マスタングの歴史のなかで、最初にマッハ1の名が登場したのは69年型からである。68年型までのGTがスポーティ&ラグジュアリーだとすれば、69年型以降ではスポーティの方向性が「マッハ1」に、ラグジュアリーが「グランデ」にそれぞれ引き継がれたと言っていいだろう。この69〜70年型の世代ではスモールブロックの289ciが姿を消し、代わりに351ciが新たに登場する。またこの世代はBOSS302が市販モデルに搭載された年代でもある。まさにマッスルカー黄金期の絶頂というべき時代であったろう。
ところが、続く第三世代となる71〜73年型の世代では、当初まったく新しいシリンダーブロックを採用した429ciが登場するも、結局71年型のみのラインナップとなり、72年型以降はビッグブロックエンジンは完全にその姿を消してしまった。ここにマスタングのマッスルカー黄金期は終焉したと言える。ボディデザインにおいてもそれまでの70年に比べ、よりフラットでスクエアなデザインとなり、低くより長いボディとなり、サイズも若干大型化されている。
マッハ1の日本における知名度は、映画「バニシング・ポイント」の影響が大きかった。日本でも数多くのマッハ1がディーラーで販売されたが、フルオプションで入ってきたために非常に高額な値がついていた。おそらくこの当時の日本で最も多かったマスタングは71〜73年型のモデルだったのではないだろうか。
今回紹介するモデルは73年型のマスタング マッハ1であるが、この車両は本物のマッハ1ではないことを最初にお断りしておく。この車両の正体は73年型のスポーツルーフ(スタンダード)を使って仕上げたレプリカである。ちなみに73年型のボディバリエーションは、ハードトップ、スポーツルーフ、コンバーチブルの3種類で、このベーシックボディのほかに、グランデ(ハードトップ)、マッハ1(スポーツルーフ)という5種類のグレードが存在した。
なぜこの車両では、そのような面倒くさいことをしなければならなかったのか。それは以下で紹介するこの車両の製作者のこだわりがそこに反映されているからである。
この車両の製作者は前オーナーで、マスタング専門店のガレージK&Mに勤めていたメカニック。無類のマスタングファンであった彼が思い描いていた理想のマッハ1を実現すべく、アメリカのスタッフを使って実に1年半もの製作期間をかけて完成させたものである。
まず、ベース車を73年型に設定した理由は、この年式からマイナーチェンジしており、部品供給の面で最も問題がないと判断したためだ。また、あえてボディをスタンダードのスポーツルーフにしたのは、リアにホールドダウンシートが付いていなかったためで、マッハ1よりも剛性面で優れていたため。いずれにせよモノコックの状態から作り上げる予定であったために、仕上がりがマッハ1になっていれば問題なかったのである。
エンジンは先述したとおり72年型ではすでにビッグブロックは消滅していたため、レーシングヘッドサービスが作った460マグナムをベースに、さらにチューニングを施したエンジンを換装した。ピストンはわざわざ特注で作り、ハイカム、ローラーロッカー、ヘッダースなどが組まれている。キャブはホーリーの750を使用している。
このエンジンに組み合わされるミッションは、新型マスタングにも採用されているトレメックのハイトルクタイプの5速MT。それを受け止めるブレーキには4輪ディスクを採用、そのためにバキュームポンプも追加されている。足回りはサブフレームコネクター、前後スウェイバー、5リーフスプリングにコニーのショック、シェルビータイプのリアトラクションロッドなどで固められている。
プロのメカニックがこだわり尽くして製作しただけあって、妥協をまったく許さない完璧な仕上がりとなっている。この車両の唯一のキモは460ciゆえのオーバーヒート対策だが、その点も抜かりはない。
こんな夢のようなクルマはまず2度とお目にかかることはないだろう。
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