TEST RIDE

[試乗記]

ミッドサイズにV8エンジンが冴える

シボレー トレイルブレイザー EXT V8

CHEVROLET TRAILBLAZER EXT V8

03年に登場したトレイルブレイザーEXTは、ミッドサイズ+サードシートを持つ貴重な存在である。

更新日:2010.02.18

文/編集部 写真/編集部

取材協力/GMアジアパシフィックジャパン  TEL 0120-711-276 [ホームページ]

ライバル・フォードエクスプローラーとは…

 冒頭からちょいと話がそれて申し訳ないが、以前奈良県生駒でアメ車系イベントが行われた際、そこまでの足として使ったクルマがフォード・エクスプローラーだった。

 エクスプローラーは、初代モデルが、90年後半に91年モデルとして登場し、それから11年後の02年に現行型が登場している。現行型は通算3代目となるモデルであり、初代から全米では常にベストセラーモデルとして君臨スーパーSUVである。

 このエクスプローラーの3代目、つまり現行モデルの目玉はサードシート設置による7人乗り、さらにステアリング形式にはラック&ピニオン式の採用、そして独立懸架サスペンションへの進化など、期待するところは多い。内装におけるサードシートの設置は、先に登場したダッジ・デュランゴの影響をもろに受けた形だが、独立サスペンションに関してはフォードに一日の長がある。

 一方外観は、従来のイメージを残すキープコンセプトでありながらも、全体的に高級感を増したデザインに進化している。特にフロントヘッドライトの形状がその印象を大幅に変えたといっていい。

 搭載されるエンジンは2種類。4.6リッターV8SOHC(242ps、トルク39kg-m)と4リッターV6SOHC(213ps、トルク35.1kg-m)。V8エンジンは、オールアルミ製であり、1500回転という低回転から最大トルクの90%を発生させる優れもの。ドスの利いた加速感が味わえるはずだった…。

03モデルでは290ps、トルク45kg-mを発生させる。直6もいいがこのV8も捨てがたい。乗った印象としては、軽快な直6、豪快なV8。スムーズ&気持ち良い直6に対し荒々しさと力強さのV8といったところ。V8モデルは車重からかフワフワ感が若干強い。

そもそもサードシートって何のためにあるのだろう?

 期待していたのである。この高性能モデルに大人6人と2泊3日の荷物を載せての往復約1300km/hのツーリング。

 個人的には初めてのエクスプローラー。これぞアメリカ的使い方。こういうツーリングこそアメ車の本領を発揮するのではないかと。

 ところが……。現行型エクスプローラーに大人6人分の荷物を載せると、リアの荷室スペースではもの足りず、3列目のシートは完全に機能しなくなった。結果的には大人6人中4人しか乗車することができなかったのだ(そもそも大人があのサードシートに座るのはかなり辛そうだった)。

 それ以来、個人的にミッドサイズSUVに対する疑いの目が注がれるようになった。そもそもサードシートって何のためにあるのだろうか?

 日本でアメリカンSUVに乗るなら圧倒的にミッドサイズがオススメである。最近では各ブランドから様々なモデルが発売されているが、ミッドサイズなら、アメリカンSUVが一番であると今までもずっと思い続けている。だが、ミッドサイズ+サードシートに今のところ価値は見い出せない。

サイド絞り込まれているため、サードシートは2名乗車だが、それでも大人が長時間座っていても、ほぼ問題ないスペースをトレイルブレイザーEXTは有している。これぞサードシートだ。

V8エンジン+サードシートという組み合わせ

 01年に登場したシボレー・トレイルブレイザーから2年後の03年に登場したトレイルブレイザーEXT(エクステンドモデル)。
 中でもV8エンジンを搭載した、EXT V8は、使えないミッドサイズ+サードシートという概念に一矢報いる貴重なSUVである。

 全長4890mmのスタンダードボディのホイールベースを41cm引き延ばし、全長5300mm、ホイールベース3280mmとすることで、サードシートに大人が座っても、ある程度の荷室は確保されている。それでもエクスプローラー以上のスペースは確実にある。

 一方、大人6人+荷物を満載しても、搭載されている5.3リッターV8エンジンは290ps、トルク45kg-mを発生させ(03モデルにおいて)、同じくV8エンジンを搭載しているエクスプローラーよりも断然力強い。そして気持ち良い。

 ちなみに05モデルは305psを発生し、トルク46kg-mを発生させる。さらに可変気筒休止システムを備え、力を必要としないと判断したときには4気筒を休止させて燃費向上にも努めるよう進化している。

サードシートを立たせた状態でもかなりのトランクスペースを有している。

セカンド&サードシートを倒せば、広大なスペースが現れる。ミニバンいらずだ。

ミドルクラスでありながら、フルサイズ感が味わえる

 EXTは、全長が5300mmということで(実はタホよりも長い)、大きさが心配という方も多くいるかもしれない。
 だが、全幅はスタンダードモデルと同様の1900mだから、若干大きいサイズの左ハンドル車がドライブできれば、まったくもって心配する必要はない。横幅の感覚さえつかめてしまえば(タホやサバーバンは、全幅が2004mmもあり、さらに着座位置やボンネット位置の関係から右端の確認が微妙である)、全長はほとんど気にすることなく、移動可能である。

 V8モデルには 、スムーズ極まりない直6エンジンと比較して「ドッカーんと背中をけ飛ばされた感じ」ほどのトルク感が特徴のエンジンである。200kg以上重くなっているにもかかわらず、その分ハンドリングのシャープさには若干欠けたが、アクセルひと踏みですべてを忘れさせてくれるこのV8エンジンの魅力は、あまりにも大きい。

 ここ数年、並行輸入車でしか楽しめなかった5リッター級のV8モデルを、正規モデルとして楽しめるのだから、その点は大いに喜ぶべきである。ミッドサイズに大排気量のエンジン+サードシート。まさに最高の組合せである。

インテリアは直6エンジン搭載のスタンダードモデルとまったく変わらない。V8ならでは革新さが欲しいところではあるが、タホ、サバーと比較すると質感で勝っている。

気になるタホと比較すると…

 V8エンジンを搭載したトレイルブレイザーで気になるのが、やはりタホの存在。同じ5.3リッターエンジンを搭載するが、トレイルはアルミブロック。一方タホは鋳鉄ブロック。重量が違う。

 さらにボディフレームは、トレイルがフルハイドロフォーム成型でタホがフロントのみハイドロフォーム。足回りも、トレイルがフロントコイルオーバーであるが、タホはトーションバー。コイルオーバーの方が乗り心地に優れている。

 結果的にパッセンジャーカーとしてはトレイルの方が数段格上という評価である。

V8+フルサイズボディのタホも魅力的ではあるのだが、パッセンジャーカーとしては…。

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