これまで見たヘルキャットは、赤に黒にサブライムグリーンの3台だったが、オプションが付いていたり付いていなかたりで、同じ仕様の個体を見た試しがない。
で、今回BCDで見た2015年型の新車ヘルキャットは、これまで見た仕様とはまた一味違った個体であり、各種オプションが装備された個体だったのだが、だが個人的にはこれまで見た中で一番好みに近い仕様だった。
写真でその雰囲気をどれだけ伝えられているか若干不安ではあるのだが、今回の赤いボディにマットブラックのアルミフードを備えたヘルキャットのデザイン的まとまり感は過去最高。まさにスパルタンな雰囲気満点である。
レッド&ブラックでまとめられたボディ、20インチマットブラックホイールに前後ブラックスポイラー、そして巨大なブレンボブレーキ。一転、インテリアには、キャメルカラーのプレミアムラグナレザーが装備され(その雰囲気がことさら良い)、外装スパルタン&内装ラグジュアリー感が、華やかなアメリカンかつスーパーカー的な印象をもたらしている。
ヘルキャットに搭載されるエンジンは、あえて新開発された6.2リッターV8+スーパーチャージャー。実測で707hp、最大トルク650lb-ftを発生させる。
このエンジンは、6.4リッターV8NAエンジンとはまた違った魅力を持った名機であり、スーパーチャージャーが唸りを上げるサウンドも、それに伴うエキゾーストサウンドも別格であり、まさにモンスターエンジンという称号に相応しい。
それに8速ATとの組み合わせも抜群だった。個人的にはMTとの組み合わせも選択肢に入るため、また乗ったこともあり(実際に買うとなれば非常に迷うかもしれないが)、それでもATで十分に楽しいだけに、特別な理由がないかぎり最新ATの方がヘルキャットには似合っていると言えるだろう。
とはいえ、ヘルキャットの外観は比較的大人しい。オプションのマットブラックアルミフードが装備されていない車両もあり、その場合だとなおさら他のチャレンジャーとの差別化が一瞬つかない場合もあるだろう。具体的には、フロントグリルが違い、フードが若干盛り上がりスクープが追加され、ブラックの鍛造ホイールが装備されるくらいである(ざっと述べるなら)。
だが、いわゆる爆音が伴ったヘルキャットのオーラは格別であり、見た目で判断つかない場合でも、近くに寄りさえすれば一瞬で認識可能なはずである。そのくらいのボリュームかつ大迫力である。
ちなみに、こういった大人しめの変化で707hpを吸収してしまうチャレンジャーのベースシャシーおよびボディ全体の強度が著しく高いのだろう。
また、707hpに関して言えば、R/Tや392ベースでチューニングをしたとしても、まず実現不可能な数値である。
まあ仮に、めちゃめちゃ苦労して何とか実現したとしても、ドラッグレースのマシン風とか、日常域での走りをすべて犠牲にするとか、何らかの不自由を味わうことは必至である(そもそも熱対策が尋常じゃないし)。
すなわち、本国においてだが、5年、10万マイルのディーラー保証が付いた707hpとは次元がまったく違うのである。裏を返せば、街中を普通に流せる707hpを実現したクライスラーはホントに凄い。
なお、このヘルキャットに関してはBCDでは2台目のヘルキャットであり、かつ新車の展示車ということで触れるにとどまったが、過去に乗った経験からしてもその速さは圧倒的であり、比べる存在がないと言っても過言ではない。
しかも、その速度に比して盛り上がる爆音にも圧倒されてしまい、707hpに触れることはオーナー以外ではまず無理だろう(オーナーでも無理かも、笑)。
ただ、若干だが下がった車高や引き締まった足回りなど、392までのチャレンジャーとはやはりセッティング等がひと味違うだけに、ハンドリングを含めた安定感やキビキビ感は存分に味わえるし、低速でもヘルキャットに乗っている感は確実に伝わるのである。
くわえて、ヘルキャットのみいまだ油圧パワステを採用していることもあって(その他のモデルはみな電動パワステ)、操舵のダイレクト感が圧倒的であり感触もよく、だからこそ低速域でのコーナリングでさえも非常に気持ち良かったわけである。
ということで、全開性能をみせびらかさなくても、ヘルキャットの良さは十分にドライバーに伝わるのである。
ヘルキャットは特に海外での評価が抜群に高く、アメリカ本国はもちろんこと、ドイツや中国などでもかなりの人気。すでに2016年モデルにもラインナップされることが発表され、しかも本国ベースプライスが高くなっている現実を踏まえつつも、まだまだプレミアが付くほど売れている。
BCD担当者も「ひょっとしたら最初で最後の707hpかもしれませんし、仮にこの先もし(2018年以降)ヘルキャットが出たとしても、今のデザインでのヘルキャットは最後でしょう。すなわち『現行ヘルキャットの価値は今後一生下がらない』と断言できるだけに、今のボディデザインが好きなら、ぜひとも手に入れるべきチャレンジャーでしょうね」という。
その理由は、実測値で707hpを実現したエンジン自体の素晴らしさももちろんだが、この馬力を例えば他国メーカーで実現すれば5000万円は下らないわけで、プライスを含めて世界中で評価が高い理由がよくわかるはずである。
ちなみに今、時代を彩った名車的なクルマたちが世界中で値を釣り上げている。たとえば空冷ポルシェ。しかしそれは73カレラとかいう歴史的名車ではなく、単なる90年代のカレラ2。
3、4年前までは100万円台後半で売られていた個体が今や600万円オーバー。ざっと3倍である。しかも100万円台後半時と同じコンディションにもかかわらず、だ。
まあフェラーリやランボルギーニといったスーパーカー系車両に関してはなんとなくわかる気もするが、まさかのカレラ2…といった印象である。
だがしかし、これらの値上がり現象はその他フランス車の2CVとかランチアデルタインテグラーレとか、そういった旧車たち全般にまでおよび、恐らくそれらの現象は、燃費燃費と騒いだことによるハイブリッド車の出現とか自動運転という現代の最新自動車に対する反動の現れだろうと推測される。
すなわち、自ら運転して楽しいと言われた時代の名車たちが漁られ、軒並み値を釣り上げているということである。速さを問わず、デザイン良く、走り楽しく、そして操る充実感にも浸れ、歴史的にも著名な名車たちである。
ということで、ヘルキャットはまさにこの名車的な立ち位置に入るクルマでもあり、そういった投機対象のクルマとしての価値も抜群に高いといえるだろう(下世話な話だが)。
チャレンジャーの今後に関しては、まだまだ情報が錯綜しており、このまま生産継続+ダウンサイジングエンジン(四気筒)搭載という話もあれば、生産終了+クーダ復活との話もあるし、そもそもがチャージャーのみが残りチャレンジャーは消滅というシナリオまで描かれている。
という話を書いていたところ、バイパーの2017年での生産終了が決まりつつあるという。ということは、FCAの頂点に君臨していたバイパーがなくなるということは、チャレンジャーヘルキャットがその位置に取って代わるという可能性が浮上してくるわけで。とはいえ、正式発表ではないだけに今後まだまだ流動的なのだろうが、FCAにはチャレンジャーの続投を是非とも期待したい。
今回のヘルキャットは1190万円。しかも707hp。まあ個人の好みもあるだろうが、560hpで2500万円オーバーのポルシェターボSよりも、断然お得で速いというのは、「さすが」というべきだろう。
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