TEST RIDE

[試乗記]

一生の相棒として所有するに相応しい数少ない名車

2005 ダッジバイパー SRT10 (DODGE VIPER SRT-10 COPPERHEAD EDITION) vol.2

限定300台のカッパーヘッドエディション

たまたま偶然にもクライスラープロウラーの直後にバイパーSRT10に試乗することが適った。だからこそ両車の違いが良く分かり、またバイパーの凄さが身にしみたのであった。

更新日:2015.01.06

文/椙内洋輔 写真/古閑章郎

取材協力/BUBU / ミツオカ TEL  [ホームページ] [詳細情報]
     BUBU横浜 TEL 045-923-0077 [ホームページ] [詳細情報]

すべての感覚が普通のクルマとはまったく違う

 SRT-10の本質(の30%くらいか)が垣間見えた瞬間であった。情けないことに「自制心」という名の制御機能がすぐにアクセルを緩めさせたが、それでも後輪がグリップを失うような不安定感は微塵もなく、逆にいつかコイツを自分の手でコントロールできるようになりたいという征服欲が湧いてくるほど楽しかった。

 とはいいつつも、正直われわれ一般人には、公道で全開にする勇気は微塵もない。やってみたい! という欲望にかられはするものの、いざとなったら無理である。絶対に無理である。もう何度も書いているが、FR駆動に500hp超のパワーである(しかもトラコンなし)。

 タイトな運転席、同じオープンボディでもプロウラーよりも断然低い着座位置、アイドリング中のエンジンの鼓動からアクセルペダルやクラッチペダルの踏み応え、常用域でのトルクの出方、ステアリング入力に対するノーズの動き方、路面の凹凸のいなし方など、得られるすべての感覚が、普通のクルマとはまったく違う。

 そんな体験をするだけでも十分スポーツである。だからこそ、それ以上アクセルを踏む必要はないし、なんだかんだ言ってもかなり満足できる。

 乗り馴れてくると、たしかに乗りやすいとは言える。普通に走るだけなら、買い物やドライブの足としても十分に使えるし、個人的にはそういう使い方で遊んでみたいとも思う。

 だが、それはこのクルマの正味10%程度の力で走っている時の話である。そういう意味では、このクルマの100%のスポーツは、われわれ一般人には到底理解できない代物であり、ある意味常に緊張している分、逆説的に安全な乗り物とも言えるだろう(笑)。

8.3リッターV10エンジンは、510hp、最大トルク525lb-ftを発生させる。命綱たる電子制御の安全装備を持たないスパルタンさがマニアの心をくすぐる。街中から200km巡航までを余裕でこなせるフレキシブルさが、この第二世代のバイパーの特徴である。

タコメーターを中央に配し、その他メーターがドライバーを囲う、まさにスポーツカーらしいインパネ。ABCペダルはもとより、フットレストの位置まで調整可能で、小柄な日本人にもベストポジションを得ることることができる。ちなみにクラッチペダルの踏み込み量が若干多く、足の短さを痛感した次第だ。

6速MTシフトは、がっちりとしたフィーリングで、意外にもクイックなストロークが気持ちいい。フィールは重めだが、スピードが乗るとかなり良い。

写真では見えないが、フロアはアルミ製のアンダーパネルとカーボン製のフロント、リアパネルに覆われフラットボトムを実現。超高速域での安定性を高める。

一生の相棒として所有するに相応しい数少ない名車

 バイパーはオトコのクルマだ。コルベットはコンバーチブルになると一気にナンパなマシンに成り下がるという印象をもっていたが(その印象はC6 427コンバーチブルが登場するまで続いたが)、バイパーはオープンになってもスポーツカーだ。オトコのクルマだ。

 全身マッチョなイメージをそのままに走り出しても圧倒的な振動や性能でドライバーを魅了する。しかも、このオレンジとブラックで彩られたカッパーヘッドエディションは、デザインバランス的に優れているから断然かっこいい。

 このクルマ、一生の相棒として所有するに相応しい数少ない名車である。

 たとえば旧プリマスロードランナーをレストアして所有しているオーナーを筆者は知っているのだが、彼も「バイパーだけは認める」と言っているが(笑)、筆者も今所有して、そのまま一生乗れる名車の筆頭としてこのバイパーの名をあげるに違いない。

 しかも、この第二世代のバイパーならオープンボディだけに希少価値はより高まる。しかも間近で見ていてこれほどカッコいいアメ車も数少ないと言えるだろうし。マジで欲しい。屋根付きシャッター付きのガレージで生涯最後の愛車として共にしたい。

センターに配置されたタコメーターがスポーツカーのムードを高める。その他にもスポーツカーらしさ溢れるメーター類が気分を高めてくれる。こうしたちょっとした心遣いが、ドライバーには大切であるということが良くわかる。

レザーとスエードとのコンビレザーにバケットシート。カッパーエディションには、そこにオレンジのステッチが入っている。ホールド製が良く、スポーツカーに相応しいタイトなシート。

第1世代のRT/10の幌は、ある意味飾りみたいなものだったと言われていたが、この第2世代の幌は耐候性が高くなり、日本の気候でも十分に通用するものだ。

だからこそ中古車になっても価値が下がらない

 初代バイパーが登場してから10年後にデビューしたプロウラーと対峙したが、両車は似て非なる存在だった。

 かたや圧倒的パフォーマンスを予想させながらも穏やかなドライブフィールが特徴のホッドロッドマシンであり、一方でオープンカーという逆に穏やかなマシンを想像していると面食らうほどレーシーなフィールが特徴である純然たるスポーツカー。

 ようは、両車ともにクライスラーだからこそ成り立ったマシンに違いない(笑)。現代の基準から言えば、両車はまさに異端ではあるが、逆にだからこそ面白く、だからこそアメ車であり、だからこそ中古車になっても価値が下がらない。

 このバイパーは、BCDがかつて新車で販売したオーナーからの下取り車。すなわち管理ユーザーだけに車両のコンディションをすべて把握しているということと、BCDは過去にさかのぼってバイパーの新車や中古車を数多く扱ってきているだけに、さらにダッジラムSRT10のように、バイパーのV10エンジンのメンテナンスを多分にこなしてきているだけに、次なるオーナーさんの心強い味方になってくれるに違いない。

屈強なミッションは、剛性の塊でかつゲートが明確で操作しやすいので意識しないでもギアはガンガン吸い込まれていく。しかもシフトは速度を上げるほどシックリくる。500hpのFR。しかも電子制御はまったくない。こんなクルマ、アメ車でしかあり得ない。その走りは、当然のごとく迫力があり、正直、言葉では表現できないほどの凄さと緊張感に満たされる。だが今回、街中での柔軟性を新たに発見した。欲しい!

このクルマの面倒を見れるような十分な経済的余裕が出来たら、いつか必ずや手に入れたい。そして休日に早起きして街中や箱根辺りのワイングィングロードを気持ちよく流したい。

<関連記事>
>> 2005 ダッジバイパー SRT10 vol.1 を見る
>> 初代ダッジバイパーRT/10 を見る

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