TEST RIDE

[試乗記]

5.0リッターV8 DOHCエンジン搭載

2013 フォードマスタング V8 コンバーチブル

走行フィールはまさしく現代の最新車両に匹敵

旧マスタングの年式違いのV8コンバーチブル2台に試乗した。年式とパワー差以外にどういった差があるのか。

更新日:2018.03.05

文/吉田昌宏 写真/古閑章郎

取材協力/ガレージダイバン TEL 03-5607-3344 [ホームページ] [詳細情報]

これまでと異なる楽しみが待っている

 常々思うが、アメリカ製オープンカーは、別格な存在である。

 マスタングにせよカマロにせよコルベットにせよ、オープンモデルになるとランクが一段上がる(ような気がする)。クーペだとベンツBMWアウディに人気の面でも遅れを取るかもしれないが、コンバーチブルになると互角以上の戦いを見せる。

 コンバーチブルだと山や海にも似合うし、銀座の華やかなムードにも断然合う。また渋谷などの若者の街の雰囲気をも一瞬にして変える力を持っている。

 それに、もしスピードにあまり興味がなくなったとしたら、オープンに乗ってみるといい。これまでとは全く異なるアメ車の楽しみ方が得られるはずである。

 たとえば帽子をハットに変えたくなるかもしれないし、上半身を露出して走るその姿に、違ったファッションで乗りたくなるかもしれない。要するに、オープンにすれば興味の範囲が広がり、そのまま人生が大きく変わるかもしれない可能性を秘めているのだ。

 マスタングだと、2006年以降のコンバーチブルモデルなら幌の耐候性もかなり高いから、それこそ一台でいろいろとまかなえる。エアコンの効きも良いから年中オープンにすることだって可能だろう。

 なんてったって屋根のない明る感じがステキだし、クルマに乗るという感覚と遊びで乗る遊園地的な乗り物の感が同時に体感できて、毎日通る同じ道のりの風景が確実に変わる。

 それにマスタングなら、比較的新しいモデルであってもちょっとしたオールドカーのような雰囲気が味わえるのも特徴であり、最新の機能をもった旧車テイストと言い換えることができるが、とにかくフィールが最高で、クーペとコンバーとでちょっとでも迷うなら、絶対にコンバーチブルを選ぶべきである。そのくらいの絶品テイストである。

旧マスタングは、2013年にデザインにおけるマイナーチェンジを行い2014年に生産終了となっている。したがって取材車の2013年とは、シェルビーGT500と同型のデザインに変更された最終モデルということになる。

そのコンバーチブルモデルのディーラー車、しかもV8エンジン搭載となると極めて数が限られてくる。クーペのV8だとMTに乗りたくなるが、コンバーチブルだとATで十分に満足できる別の楽しさに満ち溢れる。

エンジンルームにまたがるブレースバーが、拡大したパワーを受け止め、車体の剛性アップにも一役買っている。

年式によるスペック的な違いは明白

 ということで、2010年と2013年型マスタングV8コンバーチブルの取材である。

 この型のマスタングで言えば、2010年と2013年とでは天と地ほどの差があるので、「どちらでもいい」という方はいないはず。整理すると、2010年にはデザイン変更が行われ、2013年は、2011年に搭載エンジンとミッションが変更され、その後デザインが2013年で再度変更されている。なので、デザイン的に大きな違いがあり、さらには13年車は10年車よりも約100psパワーアップしているV8が搭載されているのである。

2010年:4.6リッターV8 OHVエンジン:319ps・5速AT
2013年:5.0リッターV8 DOHC:418ps・6速AT

 詳しく整理してみよう。2005年に登場したマスタングは、復刻デザインをベースに一躍大ヒットをもたらし、世界的な復刻デザイン車であるミニやビートルやフィアット500等と肩を並べるスター的存在となった。

搭載されるエンジンは、5リッターV8DOHC32バルブ。418ps、最大トルク53.9kg-mを発生させる。街中をゆっくり走らせることも、または圧倒的なスピードで峠道を駆け抜けることも可能な、パワーとフィーリングの持ち主である。

取材車両は、2013年型の3万2000キロ走行車だったが、エンジンルームを開けた途端、驚きのため息が…。ご覧のような見事なキレイさを保った状態は、この撮影のためにあえてなされたものではないからである。

ノーマル純正ホイール。

オープンモデルは「七難隠す」じゃないが、まったく何も気にならなくなるし、唯一求めるのがV8エンジンの野太いサウンド。ハンドリング等も素晴らしいのだが、それよりもただただオープンで走ることに楽しさが凝縮されている。

旧型マスタングのデザイン的変遷

 この、いわゆる旧型マスタングはこの型の最終モデルとなる2014年までの間に2度ほど大きなマイナーチェンジを施しており、実質3つの型が存在している。

 2005年から2009年までのデビュー型、2010年から2012年の中期型、そして2013年からの最終型である。

 デビューモデルとなる2005年から2009年までは、1964年に登場した初代マスタングのデザインをベースとしているが、2010年型ではデザインに大きな変更を加えている。それは64年にデビューした初代マスタングが67年にビッグマイナーチェンジを受けたのと同じように。

 2010年型のチェンジは、その67年当時のボディ&マスクを題材にしており見事復刻デザインのリファインを行っている(素晴らしい)のである。

 だが、この2010年から2012年時には、別のマイナーチェンジが加えられており、それが話をややこしくさせている。2011年に、デザインはそのままにエンジンと搭載ミッションの変更を行っているのである。

左右対称のダッシュボードや3本スポークのステアリングホイール、T字型のシフトセレクター等、各部のディディールは初代マスタングの伝統に則ったデザインがもたらされている。

搭載される6速ATには、ボタン操作にてシフトアップ、ダウンが可能なボタンが装備されている。これがなかなか便利なもので、いたずらに大きな動作を必要とせず、小刻みな変速が可能となり、優雅に走らすことができる。

メーターパネルのバックパネルの色を125色から選べる「MyColorイルミネーション」と、照明の色を7色から選べる「アンビエント・ライティング」等、その凝りようは素晴らしい。室内空間をより一層楽しいものにしてくれる。

中古車ということで、年式が新しいモデルの方に心が傾くが、デザイン等のモデル変遷を加味すればマスタングの場合、一概にそうとは言い切れない魅力に溢れている。

歴史に残る復刻デザイン

 というわけで、人によってはこの旧型マスタングには4つの型が存在し、2005年から2009年までのデビュー型、2010年型、2011年から2012年の中期型、そして2013年からの最終型ということである。

 ちなみに、2013年からの最終型でもマスクが変わっているが、それはトップモデルたるシェルビーGT500と同じマスクを取り入れており、復刻系デザインのマスタングとしては、初代から中期にかけての2モデルこそが、オリジナリティあるデザインとして評価が高いと言われているのであって、だから往年のマスタングに刺激を受けているファンは(筆者も)、初代から中期にかけての復刻マスタングに乗ることをあえて選ぶというわけである。

シートは、バケットタイプのスポーティなものというよりは、ゆったりした掛け心地をもたらすラグジュアリー的な雰囲気を感じさせる。レザー張りの質感も非常に高い。

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