編集:20年近く昔になりますが、1990年代後半から2000年代初頭にかけて、アストロ、カプリス、サバーバン、C1500といったシボレー車が日本で大流行した頃に、「GM純正テスター『TECH2(テックツー)』完備」みたいな広告をよく見かけましたが、メーカー純正の専用スキャンツールというのは、要するにあのTECH2みたいな装置のことですよね?
榊原:そうですね。TECH2は確かにGM純正の専用スキャンツールです。ただし、一時代前のツールになります。車種によって異なりますが、OBD1の搭載が義務化された1991年型〜2013年型までの車両に使えるのがTECH2になります。ただ、2003年以降の一部の車種にはCAN(Controller Area Network)というコンピュータ通信機能が搭載されているので、別途CANdiモジュールというインターフェースが必要となります。
90年代からアメ車に乗り始めた古くからのユーザーの中には、メーカー純正テスター=TECH2というイメージを持ってる方が多いようですが、TECH2はあくまでもGM車専用のスキャンツールであり、フォードやクライスラーの車両は見れません。
また、日本ではTECH2がメジャー過ぎて、スキャンツール(純正テスター)=モニター画面を有するハンディタイプのスキャンツールと思っているユーザーが多いみたいですが、現在のメーカー純正専用スキャンツールは全てパソコンに接続して使用するタイプです。
そして、現在のメーカー純正の専用スキャンツールというのは、車両のOBDポートに接続してパソコンと繋げる「インターフェース(デバイス)」=ハード部分と、パソコンにインストールするプログラムやメーカーの専用サイトに接続するための契約といったソフト部分の両方を指します。
編集:年式に応じたスキャンツールが必要といった話は先に伺いましたが、それらをメーカーごとに全部解説していくと大変なことになるので、6 DEGREESが現在日常的に使用している各メーカーの専用スキャンツールを教えてください。
榊原:それはかまいませんが…、先に言った通り、現在の専用スキャナーはハードとソフトに分かれていています。ハード、つまりインターフェースの方は購入した現物があるので紹介するのは簡単です。でも、ソフトの方はCDを購入したり専用サイトからダウンロードしてインストールすればOKというわけではありません。専用サイトにログインするためのIDとパスワードを購入したりするんですが、その内容や方法もメーカーによって違うし、必要に応じて短期契約するという感じなので、横並びでリストアップするというのはちょっと難しいですね。
編集:この企画は一般ユーザーにスキャンツールの重要性を知ってもらうのが目的であり、何も教科書を作ろうというわけじゃないので、その辺はザックリでいいですよ(笑)。
榊原:了解しました。とりあえずメーカーごとの最新の専用スキャンツールと6 DEGREESが使っている専用スキャンツールを簡単に紹介します。
【 GM 】
・ハード=MDI2
・ソフト=GDS2(Global Diagnostic System)、TIS(Techline Information System)、Si(Service Repair Manual Information)、Tech2WIN
※最新のハードはMDI2にバージョンアップしていますが、6 DEGREESではMDI1を使用しています。
ソフトの方は「3 Days」「1 Month」「1 Year」といった契約形態がありますが、6 DEGREESでは必要に応じてその都度3 Daysで契約しています。
また、GMについては現在でも使い勝手の良いTECH2&CANdiモジュールをかなりの頻度で使っています。
【 FORD 】
・ハード=VCM2
・ソフト=IDS(Integrated Diagnostic System)、 Ford Technical Service
※最新のハードはVCM2にバージョンアップしていますが、6 DEGREESではVCM1を使用しています。
IDSはVCMとセットみたいな感じで年間契約しますが、それ以外にMotorcraftでサービスインフォメーション、配線図、ロケーション図などを閲覧するためのID&PASSを期間限定で購入しています。
【 CHRYSLER 】
・ハード=VCI Micro Pod2
・ソフト=wiTECH2、Tech Authority
※最新のハードはMicro Pod2ですが、6 DEGREESでは現時点ではひと世代前のwiTECH VCI PODを使用しています。
クライスラーについては、2018年からMicro Pod2以前のスキャンツールが使えなくなるという話でしたが、現時点ではそれまでのスキャンツールが普通に使えているので買い換えてはいません。しかし、実際に古いスキャンツールが使用不可になったらすぐに最新のものを導入する予定です。
Tech Authorityにはサービスインフォメーション、部品図、配線図、ロケーション図など全てが含まれています。クライスラーは現時点では「Pod」「wiTECH」「Tech Authority」の3つで全てが網羅されているので他メーカーと比べると使い勝手が非常に良いんですが、この先変わる可能性が高いので心配しています。
編集:正規ディーラーのサービスセンターでは、前記したのメーカー純正専用スキャンツールを必ず完備しているわけですよね?
榊原:そうですね。正規ディーラーのサービスセンターの場合、キャデラック、シボレーであればMDI、ジープであればMicro Pod2を完備していますし、撤退したフォードもVCM2を完備していました。また、ソフト系についても正規ディーラーではひとつのID&PASSでサービスをフルで使えるようになっているので、我々のような外部業者よりも使い勝手は良いと思います。
ちなみに、上記では基本的に「現行モデル」に対応した専用スキャンツールを羅列しましたが、それ以外にも汎用スキャンツールも必要に応じて使用していますし、また、クライスラーのStarSCAN、DRB-3といったひと世代、ふた世代前の専用スキャンツールもその時代の車両に対しては相変わらず有効なので、お店によってはまだまだ現役で活躍していますね。
さらに言えば、アメリカを走っている全ての車両の配線図が閲覧できる「OnDemand5.com」というMitchell1のサイトがあります。古いアメ車ファンなら「CHILTON」「Haynes」などのペーパーバッグタイプのリペアマニュアルをご記憶の方も多いと思いますが、あれをネットに集めたようなサイトですね。これの年間契約料は2040ドルかかります。メーカーのサイトに行けば現行モデルの配線図は見れますが、古いモデルの配線図などは削除されているので、こういった外部サイトの契約も必要になるわけです。
編集:聞いてるだけで面倒臭そうというか、大変なのが想像出来るというか…。メーカーごとにハードもソフトも違うわけですから、当然ながら使い方も違うわけですよね? 「車両診断」とか「リプログラミング」とか、仮に使用目的が同じだとしても操作方法などはそれぞれ違うのが当然ですし。
また、ハードの方は一度買ってしまえばモデルチェンジするまではずっと使えるのでしょうが、ソフトの方は期間に応じた契約料がかかると聞いてますし、さらにはアップデートなどのコストもバカにならないでしょう。それ以外にも必要なサイト契約があったり、色々な意味で大変そうですね。
↓アメ車の修理や整備にテスター(スキャンツール)が必要なのか?
>>第一回・テスター(スキャンツール)を検証する特集を開始
>>第二回・古いアメ車の整備&修理にはテスターは使わない?
>>第三回・専用スキャンツールと汎用スキャンツールの違い
>>第四回・GM、フォード、クライスラーの専用スキャンツール
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