TEST RIDE

[試乗記]

古き良きアメリカが味わえる名品

1989 シボレーカプリス セダン

エイブルにより復活したボックスシェイプのセダン

丸みを帯びたデザインにモデルチェンジする前の1989年型カプリスセダンを取材。古き良きアメリカが味わえる角ばったデザインの最終期モデルは、現代の交通事情にも至って普通に対応することが可能だった。

更新日:2026.07.13

文/石山英次 写真/古閑章郎

取材協力/エイブル TEL 044-857-1836 [ホームページ] [詳細情報]

37年前のクラシックデザインに魅了

 1989年型シボレーカプリスセダン。いわゆるボックスシェイプと呼ばれる角ばったデザインの、丸みを帯びたクジラスタイルになる直前のモデル。

 この車両はあるオーナーさんの個体で、エイブルに修理依頼をしていたもの。今回修理が終わり完調になった状態で、取材させていただいた。

 聞けば、ミッションの調子が悪く載せ換えを行ったという。この車両にもともと搭載されていたミッションは「TH200R4」の4速オートマチックで、新たに載せ換えたミッションは「TH700R4」の4速オートマチック。

 「TH200R4」を直し再び搭載するという方法もあるが、それよりもタフな設計になっている「TH700R4」に載せ換えた方が後々のことも考え良いのではないかという認識のもと実行。

 ちなみに、アメリカでは悪名高き「TH200R4」とも言われており、アメリカ国内でも耐久性アップを求めた定番スワップとして「TH700R4」への載せ換えが実践されている。

▲1989年型カプリスセダン。角ばったボックスシェイプのデザインがクラシックアメリカンな印象をあたえてくれる。

▲リアの直線基調のテールランプや直角に切り落とされたリアガラスデザインが特徴的。

 ただし、この両者はミッションケース自体のサイズが違うために、ポン付けで入れ替えることは不可能であり、加工や部品交換が必要になる。例えば「TH700R4」は「TH200R4」よりも全長が約3インチサイズが長いため、プロペラシャフトの長さ調整が必要になるとか etc

 そしてエイブルが交換作業、各部の調整、加工を行い、仕上げの試乗テストでの問題もなく完成&納車というタイミングで取材となった。

 ということで改めて1989年型シボレーカプリスセダン。1980年代を象徴するかのような四角いボックスシェイプを持つ伝統的なフルサイズセダン。

 当時のアメリカでは、ファミリーカーとしてはもちろん、パトカーやタクシーの定番としても使用され、映画やドラマにも登場していた「ザ・アメ車」の代表格。

 特徴的なのが角形4灯ヘッドライトと直線的なボディライン。そして直角に切り落とされたリアガラスデザインと直線基調のリアテールライト。89年型にもかかわらず古き良きアメリカの世界観がたっぷり残っているオリジナルのデザインがとにかくカッコいい。

▲搭載されるエンジンは5リッターV8。当時サードカマロに搭載されていたものと同機。カタログスペック的には170hpを発生させる。

▲適度なローダウンと15インチタイヤの組み合わせ。低すぎて下回りを打つことを心配することはない。

▲リアウインドーの形状が一番よく分かる構図。トランクルームの広さも随一。

 くわえてこの個体の雰囲気が素晴らしい。いわゆる旧車ならではのヤレの塩梅がちょうど良い。ヤレはあるがボロ過ぎず、でも手を加え過ぎずのオールドアメリカンな雰囲気が存分に味わえる。

 また、車高は下げ過ぎず、タイヤも15インチの60扁平でやり過ぎず、マフラーも社外だが爆音過ぎずで、すべてが本当にちょうど良い。そして室内に目を向ければ、そこには往年の雰囲気を色濃く残す当時のデザインの90%以上が現存している。

 ありがちなダッシュのひび割れは皆無だし天井のヘッドライナーが垂れてくることもなく、ウッド調パネルやセンターコンソールのスイッチ類も完調。ステアリングとオーディオは社外だが、ドアパネルに至るまですべての操作が生きており、極め付けのホリゾンタルスピードメーターの動作に感動する。

 余談だが、このメーターはミッションが回転するとワイヤーが回転しメーターの針を物理的に動かす仕組みになっている。だが、載せ替えたミッションはそれを電気信号でパルスを送るセンサーなっている。すなわち、それを活かせばオリジナルのホリゾンタルメーターは動かない。だが、そこはこだわりのオーナーさん。エイブルもその意図を汲みアメリカからワイヤー式ドリブンギアを輸入し交換。また、同時にミッションもコンバーターごと交換。手間を惜しまず、ツボを確実に押さえたプロの技で修正されている。

 そしてソファーのような大柄なシートに座り、キーを回しエンジンスタート。搭載される5リッターV8エンジンは、当時のシボレーカマロに搭載されていたものと同機。そして載せ換え作業を行った4速ATを「D」へ入れ試乗スタート。

▲ブルーのボディカラーに合わせたブルー基調のインテリア。ダッシュのひび割れはなく、およそ90%以上の割合で当時の状況が残っている。

▲ウッド調パネルやセンターコンソールのスイッチ類は完調。

▲左から右に向けホリゾンタルスピードメーターが動作する。単にスピードを見るだけならデジタルメーターに交換すれば済むことだが、オーナーさんにとってはこのメーターが動くことが大事。エイブルも見事、希望を叶えた。

▲4速コラムシフトを搭載。

 言われなければ、ミッションを載せ換えたこと自体がわからないほど至って自然の流れ。1速から2速、2速から3速あたりまでの変速を街中で感じることはできるが、それらの感触に難クセをつけることができないほどスムーズ。

 ちなみに載せ換えた「TH700R4」の4速オートマチックミッションは、エイブルが自社でオーバーホールして保管していたものだから、中古品を入手して載せ換えたものではない。だからこその極めて良好な変速なのだろう。

 ミッション以外でも、このカプリスセダンの走りは非常に印象の良いものだった。エンジンの調子やスムーズさは特筆もので、ハンドリングもふわふわ&ガタガタという部分は全くなく適度に締まっており、ローダウンしているサスペンションの当たりもそこまで硬くはないから、そしてそれでいて下回りを打つほど低くはないから気を使うこともなく、気持ち良く走ることが可能。とにかくめちゃくちゃ楽しい!

 こうした年代のGM車の整備や車両販売を行っているエイブル曰く「見た目も含めかなりいい状態ですよ」と言っていたが、まさしくその通りの個体であった。

▲ドアパネルに設置される操作系ボタン類も普通に稼働する。

▲大柄かつふかふかのシートには使用感は見られるが、破れ等の破損はない。シートの座り心地は最高。

▲リアシートにも使用感はあるが、十分に使える状態が維持されている。

 89年と言えば、今から37年前の個体。だが、実車の見た目には、デザインを含め、それ以上前のクラシックカーのような雰囲気が漂う。にもかかわらず、現代の道路事情においても至って普通に走れるのがこの個体の魅力。エンジンやミッションが完調なら、この年代でも怖いものなしで楽しめるだろう。

 この個体のオーナーさんは、若き大学生時代にオールドマスタングを購入し、その後サードカマロやフォードマスタング等を乗り継ぎ、カプリスセダンへたどり着いたという。

 「映画『マッドマックス』を見て以来のアメ車好きなんです。そして映画でよく見たこの型のカプリスセダンに魅了されました」と語り、完成した憧れの愛車を前に、「エイブルさんに任せて本当に良かったです」と満面の笑みを浮かべていた。

▲ミッションの変速は言われなければ分からないほどスムーズ。ハンドリングや乗り味も上々。乗っていて非常に楽しい。

▲実見た目にはクラシックな雰囲気が漂うが、現代の道路事情において至って普通に走れるのがこの個体の魅力。

▲この個体のエンジンやミッションの整備や交換&調整を行ったエイブル。90年代前後の整備等への造詣が深く、様々な事例に対応してくれる。

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