までと同様の4.9リッターV8エンジン。こいつは4気筒、6気筒、8気筒とマルチシリンダーを省燃費のため切り替えるシステムのエンジンであり、ガソリン高騰など80年代の社会的背景によって開発されたものだ。ちなみに翌年からセビル同様4.6リッターV8ノーススターエンジンに取って代わる(STSと同じ304ps)。その意味では、92年型はモデルサイクル狭間のレアものといえるのだ(一時ノーススターエンジンは、トラブルが起こると厄介だという噂が駆け巡り、エルドラドの4.9リッターモデルはマニア垂涎のモデルとなった)。
スタイリングは年式によってモールなど細かい部分は変更されるが、モデル消滅まで大きくは変わらない。98年にセビルがフルモデルチェンジしても継続された。キャデラックとしては年間の販売台数からして、この時点で生産中止を予測していたのだろう。電子制御関係はセビルに準じて進化し、97年の時点でスタビリトラックとノーススターシステムは手を組んだ。また快適装備ではモデル末期になると12連奏CDチェンジャーなども標準装備された(日本仕様)。コンコース同様、いま手に入れてもバリューは高い。が、新車台数が少なかったので見つけるのは大変だ。
試乗の印象であるが、正直セビルと変わるところはほとんどない。それほど完成度が高いとも言えるが、このクルマの魅力は何よりもスタイルにある。冒頭にも記したが5mを越える、贅沢きわまりないビッグクーペ。そして伝統のキャデラックエンブレム。これだけでも、所有する喜びが得られるというものだ。現代の感覚で乗っても全く臆することなく乗れる。正直、近年の硬いアメ車よりも何倍もいいと思う。ステアリング、エンジン、足回り…、すべては今よりはいい時代のアメ車の味が非常に色濃く残っているのだ。
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