TEST RIDE

[試乗記]

タイヤだけでなくドライバーの魂さえも溶かす707馬力

2015 ダッジチャレンジャー SRTヘルキャット (DODGE CHALLENGER SRT HELLCAT)

その超絶浮遊感は歴代随一およびアメ車ナンバーワン

ゼロヨン加速11秒、最高速300キロ超を実現するバケモノマシンがデビューして早数ヶ月。ついに日本で触れる機会がやってきた。しかも日本初のMTモデル。超絶パワーの片鱗が味わえるか?

更新日:2015.08.03

文/椙内洋輔 写真/古閑章郎

取材協力/ジャパンレーストラックトレンズ TEL 0356613836 [ホームページ] [詳細情報]

超絶加速のマシンに感動する

 個人的な話で恐縮だが、免許証を取得して以来二十数年、その中でもっとも美しい音色を奏でていたエンジンはフェラーリV12だった。またもっとも激しい攻撃的なサウンドを奏でていたのがデトマソパンテーラ。で、加速経験の中で圧倒的な爆発力を味わわせてくれたのがポルシェ930ターボ。たしか4速MTの中古車だった。

 音色に関してはまた別の機会に譲るが、加速ダッシュの激しさで言えば過去、体感でだが930がナンバーワンである。なんというか、ケツを蹴飛ばされた感じの超ダッシュ力に恐怖感すら感じ、その後にやってくるターボバーンの激しさに10秒近く言葉が出なかったのを思い出す。凄まじい二段階加速。ちなみに余談だが、無味無臭的な加速感だったので感激は伴わなかったが、単純に「すげー速えー」と感動したのがテスラだった…。

 ということで、あの超浮遊感を越えるマシンには正直、いままで出会ったことがなかったのだが、遂にというか、やっとというか、久方ぶりに感動する超絶加速のマシンが現れた。もうお分かりかと思うが、ヘルキャットである。

 通常、たとえば600hpとカタログスペック数値を謳っていても実際には540hpとかがザラな市販量産マシンで、実測数値707hpを正規に誇るヘルキャットは、マジでヤバイ。だからこそ赤と黒との2色のキーが用意され、赤だとフルパワーが味わえて、黒だと最初からパワーが500hpに制限される(笑)。ちなみに、キーの違いによってエキゾーストサウンドも変わり、707hpは市販車では聞いたことないくらいの爆音である。

日本に数台いるヘルキャットは、みな黒か赤。もちろん日本人の好みを反映したものだのだろうが、やはりマッスルカーには、いやチャレンジャーにこそサブライムグリーンのボディカラーはよく似合う。

リアテールは71年型チャレンジャーの雰囲気を忠実に再現したデザイン。全体の雰囲気は、サブライムのボディカラーとあいまって最高にクール。

好き嫌いはあるだろうが、ヘルキャットにはグリル内の装飾が一切ない。しかも向かって右内側だけエアインテークになっており、エアの導入口が別途設えられている。

チャレンジャーの他のグレードはすべて電動パワステだが、ヘルキャットのみ油圧のまま。違和感ない素直なフィールに驚いた。

4速でもホイールスピンは止まらない

 そもそもメーカー自身がドライバーを信用していないのだろう。2駆の707hpである。正直、ちょっとしたレーシングマシンのようなパワーウエイトレシオを実現しており、迂闊にパワーを与えればクルッと回ってしまうのは想像できるだろうし、スタビリティコントロールがどこで介入してくるか、実際に試すこと自体もはばかられる。

 だから、手に入れたオーナーさんは、サーキットのような公道以外の場所に持ち込むか、それとも公道で直線だけ踏んで楽しみむか。とはいえ、4速でもホイールスピンは止まらない(笑)。ただ、公道では2速フルまで引っ張れば一発免停の速度が余裕で出てしまうので(MTなら)、普通に街中を走って、ちょっと踏み込むレベルでの方が逆に安全だとも言えるかもしれない。

 ということで、二つのキーが存在しているわけだが、ヘルキャットの場合MTとATとでもまたいろいろ違うから、もし購入されるならよーく検討したほうがいいだろう。実際にAT+黒キーだとシフトタイミングが早まり、4000rpmでリミッターがかかったりと、MTにはそういったシフトアップの制限がないだけに(カタログ上の違いはほとんどないのだが)、実際の違いは結構あるから、MT&ATどちらも運転できるならシッカリ事前に検討して決めるといいだろう。

搭載されるエンジンは、新開発の6.2リッターV8スーパーチャージャー。707hp、最大トルク650lb-ftを発生させる。6.4リッターではなく、あえて6.2リッターを開発した意気込み。また6.4リッターV8NAエンジンとは違った魅力を持ったまさにモンスターエンジンである。

赤と黒との2色のキーが用意され、赤だとフルパワーが味わえて、黒だと最初からパワーが500hpに制限される。赤キーを使う日は、ちょっとした覚悟が必要かも(笑)。

盛り上がったボンネットフードは、スーパーチャージャーを装備してのこと。かつ軽量フードになっている。

ホイールスピンはめちゃめちゃ簡単。いとも簡単にとは、このクルマのための言葉だろう。

まるで腹の底に響くような不吉なサウンド奏でる

 初めて見るヘルキャットは、普段から見慣れているチャレンジャーに変わりはない。ただ、あまり見かけないサブライムグリーンのボディカラーが気分を高める。取材当日は小雨降る薄暗さ。だがそんな天候にサブライムグリーンの輝き、艶っぽさが何とも言えない表情を映し出し、走る前から大勝利確定の雰囲気を与えてくれる。

 ダッシュボードのプッシュエンジンスターターを押せば6.2リッターV8が目を覚まし独特の深みある咆哮を響かせる。走れば低回転域からスーパーチャージャーの唸りが始まり、まるで腹の底に響くような不吉なサウンド奏でる。

 個人的な興味は、じつはチャレンジャー自体の素のポテンシャルにあった。マスコミ的にはヘルキャットの707hpに目が行きがちだが、チャレンジャー自体はすでにデビュー7年の中堅選手。その間に各種マイナーチェンジが行われ各部の強化がプラスされていたとはいえ、ベースがまったく変わっていないために、500hpに満たない6.4リッターV8ならまだしも、一気に200hp超の707hpにボディ等が果たして持つのか?

 結論から言えば、常時707hpを発生させるわけではないので、まったく問題なく、心配は杞憂におわったのだが、とにかくその加速感とSCの毒々しいサウンドに一発ノックアウトされたのは間違いない。しかもあえて「MTが絶対的にいい」と叫ばしてもらいたい。

2015年型ではインテリア全体の雰囲気が一段と明るくなり、質感が向上している。メーターのレタリングや視認性は歴代モデル随一。各部分のタッチやフィーリングも良好である。

シフトは、旧アメリカ的なゴツイタイプというよりは、短いストロークのかなりスポーティなマニュアルミッション。クラッチのストロークとシフトストロークが絶妙で、運転していてかなり面白い。かつ球型のシフトノブが絶妙なフィーリング。

この3ペダルの間隔や感覚にクセがなく、しかも低速トルクが大きいから、慣れればアイドリングスタートが可能。とはいえ、クラッチ自体はそれなりの踏力&反発力があるから覚悟は必要。というか、707hpにしては異様に軽いとは思うが。

アメリカでしか味わえない生粋のモンスターマシン。男ならあえてMTで乗って欲しいし、もう二度と手に入らない貴重なマシンとして大切に乗って欲しい。

投機対象としての価値も非常に高いと言える

 こういうクルマこそMTで乗るべきだし、自らの意思でパワーをコントロールすべきである。ATの快適さはたしかに魅力的だが、ヘルキャットはあえて足として使うべきクルマではない。走りを楽しむために、その一瞬のためだけに乗るべきクルマであって、だからこそ限られた人間のみが手に入れ、後生大事にしまいこんでおくべき存在である。

 ちなみに、ヘルキャットの価値はおそらく10年経っても下がらない、いわゆる投機対象としての価値も非常に高いと言えるだろう。なんせ707hp。もしこのパワーをドイツ勢、たとえばAMGあたりが作ればきっと3000万円はくだらないだろうし。

 最後にヘルキャットを直輸入したレーストラック高橋氏によれば「チャレンジャーのラインナップに名を連ねてはいますが、まったく別の存在です。ヤバイです。しかもバイパーとの差別化もちゃんとなされているから、両方所有しても良いくらいです。ヘルキャットは、あくまでマッスルカー。しかも現代テクノロジーで武装した最高のモンスターです。外装が、他のチャレンジャーとそれほど変わらないからといって、ちょっかいを出すと痛い目に会いますよ(笑)」

クロス地とレザーを併用したフルバケットのパワーシート。モンスター級のパワーを支えるためには必要不可欠と言えるだろう。

20インチの軽量鍛造ホイールに275/40R20インチのピレリPゼロタイヤが組み合わされる。ホイール内に装備されるブレーキは6ポッドのブレンボである。

取材車両は撮影後、写真のようにボンネットフードをブラックにするよう作業に入っている。これだけで一層硬派なマシンの雰囲気に。実際にタダモノではないマシンだが。

個人的にも、チャレンジャーであって、実際にはチャレンジャーではない超絶マシンだと思っている。

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