この原色の2台のスポーティカーを見ればどちらがセカンドカーであるかは一目瞭然だろう。だがそのセカンドカー、じつはMTでありチューンナップされている。
セカンドカーと言えば実用性や経済性を優先するというのはごく当たり前の認識であると思うが、この2台のオーナーである岩田氏は違っていた。
「たしかにセカンドカーではあるのですが、奥さんは別にもう1台持っていますので、結局一人で乗ることが多くなる。だからこそ大きさにこだわることはないですし、MTでも全然問題ありません。どちらかといえば走り優先で、パーネリージョーンズリミテッドの距離を抑えつつも同じような楽しさを得ることができるセカンドカーを選んだのです」
彼の乗っている2台のクルマ、それはフィアットアバルト500をチューンナップしたGテック165と限定車であるサリーン パーネリージョーンズ リミテッドエディション(以下、PJ)。両者の目指している方向性は恐らくまったく違うだろうが、走りの楽しさはどちらも甲乙つけがたいほど似通っているという。
そもそも彼がセカンドカーを必要とした理由、それはファーストカーたるマスタングをこれでもかと大切に扱うがゆえにである。
岩田氏は、このPJを中古車として手に入れ、その前にはエレノアに乗っていた。だがこの希少車との出会いをきっかけにMTモデルにハマっていく。さらに走る楽しさにも。で、そういった流れの中でPJとアバルト500との組み合わせになったのである。
そんな岩田氏が溺愛するPJとは一体どんなクルマなのだろうか?
通称PJと呼ばれるこのオレンジ色のマスタングは2007年に登場した。しかも全世界500台限定である。このPJは、マスタングのチューンナップで有名なかのサリーンが制作したコンプリートモデルであり、1950~70年代にアメリカで活躍した伝説のドライバー・パーネリージョーンズの名を冠したスペシャルモデルとして誕生したのである。
このPJは、パーネリー自身がかつてドライバーとしてSCCAトランザムチャンピオンシップを制し、その時ドライブしていた伝説のスーパーマスタングBOSS 302を復刻させたもの。05に登場した現行マスタングに強いインスピレーションを感じたパーネリーがスティーブサリーンに直接話を持ちかけて実現したマスタングなのである。
さらにこの話には続きがあり、このPJのためにフォードは新たに70年時のチャンピオンカーと同色となるグラバーオレンジのボディカラーをわざわざ純正設定したのである。
ベースとなっているのは2007年型マスタングGT。当時まだ4.6リッターだったV8エンジンは5リッター(302cuin)にスープアップされ400hp/6000rpmのパワーと53.9kg-m/4000rpmの最大トルクを発生させる。この時点でざっと純正比100hp以上のアップであり、それをクイックレシオの5速MTと組合わせることで、超軽快なマシンに生まれ変わったのである。
足回りは、サリーン製サスペンションに19インチにサイズアップされた7本スポークホイールが組み合わされる。基本的にチューニングカーということで、購入後もノーマル状態を維持している。オーナー自身の手でチューンナップしたのはハースト製のシフターのみ。
往年のBOSS 302を彷彿とさせるボディは、すべてに手が加えられている。フロントグリル、リアパネル周りはクローム処理され、レーシーなフードピンでロックされるボンネットフードにシェイカーフード、さらに当時、ホモロゲ取得のためのロードカーに採用されていたリアウインドーのルーバーも健在。また当時の若者の憧れの的だったゼッケン「15」番も忠実に再現されている。
一方インテリアも同様にカスタマイズされている。基本はボディカラーと同様にブラック&グラバーオレンジ基調である。
シートの座面と背もたれ中央にはボディと同色となるオレンジを配色。インパネには、ステアリングにPJのロゴ。センターパネルのルーバーはパーネリー&スティーブの直筆サインが入る。なお、この車両においてはホワイトボールのハースト製シフトノブに変更されている。
これまで何度も言っているが、現行マスタングのスペシャルモデルとして誕生した数々のモデルラインナップの中で、このPJは随一の完成度でありカッコよさである。この実物のPJには、中途半端に模倣されたPJもどきや自己流アレンジを施したマスタングカスタムカーにはない洗練度で満たされ、本物のみが発するオーラで満たされている。
だからこそセカンドカーを入手してでもこの味を末永く守りたいという岩田氏の思いもよくわかるのである。
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