TEST RIDE

[試乗記]

90年代のエクスプレスバン用V8エンジンを移植

1985 GMC ジミー

古い時代の良い部分を残し足りない部分は現代のもので補う手法を実践

オールドテイスト漂う80年代のGMCジミーには90年代の350V8エンジンが移植されている。それにより想像以上に気持ち良く走るようになったが、そこに至るまでの経緯を含め解説する。

更新日:2026.04.15

文/石山英次 写真/古閑章郎

取材協力/ジャパンレーストラックトレンズ TEL 0356613836 [ホームページ] [詳細情報]

数倍ご機嫌なV8エンジンが味わえる

 まずはジミーを知る前にシボレーブレイザーについて。シボレーブレイザーとは、今に続く『SUV』というカテゴリーの元祖と言える存在で、その歴史は古い。

 初代モデルがデビューしたのは1969年。先行するフォードブロンコに対抗するモデルとして登場した。このブロンコ、実は前回紹介したアノ時代のブロンコのことを指すのだが、両者を比較すれば明確な違いが存在する。そう、ボディサイズである。

 当時のブロンコは専用設計であり、ご承知の通り今の日本でも好まれる小型SUVに属するサイズ。一方のブレイザーはピックアップトラックのC/Kシリーズのプラットフォームを流用して制作されていた、いわゆるフルサイズ。

 要するに初代ブレイザーは、ピックアップトラックの荷台部分にシェルを被せてワゴン(SUV)に仕立てたお手軽仕様だった。

▲70年代から80年代にかけのK5ブレイザーやジミーのスタイルは今なお通用するほど魅力的である。

▲デビュー当時からピックアップトラックの荷台にシェルを取り付けたようなスタイルをとっている。

 がしかし、この開発期間の縮小&コストダウンが目的であったであろう当時の手法は、結果的には正解だった。

 というのも、ピックアップトラック人気が高い北米では、スタイル的にC/Kシリーズと大差ないブレイザーは瞬く間に市場に受け入れられることになり、ライバルであるブロンコを上回る販売を記録することになったから=小型なブロンコよりも大きなサイズのブレイザーが好まれたのであろう。

 ちなみに、このブレイザーの成功を見たフォードは、2代目ブロンコではシャシーの専用設計を止め、FシリーズピックアップをベースにしたSUV作りを始めている。

 で、このブレイザーの兄弟車がジミーである。ジミーはGMCディビジョンで販売されていたモデルで、エンブレムなどの外見的な差異を除けば、メカニズム的にはブレイザーと同じクルマである。

 余談だが、ブレイザーはこの後シボレータホへと繋がっていく。一方でジミーはGMCユーコンに改名される。すなわち、今の時代にもシボレータホ、GMCユーコンは存在するが、ここに出ているブレイザーやジミーは現在のタホ&ユーコンの祖となる存在である。

▲デビュー当時のライバルがこの年代のブロンコ。専用シャシーを備えた小型SUVであった。

 さてそんなジミーの85年型である。この車両、現ユーザーさんがレストア済みの車両を購入していたというがエンジンの調子が悪く、検査の結果、一気筒死んだ7気筒エンジンになっていたという。

 そこでエンジンのオーバーホールを含め様々なアプローチを検討した結果、エンジン載せ替えに至り、実行されている。そのアプローチを説明すると当時は以下の3つの選択肢を検討したという。

・その1:元のエンジンをバラしオーバーホールする
・その2:元のエンジンと同じような年代&仕様のエンジンを探し、載せ替える
・その3:その他

 「その1」はエンジンの状態、そしてバラした状態の内部を確認し、手を入れる部分が非常に多い(フルオーバーホールが必要)ことを鑑みて却下。

▲旧車の不安定さを解消するための様々な方法を提案するレーストラック高橋氏。「古いから」と諦める必要は全くないといい、逆に古いからこそ面白い部分が沢山あると語る。

▲換装されたエンジンはエクスプレスバンの5.7リッターV8。90年代のV8エンジン。

▲オリジナルキャブレターからエーデルブロックのキャブレターに交換している。

 「例えばビッグブロックとか、オーナーさんにとってどうしても捨てきれないというようなこだわりのエンジンであるとか、そういう理由があるなら別ですが、聞けば『そういったことはない』ということですし、エンジン自体は普通の350でしたから、このエンジンを生かすというような選択肢は早い段階で捨てました。ユーザーさんと話し合い、ユーザーさんの『負担を軽くしたい』という考えを具現化するためにです」とレーストラック高橋氏。

 その後「その2」を実行に移す。だが、当該エンジン自体がなかなか見つからない。国内で探せなければアメリカで、という選択肢も視野に入るが、そうなると金銭的な負担も大きくなるし、輸入したエンジン自体の中身の状態もわからない。それは国内で見つけた場合も同様で、いずれにせよリスクが伴う。

 そんな状態で視野を広げるためにとった行動が「その3」である。状態が読める比較的新しい350エンジンを探し載せ替えること。

 90年代あたりの5.7リッターV8エンジンであれば、比較的見つけやすい。そして同じ350であれば=85年型ジミーに載っていたV8の進化系であれば載せ替えることが可能である。だが、問題が一つ。そう、90年代以降であれば電子制御インジェクションのV8。修理依頼の個体は85年型ジミーでキャブレター車。

▲電子制御部分を外しウエイアンドのマニフォールドにエーデルブロックのキャブレターを装着している。

 だが高橋氏は言う「全く問題ありません。同じV8なので置き換えは可能です。あとは電子制御の部分をキャブレターに換装し、その他のマネージメント系は旧時代のものを使用、燃料ポンプは電磁式の新しいものへ換えてやれば比較的スムーズに実行可能です」

 そして新たに組み込まれたエンジンは90年代のエクスプレスバンの5.7リッターV8エンジンである。

 そのV8のインジェクション部分を外し、キャブレター等に換装する。その時点でオリジナルのキャブレターはすでにコンディションが怪しかったためエーデルブロックのキャブレターに交換、マニフォールドもウエイアンドに交換。

 一方料ポンプは旧時代のものではなく、90年代のV8エンジンに対応した電気式の燃料ポンプに変えたが、その他(ミッション等)は古い時代のものを利用し両者を組み合わせている。

 要するにエンジンとキャブレターとマニフォールドと燃料ポンプのみ現代のものを利用し、その他はもともとのジミーのパーツを組み合わせることで、スムーズに動くよう調整されている=ここが匠の技。アメリカ修行当時から分解修理を行ってきた経験値が生きる。

▲オリジナルのヘダースを装着しているから低速からの吹け上がりが抜群。

 で、この仕上がりが絶品で、オールドテイストのジミーのエンジンをかけると、まるで現代車のように品良くスムーズにかかり、そして静かであり排ガス臭さが微塵もなく(笑)、しかも気持ち良く走る。

 旧車っぽさが消えてしまっているのでは? と心配する方もいるかもしれないが、それもご無用。

 品良くエンジンはかかるが、走るとキャブレターサウンドが響き渡るし、レーストラックによってヘダース交換がなされているから、元のV8エンジンよりも数倍ご機嫌なV8エンジンを味わうことが可能である。

 今回の取材年式以前(70−80年代の)からジミーのようなフルサイズSUVの人気は非常に高い。確かにエクステリアやインテリアのデザインは素晴らしくカッコイイし、その味わい深さは筆舌に尽くしがたい。

▲取材車両のインテリアにはオリジナル時代の趣がしっかり残っている。

▲ウッドパーツが適度に散りばめられている。

▲三角窓や無骨なミラーには当時の面影が色濃く残っている。

 同時に、この年代のV8エンジンを含めたメカニズム環境の能力は決して高いとは言い難い。

 が、今回のような古い時代の良い部分は残し、足りない部分は現代に近いパーツで補うという手法を駆使すれば、それこそ安楽とも言えるオールドテイストなアメ車との付き合い方が可能ではないだろうか。ある意味、「理想的」と言っても過言ではないだろう。

 そのためにはレーストラックのような旧車の修理やカスタマイズに対応可能なショップの助けが必要になるのは言うまでもない。

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