ハマーH3とは、結局のところH2の簡易版だったのか。
H2の持つ迫力、大きさ、威圧感。それにアメ車としての認知度。「やっぱりV8じゃなきゃね」とはナビゲーターに乗る知人の言葉だが、まさしくその言葉がすべてを物語っていたように思う。
だからこそ過去に、生粋のアメ車乗りが「H3に乗り換えた」っていう話は一度も聞いたことがない…。
いわゆるハマーブレイクと言われた一大ブームの波に乗って登場したハマーH3は、やっぱり駄作なのか? 実際に取り扱いをしていたベルエアーのスタッフに聞いてみた。
「弊社はH1からH2、H3とハマーに関してはすべてを扱っておりますが、クルマとして一番マトモなのは、じつはH3ですね」
クルマとしてマトモ、とは誤解があるといけないので説明すると、それは単純に日本の道路を走る上で一番走りやすいという意味だ。
すなわち、日本やオーストラリア、はたまたヨーロッパでも発売されたハマーH3は、クルマとしての資質がシッカリしており、アメ車特有の「緩さ」みたいなものがほとんどない(右ハンドル仕様まで作られた)。
だからこそ止まる、曲がるに優れており、車体はガッチリし、サスペンションはシッカリ動きロールも少なく、ステアリングの反応が機敏であり(H2と比較すると)、さらに極めつけはブレーキが格段に利く。そういう意味でのマトモである。
だがそういった、クルマとしてマトモだったとしても、アメ車としての魅力が際立っているとは限らない。
結局のところ、H3のネガティブ要素は、そのワールドワイドな世界観で作られたが故のアメリカ的濃度の希薄さ=直5エンジンの搭載だった。
「直5という問題だけでなく、単純にパワー不足という印象を持たれた方が多かったですね。それにエンジン系のアフターパーツが少なく、馬力アップが見込めない。結果的に迫力がないととられた方が多かったようです。ですが、FJクルーザーじゃないですが、そういったファニーカー的なクルマが好きな方々からは圧倒的な支持を受けていましたね、デビュー当時は」
個人的にはハマーH3の評価はかなり高かった。上記のようにとにかく走りの質が高かったからだ。乗っていて迫力不足を感じることはたしかにあったが、だがそれに勝るとも劣らない質感の高さに感心しきりだった。
H3の成り立ちは、シボレーコロラドベースのミドルクラスSUVであり、搭載されるエンジンはトレイルブレイザー用の直列6気筒エンジンから1気筒削った5気筒エンジン。DOHC 4バルブヘッドを持つオールアルミ製であり、見た目からしてかなりコンパクトなエンジン。
このエンジンは当初3.5リッターの排気量から220psのパワーを発生させ2.2トンのボディを走らせていた(このときの評価が悪かった)。それから2年後の07年に排気量が3.7リッターに拡大され245psにパワーアップしている。これにより、ある程度の不満を抑えることに成功したというが…。
この後、本国での要望で、ハマーH3には08年モデルとして5.3リッター V8エンジン(295ps)が搭載された H3アルファ が登場している。
じつはこれこそが「ホンモノのH3」だと多くのファンが喜んだのだが、当然ながら価格が高く、さらには正規で入ってこなかったこともあり、日本におけるH3の起爆剤にはならなかった。
結局、同じV8搭載なら、しかも価格が高くなるなら「H2を買う」、という方が多かったのだろう。
世間的な評価はいずれにしてもH2の弟分。どうしてもH2との比較に終止してしまい、H3の真の姿が正当評価されていなかったような気がしてならない。
で、ここで紹介しているのがH3アルファ。このクルマ、新車当初は選択肢になりえなかったかもしれないが、中古車となり価格が落ち着いた今、V8エンジン搭載のSUVとしてはかなりオススメのモデルであると思っている。
まず、H3自体の圧倒的な作りの良さによって、中古車となっても経年変化に対するヤレの割合が圧倒的に少ない。これは5気筒エンジン搭載車にも言えることだが、ボディが格段にシッカリしているからである。
それにV8エンジンを搭載したことで、フロント部分の重量のカサ増しが行われシャシーに落ち着きが増し、軽快感は若干減ったが、その分重厚感が増し直進安定性にも寄与している。
さらに言わずもがなだが、このV8は当時タホ等に搭載されていた5.3リッターV8であり、295hpを発生させたことから、H3の動力性能を格段に向上させ、さらにいわゆるアメリカンV8サウンドをもたらしたことで、アメリカンSUVとしての価値を一気に上げたのである。
しかも、乗り物としての正当評価をした場合、恐らく十中八九、「H2よりもH3アルファの方が優れている」という評価になるだろう。そのくらいの性能進化であった。
もちろん、アメ車の場合、単なる走りの良さだけが評価されるわけじゃないということは承知の上。それでも中古車として手に入れる場合オーナーにとっては「走り」と「質感」は絶対的に優れている方がいいに決まっている。と同時にあのV8サウンドがするのだから、これ以上のモノはないだろう。
実際、乗ってみると、今となっても操作系各部の剛性感は非常に高く、ベダルもステアリングもシフトレバーもガッチリしている印象である。
ボディは一塊の金属のように固く、路面からの突き上げにもびくともしない。V8パワーを解き放っても印象は変わらずで、数年前の車輌ということを加味しても、かなりシッカリした印象である。
くわえて、H3アルファの印象は、「力強い」の一言。低速からアメリカンV8のサウンドが響きわたり、ドライバーを刺激する。
聞けば、中古車としてのH3アルファは、結果的に本国でも人気にならなかったという経緯があり(本国では中途半端なサイズ感)、だからこそタマ数が少なく、それに乗じて日本においてもタマは劇的に少ない。だが見つければ、比較的ノーマルに近い車体のモノが多く、程度良好の個体が多いというから嬉しい。
とはいえ、生産期間が08年から10年という、わずか3年足らずという短命に終わってしまったH3アルファであるから、程度良好なものからどんどんなくなってしまっているということも間違いない事実である。
生産期間が短いが故に台数が少ないH3アルファは、間違いなく歴史を彩る名車候補に違いない。
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