これまでに何度も書いているが、カマロ、マスタング、チャレンジャーといった現代版マッスルにおいて、一番カッコいいのがチャレンジャー、乗って一番アメ車らしいのがマスタング、そして走って一番速いのがカマロ、というのが実際に触れてみての感想である。
つまり、カマロはクルマとしての出来が一番良く、カマロのスタイルに違和感を感じなければ、それこそ誰彼構わずオススメできる鉄板モデルとして紹介してもいっこうに差し支えないと思っている。だからこそ、カマロのトップモデル・ZL1に乗っても同じような結論であろうと予測していたのである…。
今回、たまたま偶然だが、カマロZL1に試乗することが叶った。しかも開発ライバルたるシェルビーGT500を伴っての試乗である。そもそもこの2台、歴史的に見てもライバル関係であるというのが周知の事実。遡れば1964年にマスタングが、1967年にカマロが誕生して以来、半世紀近くに渡ってライバル関係を築いてきた。今回乗り比べた2台の出自を見てもそれは明らかである。
最初に登場したのはシェルビーGT500であった。2009年に登場したそれは、マックスパワー500hpを誇るハイパワーモデルであり、翌年すぐさま540hpにパワーアップ、2011年型は550hpとなり、圧倒的パフォーマンスを伴ってアメリカン・ハイパフォーマンス・カーの王座を本気で狙い始めた1台だった。
この2011年型までのシェルビーGT500には、5.4リッターV8スーパーチャージドエンジンが搭載されていた。最高出力550hp。これでもリッターあたり100hp以上を叩き出すモンスター級のマシンである。
だが当時、シボレーにはコルベットZR1が(638hp)、クライスラーにはバイパーがいた(600hp)。バイパーに関してはV10NAエンジンだったために、直接のライバルとはならずとも、シェルビーGT500が 本気で “チャンピオン” を名乗るには目の上のたん瘤だったに違いない。
さらにその当時、翌2012年にシボレーからカマロZL1(580hp)なる、これまたハードチューンのマシンが登場するという状況下におかれ、シェルビーGT500はどうしたか?
余談だが、この2012年型カマロZL1のマックスパワーは、2011年型までのシェルビーGT500の存在があったからこその数値である。580hpを伴って、550hpのシェルビーGT500(2011年モデルまでの)を優に超えていることをアピールし、駆逐する狙いがあったのは間違いない。だがしかし…。
フォード陣営は、2012モデルをすっ飛ばし早々に2013年モデルを発表しファンの度肝を抜いたのである。
なんと、排気量を上げ5.8リッターとし、スーパーチャージャーを変更、さらにインタークーラーを大型化するなどして、662hpの “超スーパーマシン” に仕立て直したのである。
ライバル・カマロを無視し、バイパーやZR1すら超えて、一気に100hp以上増強した662hpのパワーに合わせ、各部もよりヘビーデューティに仕上げ直した。カーボンファイバー製のドライブシャフトを採用し、デュアルディスククラッチ、6速MT、ファイナル3.31+LSDを携えるなど、アクスル等の強化も行っている。同時にブレンボ6ピストンキャリパーや耐フェード性の高いパッド使用など、ブレーキも格段に強化されている。
すなわち、数字だけの木偶とはせずに、本気で662hpが使える “超スーパーマシン” に進化させ、一気にチャンピオンの座に輝いたのである。
その後発表されたSRTバイパーが、8.7リッター自然吸気V型10気筒で640hpという数字を叩き出すも、シェルビーGT500のスペックを見てしまうと、なんとなく霞んで見えてしまうのも致し方ないくらいのインパクトであった。
当時550hpを発生させていた2011年型シェルビーGT500に対する攻撃の矢が放たれた瞬間がやって来た。2012年早々に登場したカマロZL1には、カマロのトップモデルに相応しい相応のパフォーマンスが搭載されていたのである。
搭載されたエンジンは、6.2リッターV8スーパーチャージドエンジン。カマロ史上最大のこのエンジンは580hp、最大トルク556lb-ftを発生させた(キャデラックCTS-Vと同様のエンジン)。メーカー公式発表によれば、0〜60mph加速が3.9秒で、最高速度が296キロ/hにも達するという。しかもこれは、タップシフトと呼ばれるATによるものであり、MTモデルも当然存在するが、MTだと若干遅くなるというから驚きである(4秒)。
このカマロZL1で象徴的だったのが、常にサーキットでのテスト走行を全面に押し出し、速さやラップタイムをアピールしていることだった。これは、過去のアメ車では考えられないことであり、このこと自体も現代のGM車の高性能ぶりを知らしめるエピソードのひとつである。と同時にこれこそが、シェルビーGT500に対する優位性として世に放たれた二の矢であった。ZL1の登場に対して662hpの圧倒的パフォーマンスを持って登場したGT500に対し、次なる秘策で対抗したのである。
当時カマロが走り込んでいたサーキットは、世界一の難所・ニュルブルクリンクサーキット。そこをメインに鍛え込んでいるのに対し、シェルビーはラグナセカなどの国内サーキットを主戦場としていたのである。すなわち限界値の性能は、アップダウンの激しい超難所コースで鍛え上げられたカマロに軍配があがるのは至極当然のような雰囲気を作ったのである。
実際にカマロZL1のラップタイムは良好であり、ニュルブルクリンクサーキットを7分41秒27でラップしたという。これは同コースを走ったノーマルカマロSS V8よりも40秒近く速いラップタイムである。ちなみに、当時コルベットZ06が7分22秒68、ZR1が7分19秒63でラップしているが、それらより200kg違う車重や乗用車ベースの4人乗りマッスルカーということを考慮すれば、カマロZL1がいかに速いかおわかりいただけるだろう。
さらにシェルビーGT500に追い討ちをかける要素として、現地メディアが行ったアメリカ国内サーキットでの試乗比較のラップタイムが問題視された。スペック的には82hp多く、車重にして100kg以上軽いシェルビーGT500が、カマロZL1に2秒近くの差をつけられ後塵を拝したのである。とはいえ直線加速や最高速はシェルビーGT500が明らかに上回っており、国内的な最速の座は「やはりシェルビーGT500」という意見も多数聞かれたのであるが…。
<シェルビーGT500>
エンジン:5.8リッターV8スーパーチャージドDOHC4バルブ
パワー:662hp @ 6500rpm
最大トルク:631lb-ft @ 4000rpm
ミッション:6速MT
車重:1750kg
<カマロZL1>
エンジン:6.2リッターV8スーパーチャージドOHV2バルブ
パワー:580hp @ 6100rpm
最大トルク:556lb-ft @ 3800rpm
ミッション:6速MT
車重:1857kg
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