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[試乗記]

死ぬまでに一度くらいは「名車」に乗ってみたい

2016 ダッジチャレンジャーSRTヘルキャット vol.1

市販車最高峰レベルのマシンをBCDで

2015年に登場したヘルキャットは世界中に衝撃を与えた。そんなヘルキャットの中古車を取材した。

更新日:2020.05.18

文/石山英次 写真/古閑章郎

取材協力/BUBU / ミツオカ TEL 0120-17-2290 [ホームページ] [詳細情報]
     BUBU横浜 TEL 045-923-0077 [ホームページ] [詳細情報]

世界を驚かせたアメ車の名車候補筆頭株

 世界に衝撃を与えた707hpマシンのチャレンジャーヘルキャットが登場したのは2015年。当時箱型ボディの最強モデルとして世界中から引っ張りだこだったヘルキャットは、その後のマッスルカーに多大なる影響を与えた。

 たとえばシェルビーGT500。2014年まで最強だった662hpマシンのフォードシェルビーGT500が、マスタングのフルモデルチェンジがあった2015年から2020年まで登場しなかった(できなかった)理由は、ヘルキャットの707hpをすぐに超えることができなかったから。

 しかも開発途中にヘルキャット自身が先にモデルチェンジし、707hpから717hpへ、さらに797hpのレッドアイを登場させたことによってトドメを刺されてしまったから。余談だが、遂に登場するシェルビーGT500は760hpでデビューした。

 そんなヘルキャットだが、デビュー当時は誰もが「一代きりの特別モデル」と思いきや、なんと通常ラインナップに加えられ、毎年のようにリファインされながら今もなお普通に新車が販売されている。

 本国メーカー保証の利く707hp。街のチューニング屋が仕上げた700hpではない、免許書取立ての10代から80歳の爺さんまでもが普通に買える700hpマシンである。

アルミフードを備えたヘルキャット。ヘルキャットにはグリル内の装飾が一切ない。また20インチホイールに前後スポイラー、そして巨大なブレーキといった専用パーツが装備されるが、他のチャレンジャーと比較して大きな変化はない。

リアは至って普通のチャレンジャー風情。良い意味でも悪い意味でも現代版チャレンジャーらしさだろう。

エンジンのみの販売も秒殺でsoldout

 余談だが、昨年、ヘルキャットに搭載されている「エンジンのみ」の販売が行われたが、あっという間の soldout だった!

 すなわち、カリカリにチューンしたエンジンを旧車に搭載するよりも、この新品エンジンを積んだほうが手っ取り早く700hpが手に入るのだから、しかもメーカー保証がつくのだから使用しない方が損だろうと。現地では「チューナー殺し」とも言われていたのである。

 さて、筆者は仕事柄いろいろなアメ車を見ているから年々目が肥える。しかもそれなりの知識や経験も増えるから、見た感じで良否も分かる(気がする)。だから自分でチャレンジャーを買うなら間違いなく6.4リッターNAV8エンジンを搭載するSRT392。もちろんヘルキャットが出た後でも、であった。

 707hpの凄さは言わずもがなだが、「そこまではいらない」というのが本音だし、392のNAエンジンをMTでドライブする方が面白いし、価値ある行為だと思っていたのである。だからSRT392のシェイカーが理想の一台だと。

 だがつい最近、翻意した。とあるショップでチューニングカーを取材したあとのことである。707hpのヘルキャットが900hp超え。それもちょちょいのちょいとパーツを交換し吸排気系とコンピューターのチューンのみで。

搭載されるエンジンは、6.2リッターV8スーパーチャージャー。707hp、最大トルク650lb-ftを発生させる。まるでチューニングマシンのような707hpの市販車ということで、熱対策はかなりのもの。実際、チューニングしても正しい作業であれば壊れない。しかもあっという間に900hp超。

赤と黒との2色のキーが用意され、赤だとフルパワーが味わえて、黒だと最初からパワーが500hpに制限される。二つのキーを持って乗り込むと自動的に黒キーが優先されて500hp仕様となる。だが、車内で707hpにセッティング変更することは可能。こういったギミック的要素も素敵だ。

初期モデルのヘルキャットには、油圧パワステが使用されているから、車庫入れからしてフィールが違う。

普通に街中に溶け込むこともできるし、圧倒的な速さでリードすることもできる。707hpにもかかわらず、その柔軟性が素晴らしい。

アメリカ史上最強パフォーマンスを持つ量産エンジン

 聞けば、「そのくらいベースエンジンに余力がある」。くわえて「ベース車の熱対策も凄い」と。「正直、いじればデーモンなんか目じゃないし壊れないし、買うなら絶対ヘルキャットですね」と言われたわけである。

 しかも、同乗させてもらったが、死ぬほど速かった(笑)。いまさら速さにはまったく興味はないが、でも、この速さを生み出せるエンジンは本気で欲しい!

 さらに言われたのが、「8速ATだとより速さを生かせます。MTじゃ、この息継ぎなしの俊敏な変速は無理でしょう」とも。

 個人的に思っていた理想の一台は392だったが、それは間違いかもしれない…。歴史に残るのは間違いなくヘルキャットだし、死ぬまでに一度くらいはアメ車の名車に乗っていたい。何ならエンジンだけでも欲しい。そのくらい価値のあるマシンであろうと。

 このアメリカ史上最強パフォーマンスを持つ量産エンジンはあえて新設計され、707hpのための強化と熱対策が念入りに行われている。だからこその本国5年、10万マイルのメーカー保証だったのだ。

ボディもブラック、インテリアもブラックの硬派な仕様だが、好みの方なら十分に満足していただけるはず。くわえて中古車としての質感も高く、使用感がそれほどないのも嬉しい。

組み合わされる8速AT。これまであまり気にしていなかったATだが、速く走ろうとすればするほど、このATには意味があるという。ちなみにMT車も存在する。

パドルの効能も体感可能。あえてMTをチョイスしても良いが、ATで普段の足として使用できたら最高だろう。

707hpではあるが、トラブル事例はほとんどなく、今や日本のアメ車ショップから絶賛されまくりの6.2リッターV8スーパーチャージャーエンジンだ。

買うならヘルキャットの初期モデルがいい

 筆者はヘルキャットのデビュー当時からかなりの数を取材しているが、実際に日本を走っているヘルキャットのトラブル事例はほとんど聞かないし、「搭載エンジンの熱対策はかなりのもの」ということで、今や日本の各ショップから絶賛されまくり。メーカーが本気で製作した米国最強のモンスターエンジンに惚れ惚れするという意見が圧倒的なのである。

 ということで、2016年型のヘルキャットを取材。走行距離が1万9000キロ弱。もともとBCDが直輸入し販売した後に、再び下取りとしてBCDに戻ってきた車両という。価格は738万円。

 2015年当時、日本に直輸入された車両は軒並み1000万円超えが普通だった。なかには1300万円なんて販売車両もあったくらいである。それが今や700万円台。もちろん超高額車両だが、5年前の熱狂ぶりを知る者からすれば、激安の感は否めない。

 さらに、実車を見て驚いた。さすがはBCD。ボディ&インテリアのコンディションが上々であり、「まだまだこのレベルの車両が入手可能なんだな」ということを知って嬉しくなったし、たとえば2019年あたりのR/Tスキャットパックワイドボディ(6.4リッターV8搭載車)の程度良好車および新車あたりの価格帯とかぶる、もしくは若干のエクストラでヘルキャットを購入することができるわけだから、後世に確実に残る名車を入手する機会が増えるというものである。

 ちなみに、買うならヘルキャットの初期モデル、2015年から2017年あたりを買いたいと思っている理由、もしくはみなさんにオススメする理由は、パワステ。これら年代の初期モデルにはヘルキャットのみ油圧パワステが使用されていた(他のチャレンジャーはみな電動に変更された後にもあえての電動)から。

 何度も試乗しているが、パワステの違いは結構大きいと思っている。もちろん電動に乗ってしまえばそれはそれで慣れてしまうのだが、選べるならあえて油圧を選ぶし、その方が操舵の感覚が自然だし乗っていてシックリくる(後にヘルキャットも電動になった)。

 くわえて、ATのスムーズさと秘めたる707hpの安心感みたいなものが備わっていて、近所のコンビニから一気に200キロ巡航までをこなすその余裕たっぷりのそぶりが最高に素敵だと思うのである。

 ヘルキャット、同じチャレンジャーの姿をしてはいるが、R/TやSRT392とはエンジンがまったくの別物であり、同時に、アメ車以外のパフォーマンスカーと比較しても作り、性能、あらゆる面において優っており、歴史に名を残す最強の1台と宣言していいだろう。

SRTロゴ入りラグナレザーシート ヒーター&ベンチレーション。見ての通り、中古車としてのヤレは最小限に収まっているのはさすが。

タイヤは245/45ZR20インチにフォージドホイールの組み合わせ。タイヤはランフラットタイヤではなく、ピレリPzeroのサマータイヤ。ブレーキはブレンボの大径となる。

BCDのショールームにはこのヘルキャット以外にも宝の山のような車両たちが続々と集合している。新車&中古車購入に至るまで直輸入を可能とし、長期保証を含めアフターフォローに重きを置いているBCDの今後の車両展開にも期待だ。

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