「クワッドドライブ」はアメ車専門の整備工場として6年ほど前から開業していたが、当初はアメ車ディーラーや中古車販売店などの業者依頼の仕事しか受けておらず、一般ユーザーと直接やりとりをすることはほとんどなかったという。だが、ここ近年のアメ車の急激な電子制御化に伴って急増した「難題トラブル」に悩むアメ車ユーザーたちのために、2年ほど前から一般ユーザーにも間口を広げるようになった。雑誌などでのアピールやユーザー間の口コミにより、その存在はかなり広く知られるようになったのである。
アメ車の整備と販売に関することならひと通り何でも受け付けてくれるクワッドドライブだが、得意科目は「難題修理」。読んで字のごとく、原因不明の不可解な難題トラブルをすべて解決することで、この数年の間にアメ車業界内で高い名声を得るにいたった。今では老舗販売店はおろか、最新モデルの整備施設や情報に恵まれているはずの正規ディーラーでさえも手に負えない類いのトラブルを積極的に引き受け、アメ車業界の駆け込み寺的な存在として、多方面から頼りにされているという。
ひと言で「難題トラブル」といっても様々な種類があるが、現代のアメ車で多いのは、電子制御系統のトラブルだ。最近のアメ車は、昔のように安易に壊れることはなくなった。ほぼ国産車と同様に扱うことが可能である。そういう意味ではベンツやBMWの方が、よっぽど壊れると言っても過言ではない。だがそうした完成度を誇るアメ車ではあるが、運悪くトラブルを起こすことがないとは言えない。そんなトラブルに見舞われた場合、原因不明に陥ることが意外に多い。なんせトラブルフリーに近づいただけに、故障事例も減っているから安易に特定できないのである。また、誤った整備やカスタムによって「誰かが壊した」ことによって起こる不幸なトラブルもいまだあとを絶たないため、教育や訓練が行き届き、設備も整った正規ディーラーでさえ、解決不可能な状態に陥ってしまうことがあるというのである。
林 秀和
クワッドドライブ代表、そしてメインメカニック。ヤナセのサービスマンとしてアメ車整備の基礎を学び、より広い視野からアメ車整備を学ぶべく、全国屈指のメンテナンス・プロショップと言われた横浜の某店に移籍。そこで「故障の原因の特定にいたるまでのプロセス」の追求方法を身につけたという。
独立後は本国メーカーとディーラー契約を結び、本国ディーラーと同等の設備を揃えながら、最新情報を常に習得できる環境を整え、さらなる知識と経験を得るにいたったという。1日平均で20時間以上アメ車に接している強者。
アストロあたりの年代のクルマと違い、エンジンルーム内が完全にブラックボックスと化した最近のアメ車の整備を行うには「メーカー純正のテスター」が必要不可欠であるということは、すでに広く知られている。テスター類を完備していない、昔ながらの整備工場では、もはや現行型モデルを整備するのは不可能になりつつある、という認識も広く浸透しているところだ。
浅はかな自分の場合は、逆に「テスターが揃っていれば、電子的なトラブルは何とかなるのでは?」と考えていた。設備さえ整っていれば、最新モデル特有の電子制御トラブルはすべて解決できるはずという認識だ。要するに、資金力に恵まれた工場なら解決できるものであると。しかし、実際にはそう単純なものではないらしい。クルマ側のコンピューターから情報を取り込み、クルマの現状を診断する「テスター」は、〝あくまで「ヒント」を与えてくれる〟だけであり、そのヒントを頼りに原因を絞り込みながら、根気よくトラブル元を特定していかねばならないのである。
基本的に、テスターから得られるのは数字というデータのみであり、またテスターがエラーとして認識しない類いのトラブル元も存在しうるため、テスターから得た情報を分析する能力に長けた人間が必要なのである。もちろん、電子制御系統のみではなく、メカニカルな部分の単純なトラブルが複合して発生するトラブルもあるため、コンピューターとクルマのメカの両者に精通していなければ原因を特定することは不可能だ。つまり、最新のクルマのトラブルを解決するには、常に最新の情報や知識と技術、そして何よりも膨大な経験を重ねた熟練者である必要があるのである。
工場の看板に「難題修理」と掲げ、難題トラブルの解決を自社の最大の武器としているクワッドドライブの林さんは、「今ではどんな難題トラブルも、100%すべて解決する自信があります!」と力強く断言する。その自信に満ちあふれた表情からは、虚勢や誇張、あるいは自己陶酔の類いで言い切っているわけではないことがわかる。これでもクルマ販売店・整備工場の取材経験は豊富なので、良いお店とそうではないお店を嗅ぎ分ける嗅覚は鍛えられているつもりである。
では、そんな林さんの確固たる自信はどこから湧いてくるのか? 林さんは、そもそもは一般的なアメ車ユーザーの一人だったが、トラブルが発生しても上手く対処してくれない(対処できない)お店に嫌気がさし、「だったら自分で直そう」と考えたことが、アメ車整備を始めたきっかけだったという。
まずはヤナセのサービスマンとしてアメ車整備の基礎を学ぶが、より広い視野からアメ車整備を学ぶべく、全国でも屈指のメンテナンス・プロショップと言われた某店に移籍。そこで「故障の原因の特定にいたるまでのプロセス」の追求方法を身につけたという。独立後はメーカーとディーラー契約を結び、本国のディーラーと同等の設備を揃えながら、最新情報を常に習得できる環境を整え、さらなる知識と経験を得るにいたった。
林さんは、「難題トラブルの特定には時間を要するものが多いので、平均すると、1日20時間ぐらいはアメ車に向き合ってますかね」と、半ば冗談のように笑うが、その話も決して誇張ではないことがわかる。ここから徒歩2分の距離に住む自分は、深夜になっても煌煌と電気を点して作業をしているこの工場の姿をしょっちゅう見かけているからだ。クワッドドライブの「自信」は、このように日々膨大な時間をアメ車の整備に費やした結果得られたのだろう。
クワッドドライブは、修理&整備だけでなく、カスタムも行うという。林氏の「カスタムするためにも整備の技術や理論は知らないといけないですよ。カスタムはできるけど、修理ははできないなんて方は本当のプロではないですね」という言葉が非常に印象的だった。
工場内は、チリひとつない精密部品を扱うに相応しいクリーンな状況だった。たんなる見せかけでなく、これが普通と言い切るショップに久々に出会った気がする。ちなみに、工場内には整備待ち車両を含め10台以上のアメ車が止まっていた。
「難題修理」のポイントについて
「まったく同じトラブルは2つとして無い」と言われる難題トラブルだが、その解決にあたってのポイントを少し挙げてもらった。
●「基本は非分解で特定し、特定するまでは脱着などの作業を行わない」
最近のモデルは繊細なので、どこかのパーツを脱着したり分解したりすると、抱えているトラブルの症状が出なくなる場合が多いという。だがバラバラにした挙げ句、「わかりませんでした」では愚の骨頂。原因のおおよその特定ができるまで、決して各部パーツの脱着は行わない。
●「最近モデルは部品交換してはいけない」
昔からトラブルの原因を特定する手段のひとつに、「他の個体のパーツを付けて試してみる」というチェック方法があるが、今のクルマは個体ごとに各種パーツが識別されているため(セキュリティのため)、同じ年式の同じクルマ同士であっても、パーツの交換移植をしてはいけない。これをすると、原因を特定できないばかりか、新たなるトラブルを招く可能性もあるのだとか。アストロあたりだと「部品取り」用にヤフオクで不動車を買うなんてことが楽しみとしてできるが、現代の最新アメ車ではできないようになっている。寂しい限りだが。
●「カスタムやチューンナップは、クルマのすべてに精通していない人はするべきではない」
改造と整備は別モノなどという認識は、今では大間違い。昔は「エンジンチューンのプロ」や「足回りのエキスパート」みたいな感じで、得意分野が異なるチューナーによる改造でも問題なかったが、最新のアメ車は各部の末端にまで神経が張り巡らされているかのように、隅々までセンサー類で管理されているので、ホイールを換えるだけで警告灯が点灯することも珍しくない。90年代前半頃までのアメ車のように、「切った貼った系」のカスタムを施せなくなっている。これもまた、ある意味においては寂しい部分だ。
●クワッドドライブが抱える「悩み」とは?
いかなる「難題トラブル」をも解決させることに自信を深めたクワッドドライブだが、もちろん悩みは尽きない。「難題修理ではトップレベルに達したという自信はありますが、その一方で、教えてくれる人がいないのが大変ですね。トラブルやら何やらで壁にぶち当たった時は、他人の助力なしにすべて自分で解決しなければなりません。頼れる存在、アテに出来る存在が居ないというのは辛いものです。ですから、これからも今まで以上に勉強しなければいけないですね」
現代のアメ車に精通しているプロフェッショナルではあるが、プロである限り手は抜けない。そうした準備のために常にアンテナを張り巡らし最新情報に耳を傾け、最新の技術獲得に励んでいるのだ。
林さん自身の修理に対するポリシーが、結果的にユーザーにフィードバックされ、快適なアメ車生活に繋がっていく。久しぶりに気持ち良いアメ車屋さんに出会った取材であった。
「難題トラブル」の問題の深さを理解すると、同時にその修理費用がたいへん気になるところだ。クルマの整備費用は「時間工賃」が基本となるため、時間がかかればかかるほど高くなるので、迂闊にお願いすると、トンデモナイ料金がかかってしまいそうで恐ろしい。クワッドドライブでは、基本料金をスキャナーチェック込みで1万5000円としている。もちろん診断状況によって金額は異なるので、その後の追加料金が発生することはあり得る。だが、診断段階でトラブルの原因をおおむね特定できるため(というか当然特定するのがプロ)、その後の修理については随時オーナーと相談の上、予算の範囲で進めてくれるという。
「必ず1回の修理で完全に直してみせる!」という確固たる自信の元に進めてくれるので、さんざんイジリ倒された挙げ句に、「このクルマはこんなもんですわ」で突き返される心配はない。「もし直らなかったら、全部保証するぐらいの覚悟でやっている」と、林さんの意気込みは強く頼もしいものがあった。
プロとしてクルマと向きあっているため、トラブルの原因を必ず突き止めることを条件とし、自らの義務と課している。
19,404円
PERFORMANCE
6DEGREES
19,998円
PERFORMANCE
6DEGREES
3,480円
MAINTENANCE
GDファクトリー千葉店
48,070円
EXTERIOR
6DEGREES