今回で5回目となるカスタムプロジェクトは、足回りの最終チェックとエンジン関係のチューニングへと進行している。まず足回りは、以前に装着していたコイル(以下A社)から新たな2本目のコイル(以下B社)へと交換し、ベストセレクトを探っている状況だった。
>> プロジェクトVOL.2で紹介したコイル交換を見る
一方でエンジン関係のチューニングは、主にスーパーチャージャー周りをメインとしたパーツ変更を行っている。まずは、スーパーチャージャーのプーリーを変更。色々なサイズとの組み合わせがあるが、その中から最良の組み合わせを選択。またブーストアップや吸気効率アップのためインテークポート研磨、コールドエアインテーク、コンピュータ書き換え等を実施。これらはスーパーチャージャーが最も効率的にブーストをかけられるセッティングにするために必要なことだという。
<足回りセッティング>
★A社とB社とのダウン量の違い
A社のダウン量:F0.9、R1.1(インチ)
B社のダウン量:F 0.75、R1.0(インチ)
★車高の実測(A vs B)
リアの車高はほぼ変わらずだが、フロントの車高はA社の方が6ミリ高い。
★A社の印象
純正ノーマルの前後姿勢を保ったまま平行に車高が下がったので、前後重量配分等のバランスの変化といった問題は出ず。また純正のスプリングのままだとコーナリング出口からの加速時でオーバーステア気味になりがちだったが、リアスプリングのバネレート変更により安定感が増している。なお、フロントのバネレート変更は純正のショックが対応できるレベルだった。
★B社の印象
ハイスピードコーナリング時にフロントタイヤのグリップに負けて、ややアンダーステア傾向になる。ストローク(車高)やバネレート特性が原因だと思われる。一方でリアのバネレートはグリップを向上させている。
★総括
B社はバネレートが低く、高速域での安定性に欠くところがある。そして凹凸でフルボトムが起こることもある(高速域)。また乗り心地の印象もあまり良くなく、純正のマグネティックライドサスペンションとの相性もA社ほどには良くない。
一方A社は、フロントのストロークが確保され、不等ピッチのスプリングがコーナリング、直進安定性を向上させている。またマグネティックライドサスペンションとの相性も良く、特にマグネティックライドの「SPORTS MODE」での走行では、超高速域においても対応できるレベルにある。
ちなみに不等ピッチとはコイルの巻き方のことであり、A社は不等ピッチ、B社は等間隔の巻き方であり、またコイルを上から見た時の断面積はABともに同一なのだが、B社はコイルの輪の直径が小さいことが分かった。つまり、これにより力がかかったときの耐荷重において違いが出るのである(B社のが弱い)。
以上のことから、B社のテストを終え、A社のコイルを再び装着することにした。
<エンジンセッティング>
★作業内容
・スーパーチャージャープーリー変更
・8リブ専用サーペンタインベルト
・インテークポート研磨加工
・スーパーチャージャー、ソリッドアイソレーター変更
・ブースト変更
・エンジン、ミッションコンピューターチューニング
・サーモスタット開弁温度変更
・コールドエアインテーク
etc
★交換後のインプレッション
ストップ&ゴー状態の、いわゆる信号からの出だしくらいの状況ではほぼ変わらないが、2000回転くらいから4000回転くらいにかけてのブロアの効きが断然強烈になった。3000回転までの勢いが段違いになり、ノーマル時はどちらかというと回して楽しむエンジンという印象だったが、セッティング後は、明らかに低速から楽しめるようになっている。それも後ろから蹴飛ばされたかのようなアメ車らしい爆発的な加速力。2000回転から4000回転にかかる時間も以前とは比べものにならない状況で、いわゆる「あっという間」というやつだ。
上記に紹介したセッティングを施し、そしてしばらくの間テスト走行を繰り返した現在の走行距離は9000キロ。約2000キロ時に装着したミシュランパイロットスーパースポーツの状態もまだ良く、現在は主に耐久テストを兼ねた走り込みを続けているという。そしてつい最近、現状でのパワーチェックを行い、スーパーチャージャー周りのパーツセッティングにおけるひとつの結論を得た。
●主に耐久テストをかねて走行テストを繰り返していると聞きますが、いかがでしょう?
「速さ」と「バランス」の両立という点においては、一つのメドが立ちましたね。この先「耐久」部分のテストを繰り返すことで、完成に一歩近づく感じですね。
●これまでのテストの中で、トラブル等はありませんでしたか?
現在9000キロ走行ですが、これまでの各種チューニング&テストにおいて、CTS-Vでのトラブルは皆無ですね。ただ、耐久性の部分に関しては、今も継続的に行っている最中ですし、結論はまだ先ですかね。ただ、現状で高速走行中にLSDの効きが甘くなるという印象を体験していますので、リアデフオイルクーラーの増設は実施します。
※現状での走行テストにおいて環状線を2周くらい走るとLSDの効きが甘くなるという現象を把握しているという。油音センサーが温度上昇を警告しているので、早々にデフのオイルクーラーを装着する予定。
●現状で実際には何馬力になっているのでしょうか?
以前計測した時点で564馬力でしたが、今回のセッティングを終えて計測した時点では621馬力でした。クルマ自体に大きな負担をかけないレベルでのパフォーマンスアップは「ノーマル出力+100馬力程度」と思っていますので、まだ少し余力がある感じです。実際にカタログ値+100HPまではあと45馬力ですので、そのくらいは上げたいと思っています。ただ、実際にユーザーに勧める勧めないは別として、テストカーとしての期待値としては、700馬力程度までは持っていきたいところです(笑)。
エンジンのパワーチェックの様子です。
現在の状況で、サスペンションやエンジン周りのセッティングにひとつの光りが見えた状態にはなったが、今回改めて驚いたことがいくつかあった。それはショックやブレーキがノーマルのまま使用されているということ。約60馬力アップした状態でもなお、純正マグネティックライドショックは順応しており、同じく純正6ポッドブレンボブレーキはノーマルのまま適切な制動を見せる。
純正パーツに社外パーツをうまく組み合わせているのが、このCTS-Vの概要ではあるのだが、基本こういった社外パーツを装着すればバランスが崩れアンバランスな状態になる危険性だってあるはず。しかし、このCTS-Vにはそういった徴候がほとんど見られない。もちろん、クワッドドライブによる細心の注意が払われたパーツがセレクトされているという事実があってこそなのだが、それにしても…。基本となるCTS-Vの出来が凄まじく良い。使用されている各純正パーツのポテンシャルというか、余力というかが、かなりのレベルであるのだろう。
この先上記のパワーアップとともにミッション等の耐久性も知るところとなるはず。潜在能力の開花と未知なる耐久性! 今後の進化がいっそう楽しみになった。次回もぜひご期待ください。
余談だが、工場内には以前オーダーしていたという4ドアセダンが入庫していた。そちらにも同一の足回りを組み、マフラーを交換するという。ちなみにプロジェクトカーの2ドアにはコルサを装着したが、4ドアにはボーラを装着するというから、今後そのフィーリングの違いも体験してみたい。また、近々にCTS-Vワゴンも上陸するという。同じく足回り&マフラーを検討中ということで、詳細が分かり次第、レポートしていく。
<関連情報>
>> キャデラックCTS-V カスタム プロジェクト VOL.1 を見る
>> キャデラックCTS-V カスタム プロジェクト VOL.2 を見る
>> キャデラックCTS-V カスタム プロジェクト VOL.3 を見る
>> キャデラックCTS-V カスタム プロジェクト VOL.4 を見る
283,800円
AUDIO&VISUAL
あとづけ屋
183,250円
AUDIO&VISUAL
あとづけ屋
272,800円
AUDIO&VISUAL
あとづけ屋
3,553円
MAINTENANCE
6DEGREES