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テスターorスキャナー=車両が発した情報(DTC)を読み取るための外部診断器

アメ車の修理や整備にテスターが必要なのか? 第二回

全てのアメ車の整備&修理にテスターが必要なわけではない?

現代のアメ車&逆輸入車の修理やメンテナンスに「メーカー純正テスター(スキャナー)」は必須アイテムなのか?を検証する特集の第二回目は、現役の整備士(メカニック)に、「テスターとは何なのか?」「全てのアメ車に必要なものなのか?」という事を聞いてみました。

更新日:2017.12.25

文/田中 享(Tanaka Susumu) 写真/田中 享(Tanaka Susumu)

取材協力/6DEGREES(シックスディグリーズ) TEL 072-984-6651 [ホームページ] [詳細情報]

1991年式以降のアメ車にはスキャンツール(テスター)が必要?

 最近よく聞く「メーカー純正テスター(スキャナー)」の必要性や重要性を紐解くこの企画は、現役メカニック(サービススタッフ)へのインタビューという形でお届けする。
 インタビュー取材に協力してくださったのは、大阪の「6 DEGREES(シックスディグリーズ)」の整備士・榊原彰博洋氏だ。

編集:今回の企画ではメーカー純正テスター(スキャナー)と呼ばれる機械(存在)を、ユーザーに分かりやすく解説するのが目的なのですが、率直に言ってアメ車(&逆輸入車)の整備や修理をする際に、テスターというのは必須アイテムなのでしょうか?
 筆者は日本中のアメ車ショップや修理工場で取材していますが、お店によって「絶対に必要」「時々必要(or持っていた方がベター)」「必要ない」と大きく分けて3つの意見があるのですが?

榊原:「必要」なアイテムですね。少なくとも6 DEGREESの業務においては、なくてはならない必須アイテムです。ただ、だからといって「時々必要」とか「必要ない」といったお店が嘘をついているとか、間違っているというわけではありません。
 何故かというと、テスターとかスキャンツールと呼ばれる外部診断器は、全てのアメ車に必要なツールではないからです。例えば旧車専門店などであればスキャンツールは無用の長物でしょう。逆に新車販売が中心の正規ディーラーや、高年式のモデルを中心に取り扱っているショップの場合は、スキャンツールは必須アイテムとなります。


編集:なるほど、取り扱う車種や年式によって必要性が変わってくるわけですね。何となく分かります。テスターを車両に接続して情報を読み取る行為を「コンピューター診断」などと呼びますが、昔の車にはコンピューターなんて使われていませんものね(笑)。
 では、具体的にはどの年代の車から、整備や修理にテスターが必要となるのでしょうか?

榊原:パッセンジャーカーとトラックでは違いますし、もちろんメーカーや車種によっても違います。ということで、一概には何年からとは言えないのですが…、アメリカで乗用車&小型トラックに対して、OBD2仕様の自己診断機能の搭載が義務付けられたのが1996年なので、1996年以降に新車販売されたモデルを修理&メンテナンスする際には何らかの外部診断器が必要と断言してもいいと思います。
 OBD2以前のOBD1がカリフォルニア州で義務付けられたのが1991年で、この頃には各自動車メーカーは自社開発車専用の外部診断器を開発してディーラーのサービス工場に常備させていました。なので、1991年以降と回答する方がベターかもしれません。ただ、OBD1の時代には、通信規格、故障コードを表示させる手順、各故障コードの意味合いなどがメーカーごとにバラバラ。さらにはセンサーの数自体が現代の車とは比較にならないくらい少なく、要するに自己診断機能自体が発展途上段階だったので、修理やメンテナンスをする際に外部診断器が絶対に必要か?と問われると、微妙なところだと思います。もちろんあるに越したことはないのですが。


編集:つまり1980年代までのモデルであれば、テスターがなくても修理やメンテナンスが出来るけど、1996年以降(場合によっては1991年以降)のモデルにはテスターは必要というわけですね?
 筆者が個人的に馴染みの深いモデルで言うと、サードカマロまでは必要ないけど、フォースカマロからは必要。C3コルベットまでは必要ないけど、C4の途中からは必要。とか、そんなイメージで良いでしょうか?(笑)

榊原:そうですね。まぁそんな感じです。あくまでごく大雑把に言えば、ですが(笑)。
 ちょっと逸れますが、自己診断機能や外部診断器に関しては、アメ車、とくにGMはパイオニア的存在なんですよ。GMは1980年には車両組立ライン上に、エンジンECUの検査用にALDL(Assembly Line Diagnostic Link)というデータ通信システムを導入しています。また、1980年代には既にコントロールディスプレイで各センサーのデータや故障コードを表示できる機能を、キャデラックの特定モデルに搭載しています。
 さらに言えば、先にアメリカでは1996年にOBD2の搭載が義務付けられたと言いましたが、EU(欧州連合)が排ガス規制の一環としてOBD2仕様の自己診断機能の搭載を義務付けたのは2001年。同じく、日本の国土交通省がOBD2仕様の自己診断機能の搭載を義務付けたは2008年ですからね。2008年と言えば、アメリカでは既に全ての乗用車&小型トラックのECU間のネットワークに、CAN規格(Controller Area Network)の採用を義務付けています。この分野でいかにアメリカが進んでいるかが分かりますよね。

今回のインタビューに協力してくれた6 DEGREESの榊原氏は、アメ車&逆輸入車の修理&メンテナンス&チューニングであれば、最新モデルから旧車まで何でもこなす整備士。愛車は常にアメ車で、その愛車でドラッグレースなどにも積極的に参戦している。

手前の1971年型シボレーカマロは6 DEGREES代表取締役の石堂良典氏の愛車。奥の1957年型シボレーベルエアは榊原氏の愛車。この辺の年代のモデルの場合には修理やメンテナンスにスキャンツール(テスター)と呼ばれる外部診断器は必要ないとのこと。

ECUに内蔵されたOBDが異常を感知してDTCを記録する

編集:今回は一般ユーザーが対象の記事なので、専門的な知識や技術、業界用語などを解説するつもりはなかったのですが…。「OBD」というワードは割とよく聞く単語ですし、この後の記事にも関係してくると思うので、簡単に解説していただけますか?

榊原:「OBD」は「On-Board Diagnostics」の略で、「自己診断機能」とか「車載式故障診断装置」などと呼ばれます。自動車の各部に取り付けられたECU(Electrical Controll Unit=電子制御装置)にプログラミングされた機能のひとつです。
 ECUは、自動車が安全に運行&環境性能を発揮するために、センサーからの信号などに基づき最適な制御を行っているんですが、断線やセンサーの機能異常などの不具合が生じた場合、その情報をECUに自動記録します。この異常や不具合を検出する診断機能こそがOBDであり、OBDによって故障診断を行った結果、不具合が生じていると判断した場合にECUに保存(記録)される英数字からなるコードを「DTC(Diagnostic Trouble Code)=故障コード」と呼びます。そして、このECUに記録された故障コードを読み取るための外部診断器こそがテスターとかスキャンツールと呼ばれる装置です。
 ちなみに、外部診断器には自動車メーカーが自社製の車両のために製造した「専用スキャンツール(=純正テスター)」と、ツールメーカーが製造した「汎用スキャンツール」が存在します。


編集:またチョコチョコと専門的な用語が出てきてしまいましたが、今のお話を聞いてひとつはっきり分かったことがあります。つまり「メーカー純正の専用品にしろ社外の汎用品にしろ、スキャンツールというのは、整備対象の自動車にOBDが搭載されており、なおかつその自己診断機能がきちんと機能していて初めて使える機械であり、そもそもOBDが搭載されていない時代の自動車には使い用がない」という事ですよね?

榊原:そうなりますね。もう少し補足するなら、自動車に搭載されるECUもOBDもどんどん進化しています。そしてそれに対応すべく外部診断器もソフトも定期的にバージョンアップしています。そうなると、当然ながら車両の年式によって必要となる外部診断器も変わってきます。ということは、メーカー純正の専用品にしろ社外の汎用品にしろ、どれか特定の外部診断器を持っていればそれでOKということにはならないので、そのお店の業務内容によっては様々な外部診断器が必要となります。

編集:なるほど。アメ車に限らず、自動車は年式によって必要となるスキャンツールが違うということは分かりました。ただ、まだまだ聞き足りない事があるので、次回以降は「スキャンツールの種類や役割」、そして根本的な疑問として、「何故スキャンツールが必要なのか?」などについて伺いたいと思います。

↓アメ車の修理や整備にテスター(スキャンツール)が必要なのか?
>>第一回・テスター(スキャンツール)を検証する特集を開始
>>第二回・古いアメ車の整備&修理にはテスターは使わない?
>>第三回・専用スキャンツールと汎用スキャンツールの違い
>>第四回・GM、フォード、クライスラーの専用スキャンツール

「OBD」と呼ばれる車載式故障診断装置が装備された車両の修理、メンテナンス、アップデートなどに必要となるのが一般にテスターと呼ばれる自動車メーカーの専用スキャンツールやアフターパーツメーカーの汎用スキャンツールであり、車載式故障診断装置が装備されていない時代の車両にはスキャンツールは必要ない。

現代の自動車にはいくつものECUが搭載されており、それぞれには自己診断機能や車載式故障診断装置と呼ばれる機能が装備される。そして何らかの機能異常を感知した場合にはメーターパネル内のランプなどでドライバーに伝えると同時にECUに故障コードを保存しているのだ。

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