TEST RIDE

[試乗記]

ファントムグリルを装着して当時の面影をあえて復刻

1998 シボレータホ 2ドア

とはいえ足回りには今風をセッティング

90年代のアメ車を復刻するプロジェクトを行ってるレーストラックが新たに仕上げている一台。当時の面影を残すファントムグリルがポイントだそうです。

更新日:2017.10.05

文/吉田昌宏 写真/古閑章郎

取材協力/ジャパンレーストラックトレンズ TEL 0356613836 [ホームページ] [詳細情報]

シボレータホ2ドアをリフレッシュ

 いま90年代のアメ車に乗ることは、ある意味異文化体験が可能なだけに非常に楽しい一面を持っている。

 だが、これまでずっと90年代のアメ車に乗ってきた方の中には、頭痛の種という方もいる。

 購入当時はいろいろやってきたが、そこから10年も経てば、徐々に整備やトラブル費用がかさみ次第に重荷になっていく…。それでも最初は耐えていくが、やはり追いつかずトラブルが重なり、そして次第に乗らなくなり、そのうち車検も切れ、だんだんとガレージのお荷物となっていく。

 本来なら、そうなる前に手を打つべきなのだろうが、まあそこは人それぞれありますから~。で、今回はそんな風に3年放置されていた98年型のタホ。そいつをレーストラックが引き取った。

 もちろん、普通の思考の持ち主なら解体屋直行か部品取り車に成り下がるはずであろう状態だったが、そこはプロの修理屋だけに捨てずにちょっとずつ手を加えていった。まずは燃料周り系のパーツをリフレッシュ。さらに点火系等のエンジン周りを整備して安定したエンジンのかかりと燃料系の動きを見計らった。

 そしてエンジンとミッションの動力性能を探り、ひと通りのチェックを行った末にOKサインのもと、さらなるその先へのリフレッシュを行っていったのである。

あえて当時の面影をボディに求めたという。ブラックもあえてのチョイス。

4.6ダウンの足回りは見事なバランス。意外にも乗り心地は優しい。

レストアではなくあくまでリフレッシュにこだわる

 というのもこのタホ、二駆なのだが2ドアである。その希少性かつスタイリッシュさにファンは多く、「生かせるものなら生かしたい」との思いが当初からあったいうのである。

 そしてランプ類を総交換して、ボディペイントのヤレを修復し、さらにはグリルやバンパーを交換。足回りはいわゆる定番の4.6ダウンにして、当時の雰囲気を残した2ドアタホへと様変わりさせたのである。

 一方でインテリアでは、シートを交換しフロアの絨毯を貼り直し、さらにはもともと装着されていたレカラのステアリングのレザー部分をあえて交換せずに巻き直している。もちろん、全部が全部新品ではなく、中古パーツを使用したりもしたものだが、一瞥するに3年放置されていたヤレ感は、いわれなければ気づかないレベルになっている。

燃料系のパーツを一新し、さらにエンジン周りのパーツをリフレッシュしてひとまず安定した状態を作り上げた。5.7リッターV8エンジンは、現代のV8エンジンを上回る感覚性能を誇る。

これまたあえて20インチホイール装備で現代風の足を表現している。

内装絨毯を張替え、シートを交換して、ステアリングを巻き直したインテリアは、十分なコンディションを体現している。

まるで黒い弾丸のごとき風情で一般道を走り抜ける。素晴らしくカッコイイ。

当時流行のスタイルを再現

 で、以上のリファインを終えた状態が上記の写真。オールブラックのボディにファントムグリルが90年代に流行った当時の雰囲気をひしひしと伝えてくれる。だが一方で、装着されている20インチの現代風ホイールが、オールドな雰囲気に「今」を感じさせ、そのミックス具合が斬新であるといえるだろう。

 まあ、すべてにオールドテイストをもたらした古い味を体現するものもあれば、古さに新しさをミックスさせたものもあるし、そういう色とりどりの遊びができるのも、90年代のアメ車の魅力であるのだろう。

 高橋氏いわく「よくお客さんに、『いまでも90年代のアメ車乗れんの?』って聞かれるんですが、『乗れますよ』を体現するために、自らこのタホを仕上げようと思いました。みなさんが気にするパーツの面でも十分に整備可能でしたし、逆に慣れてしまえば消耗関係のパーツもわかりやすい年代です。今回はファントムグリルを装着して、当時流行ったタホのカタチを、いま新たに見てもらいと思っています」

 それにしても、オールブラックのタホ2ドアは、硬派な雰囲気と低めの車高とがもたらす絶妙なバランスが見事であり、また一方で2ドアならではのレア感が、一層価値を高めていると思う。

タホ2ドアのノーマル状態はこういう感じであった。SUVであるがために、腰高な印象は否めない。だが二駆でローダウンすれば、クロスオーバーSUV、もしくはクーペのような使いこなしも可能になる。

こちらはレーストラックが過去に仕上げた2ドアタホ。オーバーフェンダーにオフロードタイヤでザSUV的に。タホは上げ下げ自在の魔法のSUVだ。

こちらは4ドアタホ。一般的な4ドアスタイルでも戦闘態勢十分なマシンも製作可能である。

圧倒的に速いわけではないが、人間の感覚に基づいた素直な速さと重厚なエンジンのフィーリングが最高に楽しい。車体の安定感も上々である。

この当時に思いを馳せる

 それでも、90年代後半から2000年初頭には、こうしたタホが日本全国にいたわけであり、「当時のアメ車はカッコよかったな」と、これを見てまた思う方がたくさんいるのではないだろうか。

 筆者もそのくちである。当時はフルサイズといわれたボディも、今見るとそれほど大きくはなく、逆に小ささを感じさせるからこその魅力もある。

 くわえて搭載される5.7リッターV8エンジンは、255hp、最大トルク330lb-ftを発生させるが、この風情にも十分なパワーであり、SUVではるが、クーペのようにも使える感じが素晴らしいと思う。

 この先、しばらく走らせ調整し、コンディションの粗を出し尽くすそうなので、それが終わればかなり状態のいいタホへと仕上がるはずである。当時乗っていた方にも、これから乗りたいと思う方にも、このタホはかなりオススメであると思う。

90年代のアメ車は面白いですよ、というだけでは伝わらないこともあるかと思い、今回はあえて自社でリフレッシュをしてみました。パーツはまだまだ十分にありますし、整備性も悪くない。それでいて旧車と言われる時代のものよりは断然安楽に維持できる。それでも現代のアメ車よりも濃厚なフィールが味わえますから、興味があれば一度味わってみると良いと思います。

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