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[試乗記]

340V8エンジンに6パックキャブレターを搭載

1967 プリムス ヴァリアント

キャブレターを知って旧車を制する

旧車の醍醐味と言えばデザインと答える方が多いかもしれないが、筆者はキャブレターこそが最大の魅力だと考える。そんなキャブレターについて取材してみた。

更新日:2022.11.22

文/石山英次 写真/古閑章郎

取材協力/ジャパンレーストラックトレンズ TEL 0356613836 [ホームページ] [詳細情報]

Moparといえば6パックキャブレター

 67年型のプリムスヴァリアントである。その当時のコンパクトカーと言えるボディサイズに340(5.6L)V8エンジンを搭載しており、Bピラーを持つクーペスタイルが人気のモデル。

 昨今の旧車ブームにおいてはこうした旧時代のクライスラー系車両の人気が高く、他の Mopar 同様に引き合いが多い。

 というか、個人的にも旧車ブームであり、様々な個体の取材をしているのだが、筆者の興味の中心は実はメカニズム。もっと言えば、エンジンとキャブレターの関係性である。

 個人的には、こう言った年代の旧車たちに求めることは<確実に走る>ことであり、そこが満たされれば往年のスタイルと独特な吸気音やフィーリングが楽しめる旧車ほど所有していて楽しいものはないと感じている。

 で、そのポイントとなるのが、キャブレターではないか。確かに近代的なインジェクションの方が何かとメリットが多いのは事実だが、旧車を旧車たらしめるというか、旧車の魅力とも言おうか、とにかくキャブレターを制することが旧車への近道ではないかと感じているのである。ちなみに、6パックや4バレルと言ったワードをよく耳にするが、皆さんご存知です?

▲搭載される340(5.6L)V8エンジン。中央に見えるエアクリーナーを外すとキャブレターが見える。

▲キャブレターはデーモン製の6パックに換装されている。そう、いわゆるあの6パックである。

 ということで、冒頭のプリムスヴァリアントの取材においてはキャブレターに注目してみた。

 まず、キャブレターとは、電気が正常でスターターが回り、燃料系パーツの動作によりガソリンがエンジンまで到達し、エンジン内部でそのガソリンが点火系パーツによってスパークし燃焼を起し爆発するという一連の過程のなかで、エンジン内部へのガソリン調整を行うパーツである。

 すなわち、ガソリンと空気の割合を調整するシステムであり、ガソリンがエンジンに到達しプラグからきちんと火花が飛んでいても、この混合気の濃度が適切でなければ、適切な爆発が起こらないということになる。

 よって、外気温の高低によって混合気の濃度調整がおこなわれなければならず、この部分が俗に言うキャブの調整、ということになる(暑いときには薄めの、寒いときには濃い目という話はよく聞いた)。

 現代の車両は、このキャブレターが電子制御のインジェクションに進化しており、コンピューターが気圧や気温、酸素量などを測定して、各条件下において必要な燃料を正確に噴射している。

 一方でキャブレターは、電気を利用せずにエンジンの負圧を利用してガソリンと空気を混合する調整機器。だから決まった法則によって動くようセッティングされているから、上記のような気候条件に合わせた調整が必要になるのである。

 ちょっと趣旨がずれるかもしれないが、機械式時計とデジタル時計の違いに似ているのかもしれない。

▲67年型プリムスバリアント。内外装の状態良く、メカニズム的にもコンディションは良好。

▲Bピラーからリアテールに至るデザインが旧車ならでは。

▲シンプルなインテリアだが、比較的ノーマル状態を維持しており、各部の状態も非常に良い。ミッションは3速AT。

 で、キャブレターも大きく分けて消耗品ということであり、キャブレターのオーバーホールや交換が必要になる場合もある。そして様々な形状のものや対応品が存在しており、この部分の交換により「変化」が生じることもあるということで、カスタマイズの楽しさも秘めている。

 ということで、この67年型ヴァリアントには340V8が搭載されているのだが、なんとキャブレターはデーモンというブランドの6パックに換装されている。

 6パックといえば、チャレンジャーR/T440 6パックが有名かもしれないし、ひょっとするとボディビルダーのシックスパックを想像する方もいるかもしれない。

 ちなみにキャブレタ−の6パックとは、2バレルのキャブレターを3連装としている形状から6パックと呼ばれ、一方で、お腹の真ん中にある「腹直筋」という筋肉がキレイに6つに割れて見える状態をシックスパックと呼び、恐らくだが、腹直筋のシックスパックが先で、その形状に似ているからキャブレターの6パックがそう名付けられたという話である。

▲6パックキャブレターである。低速域では中央1基が作動し、回転が上昇すると上下2基が作動する仕組み。

▲中央1基に付いているのがチョーク弁。

▲いわゆるシングルキャブレターと6パックを比較すると一目瞭然。

 このバリアントのキャブレターをエアクリーナーを外して見てみると、ご覧のようにシックスパックの形状になっている(笑)

 で、中央にあるチョーク弁の付いたキャブがプライマリーといい、走り出して最初に1基のみ動くキャブレターであり、残りの2基のキャブレターは、回転が上昇しある一定の回転数に来ると動き出すセカンダリーの役割を果たし、高回転域に向け作動する。

 要するに、低速域では1基のキャブレターのみから燃料が吸い上げられ、高速域になるほど空気量が増えるために多くの燃料が必要になり2基作動させることで高回転域への爆発力を高めようとする仕組みである。

 このヴァリアントには、もともとシングルのキャブレターが装着されていたということだから、低速も高速も1基のキャブレターのみで調整されていた。が、この6パックに換装したことにより、低速&高速での爆発量の変化が体感できるわけだから、それによってエンジンのフィーリングに大きな変化が行っている。

 そして、いわゆるキャブならではの吸気音も増し、一段と楽しくなっているのは間違いない。

▲「まず機械的に正常であること。そうすればキャブレター車だからといって全く恐る必要はありません。機械式時計のように、キャブレター車はクルマとの関わりがよりダイレクトになるはずです」とレーストラックの高橋氏。

▲実際に走らせるとキャブレターならではの吸気音が心地よく、アクセルの強弱にダイレクトに呼応するフィーリングに楽しさを感じるはずだ。

 もちろん、こうした楽しさを味わえるのは、エンジンやキャブレター、そして点火系や吸排気系、そして燃料系等の各パーツがしっかりと働いているからであり、この車両の面倒を見ているレーストラック高橋氏によれば、「現代の最新車両は、コンピューター制御され、トラブルが起こった場合、どこの部分にトラブルが起こったかを見極めるのにテスターを使用し、コンピューター内を読み込みトラブルコードから探っていかなくてはなりませんが、こうした旧車であれば、例えば電気系、点火系、燃料系 etcといったようにトラブルのポイントの判別がしやすく、見極めが比較的安易であり、そういう意味では少しの知識を持つことで維持しやすいとも言えるはずです」とキャブレター車だからといって恐る必要はないという。

 実際レーストラックには今現在、プリムスロードランナーやポンティアックGTO、64マスタングといった往年の名車たちが高橋氏の処置を待っている状態。それだけユーザーが多いということであり、同時にキャブの「調整」には、それなりのノウハウが必要であり、出来るところにクルマが集まるということである。

 今後も引き続き、これら車両をどんどん取材していきたいと考えている。

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