更新日:2013.04.12
文/石山英次 写真/神村 聖 (KAMIMURA SATOSHI)
キャデラックSRXは、現行モデルでちょうど2代目となり(2010年日本デビュー)、その2代目モデルのマイナーチェンジ版が今回の試乗車となる。試乗グレードは「プレミアム」ということで、これまた前述したセーフティデバイスが満載のクルマである。
で、早速各種セーフティデバイスを自分で試してみる。個人的に一番興味があったのが「アダプティブ・クルーズコントロール」であり、前車で目標とするクルマを見つけロックオン。ステアリングのコントロールスイッチで速度や車間距離(近い/中間/遠い)を選択し、いざクルーズコントロールのスタートである。ちなみに、最高速を90キロでセットした。
車輌レーダーとカメラで前車を常にモニタリングし、適切な車間距離をキープするというのだが、実際の交通事情では常に予測不能な状態が待ち受けている。だが、このクルーズコントロールは非常に優秀で、セッティングした車間や速度を人間の感覚と同じようなタイミングでコントロールしてくれ、とくに車間が詰まったときのブレーキングが過剰ではなく優しい感じで行われ、またその後、車間があけば90キロの速度を上限として勝手に加速してくれる。
途中ETCの料金所では、前車に引き続き自動ブレーキで減速し、前車との車間距離をとりつつETCを通過。そしてそのまま車間を詰めるために再び自動加速…。
この状態を上手く使えれば、SRXがまるで自動運転しているかのようなドライブが可能になる(非常に洗練されたものだった)。ただし、筆者はこの日初めて乗っただけに、自動減速が信用できずに、何度か先にブレーキを踏んでしまった経緯があったが(最初はどこまで前車に近づくか不安だったため)、慣れればそれこそ快適な自動運転の旅が可能であろう。このシステムは前車の状況により完全停止まで作動してくれるのである。
ちなみに、このクルーズコントロールは、あくまで前車のロックオン対象車がいての話になるのだが、かりに途中で前車がいなくなった場合でも、また次なる対象を見つけ、再び同様の過減速を自動ではじめてくれる。つまりいちいちリセットする必要がないから、非常に便利なアイテムといえるだろう。ツーリング時だけでなく、渋滞時などにはとくに有効だろうとも思う。
さてSRXの走りであるが、このクルマ、搭載エンジンが3リッターV6であった。正直、3リッターには思えないほどの力強さと重厚感を感じていただけに、勘違いに気付くのに時間がかかってしまったほどだ。
今どきのキャデラックは、どのクルマにおいても質感が高いのは言うまでもないが、SRXはボディやインテリアの雰囲気までもが洗練され、一段と魅力あるクロスオーバーSUVに仕上がっている。前述のセーフティデバイスを装備し、安全装備も世界的な高級車以上のものを備えている。個人的には、価格以上の価値を感じた1台だった。
■全長×全幅×全高:4855×1910×1690ミリ、ホイールベース:2810ミリ、搭載エンジン:3リッターV6エンジン、パワー:269ps、最大トルク:30.8kg-m、ハンドル位置:左、乗車定員:5名
一方帰りのATSである。今回追加された「プレミアム」には、SRXと同様の各種安全デバイスの他に、18インチタイヤにマグネティックライドコントロールサスペンション、そしてパドルシフトが装備されている。帰りは主に走りのチェックである。
まず、行きのSRXに比べ目線が下がったことによる安定感を感じながらのドライブとなった。そして箱根ターンパイクの下りということで、下りコーナリングとブレーキの安定感のチェックも行った。
過去に試乗した「ラグジュアリー」時にも思ったが、ATSはかなり速い。タイム測定でどのくらい速いとかいう感じではなく、感覚的な部分で非常に速く感じる。前にも書いたがちょっと大袈裟に言うとC5コルベットくらいは速いし、コーナリングはノーマル比ならATSのが速いかもしれない。とくに腕に自信のないドライバーほど、ATSの方が速く走れるだろう。
で、今回の「プレミアム」。搭載エンジンやパワーに違いはなく、主にサスペンションを中心としたハンドリング系の違いなのだが、その印象は鮮烈だった! それはコーナーをひとつクリアするだけでわかる。
まるでスポーツカーかそれ以上、と思わせるほどハンドリングがシャープかつダイレクトであり、拳ひとつ分ステアリングを動かせばその分ATSのノーズは明確に反応する。こんな感覚は、チューニングカーレベルのクルマでしか味わったことがない。しかし、ATSはそれでいて乗り心地が良いのだから驚かされる。
ハンドリングのシャープさにおいては、ステアリングレシオも違うのではないかと疑ったくらいシャープだった(6速ATも良いがMTならもっと面白いか?)。
小さなボディにパンチ力ある4気筒ターボエンジンを搭載し、ハンドリングは非常にシャープかつ正確で、しかしそれでいて乗り心地は断然良く(マグネティックライドの恩恵)、しかもボディはめちゃめちゃ硬く、コーナーでも楽しめるキャデラック。乗っていてじつに楽しいクルマである。
現代のキャデラックに昔のような大きくゆったりとしたイメージはもうないが、逆にパフォーマンスでしっかり主張しているところが好感である。
先に登場している「キャデラックATSラグジュアリー」は439万円で、今回登場した「キャデラックATSプレミアム」は499万円となる。その差60万円ということだが、筆者なら間違いなく後者の「プレミアム」を選ぶ。個人的な評価として、この2台の走りの差に60万円以上の価値を感じたからである。
■全長×全幅×全高:4680×1805×1415ミリ、ホイールベース:2775ミリ、搭載エンジン:2リッター直4直噴ターボエンジン、パワー:276ps、最大トルク:35.9kg-m、ハンドル位置:左、乗車定員:5名
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>> キャデラックATSの試乗 を見る
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