前回コルベットC6Z06に乗り筆者は、「C7ほどの華やかなボディデザインやインテリアはないが、別格のV8NAエンジンを積み、速さやハンドリング、さらにはいじる楽しさがあり、走り屋なんて言葉はもう死語だとは思うが、『走りのマシン』として仕上げていき、速いFRコルベットとして、そしてタイムアップを狙うマシンとして、最適な存在であると思う」と評した。
それほど純粋に走る楽しさが満載のコルベットであり、特にHPP号のアレンジは、「フルノーマルです」と言われても疑わないほどライトチューンに収まっているところが(それでいて純粋に速くて楽しいことが)、最大のオススメポイントだった。
いわゆる自分好みへのアレンジであり、目立たせるためのハードカスタマイズでないことが、特にコルベットC6Z06には相応しいと筆者的にも思ったのである。
そんなHPP Z06がタイヤとホイールを交換した。もちろん目的は走りの質の向上である。
装着したホイールは、WORK T5R 2P。特殊PCDでオーダーした前後19インチホイールである。それに組み合わせたタイヤはとりあえずのミシュランパイロットスーパースポーツ。サイズは、フロント295/30-19、リア295/35-19インチ。
このチョイスは、純正のフロント285、リア325からのサイズ変更を示しており、「喜多條氏に乗ってもらった際にコーナリング時のプッシュアンダーを指摘されたので、今回ホイールを替えるにあたり、その部分の解消を検討するサイズをチョイスしています」という。
プッシュアンダーとは、後輪駆動車のコーナリング中に起きる現象のひとつであり、前輪が曲がろうとする力に対して、後輪のグリップ力が強すぎるとクルマを真っ直ぐ走らせようとするため、狙ったコーナリングラインよりも外側に膨らむ状態を示めしている。
この状況だと前輪と後輪のグリップバランスを検討する余地が生まれる。すなわち、強いリアのグリップに対してフロントのグリップを高めるか、もしくはリアのグリップを落とすか、それともフロントリアともにバランスを調整するか、によって解消できることが多い。
今回、フロントを285から295へ換え、リアを325から295へ落とし、長池氏の好みも含めたバランスを求め調整している。
実車を見たが、ホワイトボディとホイールが絶妙のマッチングを見せ、もともと車重1500キロとかなり軽量ボディのZ06が一段と軽快なマシンへと進化した感じである。
タイヤサイズについての余談だが、このサイズの組み合わせではリーズナブルなSタイヤが存在しないため、今後リアのみ20インチにホイールを変更をすることも検討中という。
さらに、この記事をアップする直前にさらなる手が加わった。
長池氏が走行を繰り返している最中、特に高速時に気になっていたのがフロントのリフト。速度域が高くなるほどフロントが浮き、ステアリングの接地感が薄くなる。となると、路面のわだちやちょっとした横風のふらつきにも敏感になり、それらを改善するための処置を施したのである。
それがフロントのドライカーボン製カナードの装着。アメリカで販売されているC6のアフターパーツであり、このカナードで高速時のリフトを抑える。ちなみに、このカナードはサーキット走行時以外はもちろん取り外している。
また、同時にD1ケミカル社の『SOD-1 Plus』というオイル添加剤の使用を開始した。
この『SOD-1 Plus』は、エステルベースの化学合成オイル添加剤である。HPPのC6Z06には、ロイヤルパープル社のオイルが各部に使用されているのだが(このオイルの効果は物凄く高い)、そのオイルと『SOD-1 Plus』の添加剤とのマッチングがきわめて良く、ここ数カ月、実車にてテスト使用していたらしいのだが、かなりの効果が体感できたということで、エンジン、ミッション、デフ、パワステに使用し始めたという。
実際、サーキット走行時のエンジンオイルクーリング時間の短縮、トランスミッションのギア歯打ち音の激減、サーキット全開走行後のデフのブローバイが皆無になった。
パワステに至ってはクルマを動かした瞬間からその変化が分かる、という違いが体感できたということである。
C6Z06は、現代のコルベットの中でもきわめて特殊なマシンと言える。特にエンジンが素晴らしく、もちろん市販車としてディチューンされてはいるが、成り立ちとしてはほぼレーシングエンジンである。
それゆえC6Z06の走りとその迫力は「素晴らしい」という言葉では足りないほど素晴らしい。
だがその一方で、中古車となり走行距離を刻めばその分だけ消耗していくのは致し方なしであり、HPP号も中古車ベースであるという事実を踏まえればヤレの感じは否めなかったと思う。
とはいえ、前回紹介したとおり、各部の調整やチューニングを加えることで、さらにオイル潤滑にも気を配り各部の金属摩耗に関する対応を施すことで、驚くほど軽快かつ滑らかに走るようになっている。スペシャルなマシンだからこそ、細部にこだわり、あえて速さにもこだわるのである。
もはや中古車でも入手が難しくなっているC6Z06だが、HPP号は間違いなく現存するZ06の中では持てる性能を十分に発揮している1台と言っていいだろう。次なるチューン&調整が楽しみである。
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