SRT-10の本質(の30%くらいか)が垣間見えた瞬間であった。情けないことに「自制心」という名の制御機能がすぐにアクセルを緩めさせたが、それでも後輪がグリップを失うような不安定感は微塵もなく、逆にいつかコイツを自分の手でコントロールできるようになりたいという征服欲が湧いてくるほど楽しかった。
とはいいつつも、正直われわれ一般人には、公道で全開にする勇気は微塵もない。やってみたい! という欲望にかられはするものの、いざとなったら無理である。絶対に無理である。もう何度も書いているが、FR駆動に500hp超のパワーである(しかもトラコンなし)。
タイトな運転席、同じオープンボディでもプロウラーよりも断然低い着座位置、アイドリング中のエンジンの鼓動からアクセルペダルやクラッチペダルの踏み応え、常用域でのトルクの出方、ステアリング入力に対するノーズの動き方、路面の凹凸のいなし方など、得られるすべての感覚が、普通のクルマとはまったく違う。
そんな体験をするだけでも十分スポーツである。だからこそ、それ以上アクセルを踏む必要はないし、なんだかんだ言ってもかなり満足できる。
乗り馴れてくると、たしかに乗りやすいとは言える。普通に走るだけなら、買い物やドライブの足としても十分に使えるし、個人的にはそういう使い方で遊んでみたいとも思う。
だが、それはこのクルマの正味10%程度の力で走っている時の話である。そういう意味では、このクルマの100%のスポーツは、われわれ一般人には到底理解できない代物であり、ある意味常に緊張している分、逆説的に安全な乗り物とも言えるだろう(笑)。
バイパーはオトコのクルマだ。コルベットはコンバーチブルになると一気にナンパなマシンに成り下がるという印象をもっていたが(その印象はC6 427コンバーチブルが登場するまで続いたが)、バイパーはオープンになってもスポーツカーだ。オトコのクルマだ。
全身マッチョなイメージをそのままに走り出しても圧倒的な振動や性能でドライバーを魅了する。しかも、このオレンジとブラックで彩られたカッパーヘッドエディションは、デザインバランス的に優れているから断然かっこいい。
このクルマ、一生の相棒として所有するに相応しい数少ない名車である。
たとえば旧プリマスロードランナーをレストアして所有しているオーナーを筆者は知っているのだが、彼も「バイパーだけは認める」と言っているが(笑)、筆者も今所有して、そのまま一生乗れる名車の筆頭としてこのバイパーの名をあげるに違いない。
しかも、この第二世代のバイパーならオープンボディだけに希少価値はより高まる。しかも間近で見ていてこれほどカッコいいアメ車も数少ないと言えるだろうし。マジで欲しい。屋根付きシャッター付きのガレージで生涯最後の愛車として共にしたい。
初代バイパーが登場してから10年後にデビューしたプロウラーと対峙したが、両車は似て非なる存在だった。
かたや圧倒的パフォーマンスを予想させながらも穏やかなドライブフィールが特徴のホッドロッドマシンであり、一方でオープンカーという逆に穏やかなマシンを想像していると面食らうほどレーシーなフィールが特徴である純然たるスポーツカー。
ようは、両車ともにクライスラーだからこそ成り立ったマシンに違いない(笑)。現代の基準から言えば、両車はまさに異端ではあるが、逆にだからこそ面白く、だからこそアメ車であり、だからこそ中古車になっても価値が下がらない。
このバイパーは、BCDがかつて新車で販売したオーナーからの下取り車。すなわち管理ユーザーだけに車両のコンディションをすべて把握しているということと、BCDは過去にさかのぼってバイパーの新車や中古車を数多く扱ってきているだけに、さらにダッジラムSRT10のように、バイパーのV10エンジンのメンテナンスを多分にこなしてきているだけに、次なるオーナーさんの心強い味方になってくれるに違いない。
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