2013年秋のロサンゼルスオートショーで初公開された4代目キャデラックエスカレードは、2014年に正規輸入されることが発表され、2015年2月から日本での正式発売が開始されている。だが現状、このクラスになると直輸入モノも数多く、実際には半々といったところだろうか。
新型キャデラックエスカレードは、デビュー当時において本国ベースモデル価格が6000ドルほど高くなっており(旧モデル比で)、日本での価格も一千万円超えを果たす超高級車となった。
新世代のフレーム構造を持つ新型モデルではあるが、ホイールベースは旧モデルと同様の2950ミリであり、サスペンション構造もフロントが独立懸架、リアがリジッドという基本形式に大きな変更はない。
また、6.2リッターV8OHVエンジンも、旧モデルからの流用となるが、直接燃料噴射システムや気筒休止機構、可変バルブタイミング機構などが搭載され、最高出力は426hp、最大トルク63.5kg-mを発生させる。それぞれ旧モデル比で4%と10%増強されているというが、実際に走ると果たしてどうか?
このエンジンには、デビュー当初は6速ATが組み合わされていたが、2015年から8速ATに進化している。ちなみに、試乗車は2014年モデルということで6速ATモデルである。なお、正規輸入車は2015年以降も6速ATのままであるというから、確認したほうがいいだろう。
ということで試乗させてもらった新型モデルのメリットは、ざっと3つあった。
まず、デザイン的な洗練度。インテリアも含め、キャデラックデザインの突出した迫力は圧巻である。インテリアも、ハンドクラフトされたというだけあって、質感ともども高級車としての満足感は非常に高い。個人的には、デザイン的な意匠が現行ATSやCTS的なものになってしまっていることにちょっとガッカリした部分はあるのだが、こと質感に関して言えば、圧巻と言って間違いない。
その2、静粛性の向上。静粛性は驚くほどのレベルアップで、ロードノイズの遮音もすばらしく、一般道で勢いよくアクセルを踏みつけても、室内に侵入してくるエンジンノイズもほとんどない。以前取材した際にも某ショップスタッフが「やっと高級車としてオーディオが聞けるようになった」と言っていたが、まあそれは大げさにしても、たしかに圧倒的に静かになった。
また、3つめとなる走りの質感も格段に良くなり、特にステアリングの正確性は雲泥の差(街中を走った程度もわかる)。いわゆるトラックベース的な曖昧さはまったくなくなり、たとえばベンツから乗り換えても違和感がないと言えるほど引き締まった印象である。
ステアリングやペダル類は以前と同様に軽いが、ステアリングと同様に、ブレーキフィールの頼もしさも著しく向上している。制動力そのものの進化も明らかだが、一定の踏力でピタリと上品に停止できるのがなにより素晴らしい。
そういう意味では、高速等では以前よりも高い速度アベレージで走ることが可能であり、高速スタビリティの安定感も抜群に高まったし、一方で街乗りでの乗り心地も高級車としてのレベルを維持しており、第三世代となるマグネティックライドサスペンションを含めた足回り全般の進化によるものが大きいのだろう。
新型モデルにおける進化は、圧倒的なものばかりだが、唯一気になる点があるとすれば、エンジンだろうか。もちろん、エンジンも進化しているし、燃費効率にも気を使い始めているが、車重2.6トンのボディに対して旧モデル比で4%と10%増強のみでは、くわえて初期の6速ATとの組み合わせでは、旧モデル比からの圧倒的進化は感じない。
全体のパッケージとしては、十分なまとまりを感じさせ、決してパワー不足を感じさせることはないのだが、目新しさという点では正直あまり感じないのが、唯一の不満点といえるかもしれない(だからこそAMG的な存在のVの登場が噂されているのかも)。
とはいえ、旧型から使い続け熟成されたパワートレインだからこそ、逆に安心できるともいえるわけで、初期トラブルがまったく出ないというのは、実際にそういうことの結果とも言えるのだろう。
新型エスカレードは、モデルチェンジによる激変ぶりはそれほど感じずとも、トータルバリューは確実に上がっており、ラグジュアリーアメリカンSUVの商品競争力をさらに一段引き上げたと言っていいだろう。
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