TEST RIDE

[試乗記]

基本はオリジナル重視で機関系を強化

1964 ポンティアック グランプリ

389エンジンは5速MTで優雅にもスポーティにも

このポンティアックグランプリは、本国アメリカにて数々の賞を受賞してきた一台である。

更新日:2025.09.26

文/石山英次 写真/古閑章郎

取材協力/BUBU / ミツオカ TEL 0120-17-2290 [ホームページ] [詳細情報]
     BUBU横浜 TEL 0120-17-2290 [ホームページ] [詳細情報]

GMが60年代に手掛けた傑出デザイン

 60年代のポンティアックはスポーティなイメージをアピールしていたが、その商品企画の責任者であったのがジョンデロリアン。後に映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に登場するデロリアンの生みの親である。

 ポンティアックグランプリの「グランプリ」はF1グランプリのグランプリであり、「GTO」や「ル・マン」もモータースポーツに関連する車名を使いイメージアップを図っていた。

 そんなグランプリは1962年にデビューする。デビュー当時はまだ丸目2灯の横目デザインで、正直、パッとした販売成績は残せていない。だが翌1963年にスタックド・ライト=通称タテ目を採用し、これが大当たり。

 このイメージが60年代ポンティアックのイメージを方向づけることになる=後にGMが手掛けた傑出デザインの一台と評される。

 また、専用のルーフラインが与えられ、シャープで直線的なラインとコンケイブド形状(逆反り式)のリアウインドーを特徴としている。

▲丸目2灯のヘッドライトを持つ1964年型ポンティアックグランプリ。この個体はグッドガイズ賞を受賞する等、本国にて数々の賞を受賞している。

▲フロントのみならずリアデザインも特徴的。専用のルーフラインが与えられ、シャープで直線的なラインとコンケイブド形状(逆反り式)のリアウインドーを有する。

 だが、1965年には2代目に進化し、さらなるデザインの変化をもたらした。よりシャープなものとなったのだ。よって、ポンティアックグランプリを語るとき、多くのファンが望むのが初代の63年&64年。特に64年型のフロントフェイスに憧れる方は多い。

 で、64年型のグランプリであるが、全長5メートルを超える2ドアスペシャリティクーペ。これだけを見ても分かるインパクトの強いデザイン。スクエアな二分割グリルやボディサイドラインには、ほんのりだが50年代的デザインの名残を感じ、インパネメーター類を見るとその確証を得る。針が横に流れる横長のスピードメーターがその証である。

 だが、リアルウッドを配したインテリアや一部にスケルトン樹脂を採用したステアリングホイールに、当時の高級スペシャリティクーペとしてのプライドを感じる。

▲搭載されるエンジンは389キュービックインチ=6.4リッターV8エンジンで純正公称360hpを発生させる。

▲2バレル×3連キャブレターのトライパワーを装備しているのもポイント。

▲水回りや冷却系には念入りな整備や調整のための手が入り、トライパワーを思う存分楽しめる。

▲ホイールには、通称8ラグと称されたホイールがセットされストック状態を物語る。タイヤはCoker製レッドラインタイヤが組み合わされる。

 ちなみに、1964年といえば、ポンティアックGTOがデビューしているが、そして非常にデザインが酷似しているが、GTOはインターミディエイトであるから、グランプリを一回り小さく作った感じと言えるだろう。

 ということで、取材個体。BUBUビンテージが輸入した64年型グランプリ。この個体はオリジナルストック状態をキープしつつ、各部を強化した個体。搭載エンジンは389キュービックインチ=6.4リッターV8エンジンで、2バレル×3連キャブレターのトライパワーを装備し360hpを発生させる。

 ミッションはTremec製TKX5速MTに換装されている。同時にインパネには各種メーター類が後付けされており、エンジンルームにおいては熱対策が十分に施されているから、V8トライパワーを思う存分味わえる。

▲バンパーやフロントグリル、リアグリルは新品クロームメッキ仕上げが施される。

▲往年のアメリカ車が持つ三角窓に憧れるが、このグランプリにも当然ある。稼働もスムーズ極まりない。

▲年式によりグリルの造形や鼻先の突き出しも若干変わる。その中で64年型の人気は高い。

▲インテリアは純正ベースで補修や交換パーツでリニューアルされているから、内外装ともに非常に良い状態が味わえる。

 一転ホイールには、通称8ラグと称されたホイールがセットされストック状態を物語る。くわえてボディ外装の各部コンディションは非常にいい。室内にはシートのヤレ等若干の使用感を残すが、外装に関してはかなりのレベルである。

 BUBUスタッフいわく「ポンティアックのタテ目デザインの人気は日本でも高いですし、弊社はル・マン等を扱ってきた経緯からずっと狙っていた個体でした。特に64年型のデザインはアメリカ本国で人気が高く、またいじられた個体が多く、今回のようなストック状態を維持している個体はなかなか見つけることができません」

▲スケルトン樹脂を使用したステアリングも健在。

▲もともと4速MT車だったものをTremec製TKX5速MTに換装している。シフトフィールは現代的なレベルのストロークの短いもの。

▲針が横に流れる横長のスピードメーターが50年代フィフティーズの名残を感じさせる。

▲ドアの内張りの状態の良さやウインドーレギュレーター&三角窓のレギュレーターのスムーズな動きに高級車としての資質を感じる。

 ポンティアックといえば、上記のGTOといったマッスルマッスルした個体に人気が集中するかもしれないが、それらを適価で入手することは今や不可能である。だからあえてブランドの中心を狙わず、それでも分かる人には分かる逸品を輸入するのがBUBUビンテージ。

 特に、一時代を築いたグランプリはフルサイズの最高級ラグジュアリークーペであり、「高級」ポンティアックの長い歴史の中でポンティアック史上最もパワフルなエンジンを標準装備していただけに、そしてGMが60年代に手掛けた傑出デザインの一台だけに、乗ればマッスルカーとはひと味違う往年のアメリカが体感できるはずである。

▲ラグジュアリーな雰囲気を感じつつ、5速MTで389V8エンジンを積極的に走らせるのには十分なシート。まるでソファーのようなクッション性である。

▲大型クーペだけにリアの居住性も抜群。乗降性も良く大人4人が楽に座れるだけのスペースがある。

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