TEST RIDE

[試乗記]

テスラ車の完成度に驚愕し2022年型の新車を追加オーダー

2017 テスラ モデルX「P100D」 vol.2

総合力の高さにクルマ好きとして刺激されっぱなし

導入後一ヶ月半で1000キロ弱走行しEV生活をリポート。初めてのEVとして、またメカニックとしてテスラ車への感想を伺った。

更新日:2022.04.18

文/石山英次 写真/古閑章郎

取材協力/クワッドドライブ TEL 048-281-5853 [ホームページ] [詳細情報]

もっと早くにこっちの世界を知っておくべきだった

 購入約1か月半で1000キロ弱走ったということですが、率直な感想はいかがでしょう。

 「まだまだ完全に理解したわけではないですが、購入当初から感心することばかりで、率直に驚きでいっぱいです。これは良い意味でですが、想像以上に良い(面白い)のです。『もっと早くにこっちの世界を知っておくべきだった』とも思っております。

 具体的にはまずクルマ自体の完成度が非常に高い。車体の剛性については、モデルXはリア側にファルコンドアがあるので若干劣るのですが、フロント回りの剛性は高く、ハンドリングも良好です。

 ブレーキの効きやサスペンションの収まりについてはSUVのパフォーマンスとしては良好ですが、タイヤについては改善の余地があると思っています(この年式はグッドイヤーが新車装着タイヤ)。

 また遮音性についてはフロント回りのみ遮音ガラスが装着されていますが、リア側からのノイズが若干気になるといったところでしょうか」


 林氏は、以前からメカニックとしてのモチベーションとして新しい技術的部分に触れることを求めていたが、テスラの総合力は想像を上回るほど完成度が高く、好奇心がかなりくすぐられている。というのも、2017年型の中古車では物足りず、なんと2022年型のモデルXの新車をオーダーしてしまったというのだから。

 とはいえ、それはあくまで「個人的な興味」というものであり、現場のメカニックとして刺激を受ける部分はさほどないという事実も同時に知ったという。

 「当然ですが、EVなのでエンジンやミッションがありませんのでオイル交換はありませんし、エレメントやプラグ交換もありません。唯一ブレーキ系のメンテナンスが必要になる可能性はあるのですが、テスラはアクセルを戻した瞬間に回生ブレーキによる強い減速が入り、フットブレーキの頻度が限りなく少ないのです。ちなみに、同期モーターが装着されている年式はワンペダルドライブが可能です(取材した2017年型は前後誘導モーターを使用)。

 キャリパーもパッドもブレンボなんですが、ほとんど減らないですし、だからホイールのススでの汚れもほとんどありません。そういう意味では本当にメカニック泣かせといいますか、世の中がEVカーで埋まれば確実にメカニックへの依存も減るでしょうね」

▲ボディ各部にカメラやレーダーやセンサーが仕込まれており、人間の感覚以上の反応を示す。

▲車両は360度に渡り監視されているから、ある意味かなり安全なマシンとも言える。

 メカニック的な刺激は少ない、だが自動車好きな大人として興味を惹かれたということでしょうが、具体的にどこに惹かれたのでしょう。というのは、テスラへの評価は両極端な一面があり、「良い」という人もいれば「良くない」という人も同じくらいの感覚でいるからだ。

 「まず、購入から驚きの連続です。自分でパソコンやスマホを駆使して購入し、購入後もオーナーズマニュアルをベースに自分で調べて連絡する必要があります。なので、例えば国産ディーラーにて何から何まで営業マン任せだった人にしてみたら、最初の一歩からして何もかもが違う。

 テスラには『どうしても買ってほしい』という営業マン的なアプローチは全くありませんから、そういったテスラ的な流儀を理解し受け入れられれば全く問題なく乗れると思います。が、毛嫌いすればもう完全に受け入れられないでしょう」


 林氏は、当然そういったテスラの流儀を受け入れつつ、現在に至るわけだが、そんな林氏でも当初は慣れるまでに時間がかかったという。が、やはりもともとの自動車好きとしての一面がすべてを凌駕して、また仕事上、常にパソコンを駆使してアメリカ本国のメーカーサポートと対話したりしている能力的なものもあり、テスラ流の対応にも次第に慣れていった。

 「ですが実際に所有してしまえば、なんとかなるものですし、クルマ自体のコンディションも悪くないです。車体は2017年型ですが、システム的には常にバージョンアップされ最新状態になっていますから、メカニカルなハード部分の消耗とバッテリー電池の劣化があるくらいで、これまた想像以上に良いコンディションが維持されていました。ただ、バッテリー電池自体はこの年代はリチウム電池ですから満充電は避け、8割程度の充電にしていますので航続距離も新車時の8割程度を基本にしています」

 購入されて一ヶ月半程度ですが、トラブルや問題が起こったことはあるのでしょうか。

 「テスラのいろいろな機能を試していて、走行中にレーンキープアシストが作動中のステアリングアシストとブラインドスポット機能に不具合を感じたので、サポートセンターに連絡しました。結果的にはバージョンアップで経過観察している段階なのですが、そういった作業はテスラのモバイルサービステクニシャンがリモートで診断しワイヤレスでソフトウエアのアップデートを行ったのです。この部分にも驚きました。

 これって、普段我々が電子デバイスを使用して実車の故障診断をしているわけですが、テスラはそれを本部とのワイヤレス通信で行ってしまうわけですから、内燃機関のメカニックとしてはある意味衝撃的な事実でした」


 要するに、日本の本部に全国のテスラ車の走行ログが集積され、トラブルが起こった時点のログを確認することで、その車両に「何かが起こっている」と実態が把握できた場合は、リモートで診断&アップデートによりトラブルを解消できるという、スターリンク衛星を持つイーロンマスクならではの処置なのだろう。というか単純に凄すぎるし想像を遥かに超えていた!

▲音楽やラジオをつけなければタイヤのロードノイズくらいしか音はない。ある程度歳をとると快適性と遮音性を求めるが、EVにはその両方がある。

 さて、テスラというかEVにおける最大の関心は充電である。初めてのEVとして1000キロ走ってみてどうでしたか。

 「やはり長距離になると慣れるまで緊張感がかなりありますね。往復300キロくらいの長距離が一度ありますが、行く前の段階から、「電費を計算し、どこで充電して」というスケジュールを考える必要がありました。

 走行中にもモニターにスーパーチャージャーのある位置がすぐに分かるようになっているので、充電に本当に困ったことはまだないのですが、これ以上の距離の長距離を走る場合は、事前の電費計算や充電予定をあらかじめスケジュールしておかないと怖いかもしれません。が、これもガソリンエンジン中心の考え方が根付いているからで、EVカーとしての考え方にリセットして慣れていけば変わってくるのかもしれません。

 ただ、魅力ばかりではなく、注意も必要だと実感しています。まず乗りっぱなしにする方にはお勧めできませんし、予定や走行距離、電費を計算したりして充電ありきで考えなければならず、それが苦手だという方は所有できないと思います。

 しかも、充電は充電機の出力、時間帯、バッテリー温度、残量によって充電速度が変わります。

 街中の充電スポットにある急速充電(チャデモ)だと最大50kwしかないのでモデルXの場合、100キロ前後走行するためには30分程度の充電が必要です(それだとバッテリー容量に対して20%前後しか充電できない)。


 一方でテスラのスーパーチャージャーV3だと、出力が250kwあるので空の状態から20分で70%位まで充電できます。

 また、ウォールコネクター(家庭用充電器)の場合、クルマを使い終わった後、夜中電気代が安い時間帯に充電しておくとお得です。

 こういった充電は、もちろん慣れれば大したことではありませんが、これまでのガソリン車との付き合い方をまるっきり変えなければならず、今までのカーライフとは大きく変わると感じてます。

 私の場合は、あくまで次世代EVの研究という目的がありますから、そういった事実をしっかり認識して興味ある方々に正確に伝えていきたいと考えています」


 で、実際の充電自体はどうですか。

 「テスラのスーパーチャージャーでのフル充電で1500円~2000円程度。家庭用充電機で1000円~1500円くらいです。 (*バッテリーの残量や電気の契約状況、充電する時間帯によって変動があるので目安の金額となります)

 チャデモは充電カードや普通充電、急速充電によって料金が異なりますし、都度払いも可能ですが距離を走る方は充電カードの契約をお勧めします」


 テスラの専用充電スーパーチャージャーを利用して400キロ走行で仮に1500円とすると、今現在の燃料費高騰を差し引いたとしてもかなり安い。

 「でも車体価格が高いですからね(笑)。費用対効果を狙うならモデル3かモデルYが正解だと思いますね」

▲充電に必要なウォールコネクターはクワッドドライブにも設置されており、Model S、Model X、およびModel 3に対応している。

▲テスラのスーパーチャージャーには充電カードなどのような認証システムは存在せず、充電プラグに充電器を差し込むだけで、充電器側と車両がネットで接続され、自動でその車両を識別。事前に車両と紐づけてあるクレジットカードから決済されるという仕組みになっている。素晴らしい!

 確かにそうだろう。モデルXやモデルSともなれば、一昔前のスーパーカーの価格帯領域であり、もはや趣味性の高いEVと言わざるを得ない。

 「それでも『欲しくなるだろうな』と思わせる魅力がテスラにはあると感じています。例えば、今までアメ車以外に欧州車、逆輸入車など様々なクルマに乗ってきましたが、テスラのオートパイロットは精度が高く、最小限のアシストでレベルの高い走りが可能だったりします。制限速度認識(標識認識)、オートレーンチェンジ (車線変更)、レーダークルーズの制御は不安定な挙動が少なく比較的安定していますし、個人的にかなり驚きました。

 また、機関系のパフォーマンス、その他通信速度、学習機能、オートパイロットの自動運転精度(完全自動運転は日本国内では使用不可)、携帯アプリからのコントロール、サモン(自動駐車、遠隔操作)等、個人的な趣味の範囲としても十分に魅力的だと感じました。

 これらをすでに5年以上も前から確立していたわけですから『メカニックとしてこの世界も勉強してみたい』と思ったわけです」


 今現在、本国アメリカではEV製作が盛んになっており、あと数年でGMやフォード、ステランティスから様々なEVカーが登場するはずである。GMCからはハマー、フォードからはマッハEがすでに発売されているが、現実的な総合力としてテスラを超えるかは微妙であり、GMのこれから出る新型EVにおいては、打倒「テスラ」を掲げるモデルすらある。

 「恐らくですが、これから出るビッグ3の新型EVにおいて、テスラを上回るモデルはほとんどないと予測しています。テスラ自体は2003年からEVを作ってますし、考え方が自動車メーカーではありませんからね(モデルXのようなデザインのSUV自体が既存のメーカーからはあり得ない)、総合力においてビッグ3がテスラを追い抜くにはかなりの時間がかかると思います」

 ということで、林氏曰く「電費を計算したり、充電スケジュールを組んだり、モバイルアプリを利用して通信でコントロールしたり、時にパソコン片手に充電しながら仕事したり、そういった既存の自動車とは全く異なる世界に興味があり、またそういった実働を苦と思わないのなら、テスラは最高の愛車になる可能性を秘めている」ということである。

▲車両の作りみならず、オートパイロットやモバイルアプリ、または充電に関する簡素化等、テスラの他メーカーに対するアドバンテージの高さを体感し、驚きがたくさんあって好奇心がかなりくすぐられている。よって2022年型の最新モデルを追加でオーダーしたという。

▲取材班的にはまずはセカンドシートの快適さに驚き、車両の完成度の高さについて驚いた。しかもそれが2017年モデルというのだから、「最新モデルはどこまで進化しているのだろう」と林氏同様に興味がわいた。

 取材の最後に2列目シートに座らせてもらい近場を走ってもらったのだが、筆者も同様の衝撃を受けた。くわえて「非常にアメリカ的だな」というのがテスラの個人的印象である。

 例えば日本製のEVを見ると、明らかにシティコミューター的EVが多く、そうなれば当然搭載バッテリー電池は小さく充電の頻度が多くなる。

 だが、テスラはアメリカ的V8パワーのように、大容量のバッテリー電池を搭載しているから、一度の充電で走れる航続距離が長い。仮に8割充電でも400キロ程度は走れるから充電の頻度は少なくて済む。プラスして購入価格が高いから、買える層も限られる。となれば、複数台所有の方もいるはずだから、近場は小さいPHEVを利用する等、クルマを使い分けることも可能だろう。

 そうやって考えると、テスラは明確な高額車両であり、言って見れば趣味性の高いEVカーとも言えるわけで、例えば、メルセデスやBMW、アウディ、ポルシェ等のEVカーと比較しても十分に個性的でありスーパーであり勝機もある。

 ちなみに、デザインというか設計にも驚く。サイズ的には新型グランドチェロキーLよりも短く9センチ幅広くといった感じなのだが、モデルXの方が全てにおいて広いし快適であり荷室スペースも広い感じがするし、しかも全高が圧倒的に低いから操縦安定性も上だろう。これってEVだからこその設計の自由度によるものだろう。

 さらにオートパイロットやモバイルアプリ等の独自機能を鑑みると、さらにテスラスーパーチャージャー(充電設備)の存在も加えると、まだまだ他を寄せ付けないだけの魅力を放っていると言っても過言ではない。

 だが、林氏に取材して納得したが、その購入から取得までにはかなりの自助努力が必要であり(笑)、さらにメーカー自体のサポート体制も国産ディーラーのようには全く行かない(ネット対応が中心)ということを含めると、やはりまだまだいろんな意味で壁があり限られるのだろう。

 とはいえ、EVカーとして魅力的ということには間違いないから、比較的購入しやすい価格帯のモデル3やモデルYが日本の道路を埋め尽くす日も近いのかもしれない、と感じたのである。

 くわえてクワッドドライブにEVカーが導入されたということで、今後そっちの部分でのノウハウや技術習得が高まれば、それこそ次世代EVオーナーにとっても非常に心強いと言えるのである。

▲「メカニックとして、また一人の自動車好きとしてテスラに対する興味は尽きない」と語る林氏。次世代EVオーナーにとっても非常に心強いと言えるだろう。

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