TEST RIDE

[試乗記]

日本製ミニバンにはない広さと走り

2017 トヨタ シエナ SE

USトヨタ製左ハンドルの優越感

北米トヨタのミニバンであるシエナは、今再び人気の兆候を示している。その理由を取材した。

更新日:2022.12.21

文/小関一尚 写真/小関一尚

取材協力/FLEX USトヨタガレージ店 TEL 0120-914-377 [ホームページ] [詳細情報]

モデル人気絶頂の2017年型

 北米トヨタが誇るミニバン、トヨタシエナ。2011年に現行型にモデルチェンジし、日本でも逆輸入車ブームに乗ってかなりの台数が直輸入されている。

 そして、このシエナの魅力はズバリ、国産ミニバンにはない「広さ」と「走り」の性能である。

 いわゆる国産ミニバンは、日本ならではの大きさに固執、そして背の高さを優先し室内空間を稼ぎ出しているからこそ高速性能ではイマイチ安定感を欠き、「まあでもミニバンだから仕方ない」という認識にて成り立っている。ちなみにシエナとトヨタアルファードの全高は20センチ以上違うのだ(当然シエナの方が低い)。

 だからシエナが登場した時は、空間容量の多さと重心位置の低いハンドリング&走りに満足し、さらには「トヨタの左ハンドル車」としての珍しさ(優越感)が、多くのユーザーの興味をひいたのである。

▲2017年型でエンジンとミッションが進化し、2018年型でフロントマスクの形状が変化。だが、あえて2017年型の顔を求める方々が多い。

▲シエナといえば「白か黒」といったボディカラーが定番だが、この個体はレアなプリィドォーングレーマイカであることもオススメ理由。

 そんなシエナは2017年以降二度のマイナーチェンジを繰り返し、そろそろフルモデルチェンジかも、と言われ続けて2020年モデルへ。そして2021年モデルが昨年発表された。

 これまた当時のモデルの延長線上のマイナーチェンジが施されたのだが、ここでひとつ大きな問題が現れた。そう、トヨタシエナがハイブリッド車になったのである。よって2021年以降のモデルは日本への直輸入が不可能になった!

 ということで、トヨタシエナを日本で楽しむには、2020年までの中古モデルに乗るということである。

 だが、実は2020年当時はコロナ禍だったこともあり、選べるほどの個体が日本に入っていないというのが現状。実際には2019年モデルも非常に少なく、日本において選べる中古車個体がある年式は2013年から2018年あたり。

 具体的には、2017年から2018年あたりがシエナ人気の頂点であり、それ以降飽和状態が続いていたこともあり、だから2019年あたりのシエナの直輸入個体は非常に少なく、結果、今になってシエナを選ぼうとすれば2017年以前のモデルが最も多く、2018、2019年あたりの個体は数がかなり限られる。2020年に至ってはほとんどない。

▲2016年までシエナに搭載されていたエンジンは3.5リッターV6。266hp、最大トルク244lb-ftを発生させていたが、2017年から新たに搭載されたエンジンは同じく3.5リッターV6の筒内直接燃料噴射(D-4S)を採用したもの。それによって296hp、最大トルクは263lb-ftへと進化している。

▲3列シートを使用したままでも、かなりの荷室スペースがあるが、ご覧のようにシートアレンジを使えば、それこそフルサイズのような広大な荷室スペースが現れる。

▲シエナは両サイドドアが開く。

 で、そんな状態でありながらも、今、結構な勢いでシエナ人気が復活しているという。いわゆるキャンプブームや新たなファミリー層からの支持である。やはり人とは違うバンということなのだろうし、トヨタ車のクオリティの高さや安心感といったところだろう。

 さて、取材した個体であるが、2017年型のSE。新車並行で日本に上陸し、走行距離は約7万キロを刻んでいるが、さすが専門店が見立てただけあって、この個体、走行距離を感じさせないほど内外装ともにクリーンな状態である。

 ちなみに、シエナ人気の頂点は2017から2018年と上記したが、それはなぜか。実は2011年からのモデルライフにおいて、2017年にエンジンとミッションが進化し、2018年にはフロントマスクの形状が変わりアグレッシブスタイルとなった他、各種安全装備が充実したからである。

 要するに各種安全装備までを含めるなら2018年、いやそこまでいらないというのなら2017年におけるメカニズムの変化による走りの性能を味わうと言った感じである。

 だから日本市場においても、その年代の個体が一番持ち込まれており、一方買う側においてもこれらの年代が一番魅力的ということになるのである。

 余談だが、上記2017年、2018年が一番人気が高いのは間違いないが、それ以前のモデルにおいても北米トヨタ車としてのクオリティや性能は担保されており、中古車として十分に魅力的な選択肢となり得る。くわえて上記の年代たちに比べ安価であるから、あえてそう言った年式を選ぶことも当然アリなのである。

▲機能的な部分において国産車に劣っている部分はまったくない。質感もかなり良い。シフトの位置が高いから積極的に8ATを操ることも可能である。

▲組み合わされるミッションは、旧時代の6速ATから8速ATへと進化している。この多段化による走行性能および燃費向上がじつは最大のメリットをもたらしている。

▲メーター周りの構造もスポーティかつ実用的。SEにはホワイトメーターが装備。アナログメーターも今の時代、逆に新鮮。

 ということで、取材個体は2017年だから搭載エンジンは3.5リッターV6で296hp、最大トルク263lb-ftを発生させ、それを8速ATで駆動する(それ以前は6速AT)。

 さらにSEだからホワイトメーターが装着されており、取材車にはレザーシートも装備されているから、充実した装備と言っても過言ではないだろう。それでいて400万円台というプライス。

 くわえてレアなプリィドォーングレーマイカ(いわゆるガンメタに近い)が非常に似合っており、中古車としての使用感やヤレ感もさほど気にするレベルではないから、今シエナが欲しいという方には最適な一台ではないか、と思うのである。

▲SEは、プッシュスターターがオプション。この個体には装備されていないから、キー操作によるエンジン始動となる。

▲レザーシートだけに若干のシワ等の使用感は感じるものの、一般的な中古車からするとかなりの上玉レベル。コンディションは非常に良い。

▲リアも同様に状態は良い。7万キロの走行距離から予測するほどインテリアのヤレ感はほとんど感じない。

 日本でミニバンといえば、アルファード、ヴォクシー、ステップワゴンetcということになるのだろうが、そうした街ゆくミニバンたちとは一線を画す左ハンドルのバン。そして全高の低さからくる高速安定性の能力が高く、横風等による不安定な状況が少ないシエナ。

 気になるメンテナンスに関しては、フレックスUSトヨタガレージいわく「日本製トヨタとほとんど変わらないレベル」ということだから、今からでも十分に楽しむことが可能だろう。

 なお、シエナは2016年までの旧エンジン&ミッションと2017年の新エンジン&新ミッション、そして2018年以降の新顔と、市場には3つのバリエーションが存在しているから、中古車を購入する場合は、フレックスUSトヨタガレージのような北米トヨタ車を専門的に扱うプロショップのようなところで買うのが、リスク回避として最も適切な方法だと考える。

 USトヨタガレージは、あのフレックスの系列店であるからトヨタ車に抜群に強い。そんなフレックスがあえて北米トヨタ車に的を絞ったショップを作ったわけだから一般的な中古車店以上に車両の詳細やメンテナンス等に強いのはある意味当たり前である。

 シエナに関しては、「いま現在4台ほどの在庫車がある」ということだから、上記SE以外のモデルと比較することも可能であり、興味ある方は実際に足を運んで見てみることもオススメである。

▲北米トヨタ車専門であるUSトヨタガレージだけあって、現在4台のシエナを在庫中。その他広大な敷地に多数の北米トヨタ車が在庫されている。

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