2014年というのは、GMにとってまさに変革の時である。GM系フルサイズトラックがフルモデルチェンジを果たし、スポーツカーのコルベットが全面的にリニューアル。屋台骨となるピックアップ系のフルモデルチェンジにより、タホ、サバーまでがリニューアルされた。ファンとしてはその進化の度合いがもの凄く気になるところである。
だが、心配はご無用。C7コルベットに乗りタホにも乗り、筆者は、すべてが劇的に良くなっていることを実感しているからである。
GMCシエラ、いわゆるフルサイズピックアップトラックであり、シボレーシルバラードとの兄弟車となるピックアップトラックは、言わずもがな、違和感だらけの傑作だった。
違和感その1。試乗すればわかるが、その乗り味にピックアップトラックであることを意識させることがないくらい静粛性が高く、乗りご心地がいいのである。リアサスの変化ももちろんあるが、その完成度の高さには舌を巻く(だからこそ、コイツがベースとなる新型タホやサバーのデキがいいのは当たり前)。
ピックアップと言えば、個人的には90年代のC1500が思い浮かぶが、その時代のピックアップと言えば、まさに「働くクルマ」的な印象が強い。すなわちあのドタバタ感こそがアメ車の象徴だった(それにカスタムペイントしたり、エアサス組んだりするのが楽しかったわけだし)。
だが、このシエラにはその姿がまったくもって似合わない。いや、働くクルマとしての性能がない訳ではない。その逆で、あまりにも良すぎて、働くクルマとして使うにはもったいないほど良く出来ているということである。
違和感その2。これまた実物を見れば分かるが、インパネやシートは高級感に溢れ、非常に雰囲気あるクルマになった。だからこそ乗るとピックアップに乗っている感じはなく、まるで高級SUVに乗っているかのごとくであり、だからこそ「あえてピックップに乗る必要性はあるのか」と自問自答したくなる…。
そう、今度のシエラ(シルバラード含む)はあまりにも良くなりすぎて、走行性能においては、SUVたるタホやサバーバンに引けを取らない。だからこそ、あえてピックアップを選ぶ、というそれ相応の意志や覚悟が必要になるだろう。
搭載されるエンジンは、5.3リッターV8エコテック3。355hp、最大トルク383lb−ftを発生させ、それは2013年型の同車エンジンよりも40hp、最大トルクで48lb-ftアップしている事になる。
このエンジンは6速ATと組み合わされ、また直噴システムを搭載し、走行状況に応じて稼働気筒数を4-6-8と変化させるアクティブフューエルマネージメントを採用することで、パワーアップ&燃費効率アップをも実現しているのである。
ちなみに、このエンジンの他には、4.3リッターV6エコテック3と6.2リッターV8エコテック3の、計3種類のエンジンがラインナップされている。
一方インテリアは、これまでのような質素な空間とは無縁の、非常にモダンな仕上がりを見せている。センターコンソールの見栄えや操作性はもちろんのこと、メーターパネルの針ひとつの動きからして異なり、あらゆる操作性の滑らかさにも驚きを隠せない。
当たり前だが、ステアリングの反応は至極スムーズであり、ブレーキングもまったくもって一般的な乗用車のようである。
ちなみに、ボディ全体の大きさはフルサイズだけあって堂々たるものだが、取材車にはバックモニターと連動するパークアシストが備わっており、ボディ全体が四角い角張ったデザインとなっているため、前後左右の感覚は掴みやすいのは嬉しい。
GMCシエラということで、試乗時の興味は「なぜシエラ?」「シルバラードじゃだめか?」ということに尽きる。
だが、一目見てすぐに答えが出た。シエラの真骨頂であるそのフロントマスクの見た目にこそ、選ぶべき理由が隠されていると実感できたからである。
2007年にデビューしたトヨタタンドラが起こしたピックアップ界のタンドラショックによって、それ以降のデザイナーはみな、「フロントマスクの迫力」を追いかけ出したと言われているが、その中でも今度のGMCのマスクは特筆ものである。
しかもそれは、ダッジラムのようなアクの強さは感じさせず、GM系デザインの範疇内でやり遂げたことが素晴らしい。
だからか、今度のGMCシエラは、現タンドラオーナーからの問い合わせが多いというからうなずける。
走りだした印象は、正直、SUVと言われても分からないほど、引き締まったものだった。ボディは非常に硬質で、ハンドリングもスムーズ、そして全体的にかなり静か。もちろんブレーキングも至って普通に止まる。
足回りは、AWDということで常に安定しており、路面の凹凸をいとも簡単にいなしてスムーズに走る姿に、往年のピックップの姿は見えてこない。
だが、あえてこの新時代のピックアップを選ぶというなら、誰も止めはしない。意志さえあれば誰もが十分に満足できるに違いないからである。
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