マッスルカーと呼ばれるクルマは、60年代後半以降のアメリカ車に対して呼称されることが多いが、マスタングについては、FEブロックと呼ばれるビッグブロックエンジンを搭載するようになった67年型以降のモデルがマッスルカーに相当するものと言われている。64年に誕生したマスタングの当初の目的は、当時人気のあったスポーツカーを大衆車の価格帯で売り出すことによって、とにかく販売台数を確保しようとするものであった。そのため、コストパフォーマンス重視の製造過程を経てきたのだが、同時にモータスポーツが盛んになってきたこともあって、67年型からエンジンのハイパフォーマンス化が急速に進められたのである。
そのためこの年には、これまであった289ci(4735cc)のさらに上をいく、390ci(6390cc)というビッグブロックエンジンが追加されている。しかも、フォードの戦略はこれだけでは終わらなかった。当時フォードが目をつけていたのがル・マンで名を馳せたキャロル・シェルビーであり、そのシェルビーに65年の289ciエンジンをベースにGT350を、67年の390ciエンジンをベースにGT500を製作させている。また、68年には逆にコブラのエンジンがマスタングにフィードバックされ、コブラジェットを搭載した428モデルを派生させている。こうしてハイパフォーマンス化されたマスタングとそのエンジンは、様々なレースシーンで活躍するようになった。NASCARなどで活躍したフェアレーンやギャラクシーといった車両にもこのFEブロックエンジンが搭載されていたし、一般の人たちもマスタングで一般レースに参加するようになった。なかにはハーツレンタカーという、GT350を貸し出すレンタカー店で借りてまでレースに参加しようとする人まで出現したのである。
こうしたレース人気は、さらなるビッグブロック化の流れを加速させ、よりスポーティーなモデルとして69年にはマッハ1が登場。SCCAトランザム参戦目的に製造されたBOSS 302も市販モデルに搭載されるようになった。この頃のメーカー同士の競争は熾烈を極め、その後、フォード・BOSSvsダッジ・HEMI vsシボレー・YENKOという三つ巴の図式となっていくのである。
マスタングのエンジンは、67から68年になって直6・200ciとV8・289ciはそのままに、302ciと390ciというビッグブロックエンジンをラインナップしていった。これはNASCARやストックカーといったレースシーンでの使用を意識したものと思われ、同時期にはキャロル・シェルビーによって同じFEブロックのエンジンにチューニングを施したGT500が生み出されている。68年の最後には428ciのコブラジェットエンジンが搭載されたモデルまで誕生させたのだ。これはたった2253台しか生産されていない希少モデルなのである。
さて今回紹介する67年型の390ciは、まさにマスタングのビッグブロック化が始まった最初の年代のモデルである。現状でかなりのモディファイが施されている。この年代のマスタングは確かにハイパフォーマンスのマッスルカーで、乗って楽しく、見て楽しいクルマであり、色々と手を加える楽しみもある。しかし忘れていけないのは、あくまでクラシックカーであるという事実である。思いっきりアクセルを踏み込みたいのであれば、エンジンはもちろん、ミッションやドライブシャフト、リアアクスル等の動力系、ブレーキ系、足回り、ステアリング回りなど、様々な箇所をしっかりとメンテナンスしておく必要があるし、MT車で、半クラッチの使いすぎでクラッチをダメにしてしまったとか、オーバーレブさせてプッシュロッドを曲げてしまったなどという話は、クラシックカーに対する自覚が本人に足りないために起こっているトラブルである。
マッスルカーを本当に楽しむためには、それなりの覚悟と理解を持つことが重要である。また、後々のメンテナンスを安心して任せられるショップを探す努力もオーナーには求められるだろう。
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