TEST RIDE

[試乗記]

30年の歴史を全く感じさせないインテリアが物語る

1992 シボレーカマロ RS

現存する唯一無二のサードカマロ

滅多に出会うことのないサードカマロの中古車。中でも優良個体などあり得ないと思っていたが…。92年型サードカマロを取材した。

更新日:2022.09.09

文/石山英次 写真/古閑章郎

取材協力/エイブル TEL 044-857-1836 [ホームページ] [詳細情報]

こんな個体に巡り会えるとは

 さすがに92年型のサードカマロともなると30年前のクルマだけに、「今欲しい」と思ってもそう簡単ではない。単純に個体がない。

 もちろん、たまたま偶然に手放す方がいた場合には店頭に並ぶこともあるかもしれないが、いわゆる仕入れとして探した場合には、「期待しないでね」と言わざるを得ない。

 くわえて、仮に個体が見つかった場合にも、それが販売車両としての基準を満たすか否かも不明である。すなわち廃車寸前の不動車レベルって場合も多分にあるだろう。

 だから「サード入ったよ」と連絡が入った時の期待値は正直さほど大きくはなかった。が、実際には驚きの連続だった。

 この車両は1992年型RS。走行約8万5000キロのディーラー車。RSなので5リッターV8エンジン搭載である。

▲92年型RS。走行約8万5000キロのディーラー車。

▲ボディカラーは純正カラーでリペントされており、ホイールはボイドだが、それ以外は基本ノーマルを維持。

ほぼほぼ純正状態をキープしたディーラー車

 ボディは、純正カラーのブルーでリペイントされており、とにかく発色が(中古車としては想像以上に)素晴らしい。

 基本的に純正ノーマルのままであり、ステアリング、タイヤ、ホイールが社外品に交換されており、ステアリングはレカラ、ホイールはボイド。若干くすんではいるが、それはメッキホイールの宿命であり、それをわかった上で見れば十分にキレイの範疇である。

 タイヤサイズは、フロント235-45-17、リア255-40-17インチであり、エイブル原氏曰く「本来は15インチがベストかなー」という。

 また、すでにエンジンルーム関連の消耗パーツは一通り交換されており(電装系、エアコン関連、吸気系等、インテークガスケット、ウオーターポンプ)、エンジンも一発始動。

 のちにマフラーの中間パイプからリア出口までを一式交換し、またフロントの足回りのリンケージ系のパーツもリフレッシュするというから想像するだけでもかなりシャキッとするだろう。

▲リペントされ、ホイールも想像以上にクリーンな状態であったから、30年前の車両には全く見えない。

▲リアビューも個性的でサードカマロならでは。

▲極端なローダウンがなされるわけでもなく、全体的に程度良好な個体。

すでに30年とはいえケア次第で状況は変わる

 ちなみに筆者は、サードが現役時代からこの業界で取材をしてきているから多少のことは知っているが、サードのような90年代のアメ車は、現代のコンピューター制御されたアメ車とは異なり、整備における交換パーツの勘所がつかみやすい。

 要するに、電気系、エアコン系、電装系、吸排気系、燃料系、水周り系、足回り系にしっかり手が入っていれば、エンジン&ミッション本体の中身が壊れない限り、比較的維持しやすい(=トラブルを未然に防げる)という印象がある(昔から原氏に教わってきた)。

 だから過度にチューニングされていたり、ローダウンされていたりする車両は敬遠したいという思いがかなり強いのだが、それはエイブルの原氏も同様の考えであり、今回の取材車もまさしくノーマルに近い車両ということもあって、すべての作業に納得がいくのである。

 で、30年前の車両とはいえ、当然ながらケアの仕方で個体の状況は常に変化するわけだから、この車両の状況が果たしてどうなのか? を知るために試乗させてもらった。

▲ご覧くださいエンジンルーム。適切な整備を受けているのもあって、非常にクリーンな状態が維持されている。

▲オルタネーター等の電気系にも手が入り、実際に乗っても調子の良さをかなり感じさせる。

▲ステアリングは非オリジナルではあるが、それ以外の部分の状態が素晴らしい。ダッシュのひび割れもなく、全体の状態がかなり高いレベルで維持されている。

▲メーターは全箇所動作確認済み。

インテリアに前オーナーの愛情を感じる

 まず、のっけからエンジン系の整備が行き届いているからか、調子がめちゃくちゃ良いのが分かる。エアコンもめちゃくちゃ効く。さすが5リッターV8エンジン。

 エンジン&ミッション系の動力部分がかなりしっかりしているから(マウント系のガタを感じないから)、嫌な中古車風情がほとんどない。

 くわえてサードカマロの特徴である扱いやすさ。特にフロントの視認性が抜群に良いので、都心街中のすれ違い等にも全く苦もなく通過可能だし、サイドミラーもディーラーミラーだけに鏡面が大きく確認がしやすい。

 またハンドリングというかハンドルのレスポンスが非常に良いから切り返しが楽だし、想像以上にステアリングが切れる。くわえて低速トルクが芳醇だから少なくとも前に向かって走っている限りは非常に扱いやすく、そして面白い(現状でもこのレベルだから、フロント足回りのリンケージ系をリフレッシュしたらさらに良くなるのだろう)。

 ちなみにリアウインドーの視認性は、フロントよりは落ちる。が、まあそれはアメ車全般に言えることだから(笑)

 で、特筆なのが室内空間のほぼ全てが想像以上にクリーンな状態であること。さすがに30年も前の個体である。だから例えばダッシュボードが割れていたり、センターコンソールがヤレたり傷ついたり、または欠損パーツが出ていたり、さらにはシートが破れていたり、というのが想像可能だが、この個体にはそれらが全くない(鉄部分の小キズやサビは若干あるが)。

 しかも新たに組み直した形跡もないから純正のままと考えるのが自然だろう。

 これまで数々の中古車を見てきて個人的に思うのが、やはり「インテリアの現存率は中古車にとって非常に大切」というもの。

 というのはインテリアこそ、前オーナーの使い方が非常に現れるから。いわば愛情を持って扱われたか否かがインテリアから想像でき=それがそのまま車体全体のコンディションにつながっていることが多いという実体験である。

▲センターコンソールの状態もご覧の通り。ヤレが全くないわけではないが、ここまでキズや汚れのない状態を維持しているのはさすがに見たことない。

▲各種ボタン操作も確認済み。ウインドーにリアハッチの解鍵ボタン。

▲ディーラー車のサードカマロがベースである。

▲5リッターV8エンジンの息吹と街中での扱いやすさを感じるサードカマロ。

プロショップならではの個体

 これはあくまで個人的な中古車判断の基準であるが、だが、ほぼほぼ間違ってはいないという自信もあり、取材で小一時間川崎周辺の幹線道路を走ってみた限りでは、今回もこの基準に間違いはないと判断している。

 少なくとも、これほどのサードに、今乗れるとは思ってもいなかったし、とにかく「クリーンなサードが欲しい」という方には最高の1台になりうる可能性を秘めているのではないか。

 それと、さすがはエイブル。プロショップとして取材させてもらう個体は常に一定レベル以上がキープされている。

 すなわち販売車両としてのレベルが確保されており、また確実な整備が加えられているからだろうが、乗ると車体の個性(カスタマイズ部分)を除いた基本レベルが常に一定&安定している。逆にそういった店舗だからこそ、そして今も常にサードカマロにアンテナを張り巡らせているショップだからこそ、今回のような個体に巡り会えたのだろう。

 昨今の旧車ブーム。だがその名の通り旧車だからこそ最初に手に入れる個体の状態はピンキリである。

 そんな中でもしもサードカマロに興味があるならば、今回の個体は最初の段階からサードカマロの生の状態をかなりのレベルで味わうことが可能であるから、かなりオススメと言えるだろう。

▲汚れ&破れがある個体も多い中、純正ノーマルの見事な状態。もちろんヤレが全くないわけではないが、30年前の車両と考えれば上出来だろう。

▲リアシートに至っては使用感すらないレベル。

▲リアトランクの状態もご覧の通り。使用感はあるが、こちらも想像以上なレベルを維持している。

▲だから走れば「ただただお見事」と唸らされる。

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