アメ車ファンなら、ハマーと聞けば「H2」という、一世を風靡したアメリカンSUVを思い出すかもしれない。HMMWVという本物のミリタリーヴィークルからのエクステリアデザインをベースにし、GM既成コンポーネンツをうまく組み合わせ完成させた、あの時代の寵児である。
だが、個人的な思いとしては、ハマーといえば常にH1だった。歴史がどうとか、HMMWVがどうとか、軍事とか悪路とか、そういったことには一切興味がなく、ただ単純にクルマとしての造り込みや、その目的に対する機械的なスペックに非常に興味を持っていたからである。だからこそ、1度乗りたいとは常々思っていたものの、そのチャンスはこれまでまったくなく、実際にはH2のカスタムカーばかり取材していたのだった。
だが今回、偶然にも千載一遇のチャンスをいただいた。たまたま別件で近隣を訪れたときに、ベルエアーの店頭にH1が飾られているのを発見したのである。早速3年ぶりに連絡し、この取材試乗となったのである。
H1の生まれは軍用車であり、その目的は悪路をものともせず、動き続け、味方を連れ帰ることにある。そのために特殊な車両レイアウトが採用された。実際には軍用車のハンビーとは若干異なるところがあるものの、基本はさほど変わらない。
H1は堅牢なラダーフレームを採用し、エンジンやトランスミッション、ディファレンシャルギア、ガソリンタンク等のすべての主要コンポーネンツが、このフレームよりも上に位置するようにレイアウトされている。これはいうまでもなく、地上高を稼ぐのが目的で、その分ドライブトレーンが車内に大きくはみだすことになった。運転席と助手席との間に異常な出っ張りが存在するのはこのためである。
H1の特徴である上下に狭いフロントグリルは、大きく寝かされたラジエーターの採用によって実現したもので、これは最低地上高を稼ぐと同時にラジエーターの投影面積を少なくすることで被弾の可能性を最小限に抑える効果があるという。
というような細かい説明を受けながら、実際の試乗となった。ちなみに、車両の詳細は当ウエブ「車両検索」に掲載されているからご覧ください。
試乗車は99年型の約3万8400キロ走行車。搭載されるエンジンは、6.5リッターV8ディーゼルターボ。4ATを介して195馬力を発生させるという。
まずはH1の大きさと迫力あるスタイリングに圧倒される。多少離れているところから見るとボディは小さく見えるのだが、目前で見ると予想外に大きい。実際にドアに触れ開けてみると、ドア自体はかなり軽い。少なくともH2のような重さではまったくない。そのまま運転席に乗り込む。予想していたほどの圧迫感は感じないが、それでも右サイド、つまり助手席側との距離感が想像以上に遠く感じる。と同時に前方視界の良さに驚く。
エンジンをスタートさせる。これも予想に反して室内は騒々しい。ディーゼルエンジン特有のサウンドがダイレクトに聞こえる。静粛性に関しては決して褒められたクルマではない。ガッチリしたギアを入れて走る(機械感が高い)。室内の騒がしさから想像するほどの路面からの衝撃は少ない。少なくとも不快を感じるようなレベルではない。街乗りレベルだが、まったく普通に走れる。ブレーキも確実にスピードを殺すし、インボードブレーキに対する多少の慣れは必用かもしれないが、これまたまったく問題ないレベル。
このクルマの凄さはステアリングのダイレクト感とその応答性である。そしてハンドルの切れ角の良さ。かなりクイックな操作にも確実に応答し、そして曲がる。その部分においては車重2トン後半のクルマとは思えないほど。ただし、街中ではちょっとした路面変化にも反応するので、比較的ダルいアメ車的(H2的な)な乗り味を思い浮かべていると、きっと驚くに違いない。
エンジンは、思った以上にパワフル(音も凄いが…)で一気に吹け上がる。だがディーゼルエンジンの特性上、高回転域での性能云々は語れないだけに、高速道路での「走り」には一抹の不安は拭えないが(試せていない)、それでも街中での運転にはまったく不満はない。若干、極低速時にもたつきを感じないではないが、それでも一端加速体勢に走れば、スペック上のパワー感を如実に感じることができ、ハンドリングのダイレクト感と相まって、ちょっとしたスポーツカー以上の楽しさを実感したのだった。
ディーゼル特有のサウンドが聞こえますか?
このH1は、様々あるラインナップの中でも珍しい2ドアハードトップ。つまりトラックでいうところのシングルキャブ仕様みたいなもの。H1であるのだが、非常にボディバランスがよく、また見た目のデザインバランスも良く、そして車重の軽さから来るハンドリングが何より楽しい。
ヘタなアメリカントラックを買うならば、今ならこのH1が圧倒的にオススメといえるだろう。
初めて乗った本物のハマー。類い稀なるボディの高剛性や機敏なるステアリング反応、そして軍事ベースの悪路走破性の高さ。だからこその基本スペックを備え、その志の高さが生んだ生粋のマシン感覚。個人的な思いとしては、究極のマシンとして、走らせずとも所有したいという欲望にかられるほど、貴重な体験だった。
車幅ぎりぎりの大きさに注目です!
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