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最低限の知識を持ってトラブルに打ち勝とう!

リンカーン ナビゲーター エアサストラブル

理解と経験と機材のあるショップで整備すべし

非常に魅力的な1台であるリンカーン・ナビゲーター。だが、初期型はデビューからすでに14年を経た中古車である。新車で購入したというなら話は別だが、中古車で購入、もしくはこれから購入を検討しているというなら、ある程度の予備知識を持っておいた方がいい。それによって購入後の生活がガラリと変わるだろう。エアサストラブルの続報である。

更新日:2012.09.25

文/石山英次 写真/編集部

仮に安価で手に入れても元は高級車

 リンカーン・ナビゲーターは、さすがに高級車だけあって、トラブルがそんなに多いクルマではない。基本的なメンテナンス、油脂類の交換、各種フィルターの交換や定期点検をマメに行っていれば、それほど恐れるクルマではない。

 ただし、これは新車で購入した場合に限った話であって、中古車になると若干様子が変わる。特にナビゲーターの場合は、フォード車専用のスキャナー・WDSが必要であったり、コンピュータートラブルに際してはWDS&アズ・ビルト・データ(※注)が必要になったりと、日本でメジャーな存在であるGM車を扱うのとは事情が大分異なる。

 さらに日本の場合、中古車に関しては、すでにカスタムされているものが多く、また適切なメンテナンスを受けていない車両が結構見受けられるという(前述した機材を持たないお店が多いから)。

 中古のナビゲーターは、もとは立派な高級車である。仮に中古車を100万円で購入できても、中身の伴った車両じゃない限り、間違いなく整備代がかかる。だからそのためにも、車両とお店の見極めが必要になるのだが(最近、現状販売で購入されている方も多いというから注意が必要ですよ)。で、その後は適切なショップで確実な整備を受けて、コンディション維持に務めることが必要になるのである。

※注)ナビゲーターには、年式によるが、車内に7つから8つのコンピューターが搭載されている。その代表的なのがPCM。いわゆるパワートレイン・コントロール・モジュールである(ABSなんかもそう)。

 で、このコンピューターのどれかに何らかのトラブルが起こった場合、そのトラブルが起こったコンピューターの内容をリニューアルするわけだが、簡単にスキャナーを使ってデータを入れ替えるわけにはいかない。つまり、もとからある7つもしくは8つのコンピューターは連動しており、データをリニューアルすると、残りのコンピューターが異常信号を発令し、動かなくなってしまう。

 そこで必要になるのがアズ・ビルト・データ。メーカーは、一度構築されたデータを一台ずつバックアップしており、リニューアル時にメーカーからそのデータをもらい、そいつをスキャナーで入力し、入れ替える必要があるのだ。

フォード車専用のスキャナー・WDS。アズ・ビルトデータの入力やエアサストラブル時の車高調整の際、またエンジン不調時のチェックに必要になる。つまり、ナビゲーター診断には欠かせない機材。WDSのあるショップで診断すれば間違いない。

98-02年型。日本でも爆発的人気を呼んだモデル。個人的に一番好きな型。

03-05年型。先代を引き継いで完成度を高めたモデル。カタチがオーソドックスになったのが残念。ただし、それ以降のモデルチェンジ(現行型)でアバンギャルドになり過ぎとの声多く、中古が人気に。

エアサスの動作不良あれこれ

 ナビゲーターにおいて、一番深刻なトラブルがエアサスのトラブルだ。トラブルの事例としては、エア漏れ、コンプレッサー不良、センサー不良といったところだが、万が一トラブルが起こった場合、パーツを交換しても車高を調整するためにWDSが必要になる。
 エアサスのトラブルは、特に初期モデル(98〜02)に多く、フロントはショックとエアバッグが一体のため、エアが抜けてもある程度の車高を保っているが、リアはショックとバッグが別体のため、エアが抜けると車高が保てなくなり、一輪のみ傾いた状態になったりする。車高が前後で違う、なんてクルマはエアサスにトラブルが起こっている可能性が高いのだ。

<トラブル事例>

1.エアバッグからのエア漏れ
2.ホースからのエア漏れ
3.コンプレッサーの不良
4.各種センサー不良


※上記のトラブルが起こった場合、どの部分のトラブルかを適切に見極める能力が必要になる。02年までは純正パーツはASSY供給だが、03年からは部品単品で供給可能なだけに、余計に見極めが大切になるのだ。

しかし!
→トラブルが起ころうとも走行不能に陥らない場合が多い。
エアサス関連にトラブルが起こっても、走行不可能になることはない。ただ、走行中に一輪のみ傾いていたり、リアのみ沈んでいたりということはある。


 長く乗る前提なら、やはり純正パーツで各部をメンテナンス&パーツ交換してリフレッシュすることをお勧めするが、安価に仕上げたいという方々もいるはず。上記のエアサスのトラブルを一度経験し、ある程度のことを理解すると「エアサスをやめたい」、「仮にエアサスを取り外すことが可能ならトラブルが断然減るんじゃないか」と考えるオーナーもいるというし。

 現在、ナビゲーターにはエアサスを殺し、コイルスプリングにコンバージョンする社外品のキットが発売されている。また、エアサスを継続する場合でも純正品よりも安価な社外品パーツも発売されている。

 ノーマルで乗ることを前提に考えれば、エアサスの継続を考えるしか方法はないが、トラブル解消を望むために、エアサスに見切りをつけるなら、選択肢は現在、豊富に存在するのである(アメ車ワールドのパーツコーナーでも販売されてます)。

<98-02年フロント&リア>
98年の初期型から02年までは、リアのエアバッグがショックと別体になっており(写真下赤枠)、リアエアバッグが不調をきたすとショックだけでは姿勢を保てず、傾いた状態になる。

<03-05年フロント&リア>
03年のビッグマイナーチェンジにおいて構造も刷新され、エアバッグ自体の容量も遙かに大きくなっている。03年からはリアのエアバッグはショックと一体になった。

エンジンルーム内にあるコンプレッサーから伸びるホース。このホースはフレームなどに固定されながら、4輪のエアバッグに続く。ところで、センサー不良とは、エアサス自体のトラブルではなく、車高を調節する指示を出すセンサー自体がトラブルを起こすこと。ただし、このセンサー交換にもWDSが必要になる。

05年モデルのシャシー分解図。4輪に見事エアバッグが収まっていることが一目で分かる。ナビゲーターは乗用車的乗り心地にこだわるあるまりのエアサスなのである。

リンカーン・コンチネンタルから続くフォードのコダワリ

 なぜエアサスなのか? たとえばエスカレードやハマーH2のリアに装着されているエアサスというのは、オートレベライザー、つまりトーイング時などに車高を水平に保つための装備と考えられる。重い荷物をリアに積み、沈んだ車高を押し上げるといった。

 一方、ナビゲーターに装着されているエアサスは、サスペンションの役割を果たしているエアサス。つまり、コイルバネがなく、エアをコイルの代わりとして利用している。

 ところで、なぜエアサスなのか? エアサスはコイルの代わりにエアを使うため、エアバッグが必要となりコンプレッサーやホースといった付随パーツも必要となる。さらには、コイルには絶対ないトラブルが起こり、そいつは実際のところオーナーの負担になる…。

……、聞けばエアサスの魅力とは、その乗り心地にあるという。つまり、乗用車的乗り心地、ある意味究極の乗り心地を実現するためにはエアサスが必要になるのだという。ナビゲーターには、SUVの中でも乗用車的要素がいち早く取り入れられてきた。エアサスもその一部であり、リンカーンのコダワリである。だからこそ、エアサスが完調なら、それこそ究極のラグジュアリーSUVといっても過言ではないのである。
 ということで、オーナーも気合いを入れてそのコダワリを継承していかなくてはならないのである。

究極の乗用車的乗り心地を実現しようと試みた結晶がエアサス搭載だった。だが、コイツにはコイルにはないトラブルが起こる可能性がある。このトラブルを忌み嫌ってエアサスを殺す社外品のキットも販売されている。取材協力をしてくれたガレージダイバンではその他エアサス関連キットも販売している。

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