作業終了後の撮影時は、高橋氏の運転のもと、3人で取材場所まで出かけて行った。筆者は助手席に座り、話を聞くことに。そして10メートルも走ることなくオーナーさんから「いや〜、凄いですね!」と驚きの言葉が発せられた。
これまで、ただ硬いだけのアメ車には何度も乗ったことがあるが、そういったアメ車につきものの「ガタンっドタンっ」といった衝撃が微塵もない。試乗して1分にも満たない出来事だったが、最初の段差とマンホールの蓋を乗り越えただけでも違いが明白。まあ最初の状態が硬過ぎた、といえばそれまでだが、このSRT-8、ただ柔らかくなっただけの腑抜け野郎になったわけではない!
装着したコニのショックは、縮み側の減衰力を独自設定してあり、伸び側はある程度の硬さを維持してあるために、路面の凹凸や段差からの突き上げ感がほとんどない。「タンっ、タンっ」と軽くいなし、硬過ぎるクルマにありがちな「バタンっ」という安っぽい衝撃が見事に吸収されている。それでいて伸び側が締まっているから、クルマが大きく弾んだり、外側に膨らんだりしそうな挙動は完全に抑えられている。またこれに組み合わされるアイバッハのコイルとのマッチングも絶妙で、コーナーリング中の腰砕け感がまったくない。
それ以降の段差やコーナーでもいろいろ試してみたが、SRT-8が不安定になることはなく、また、かなり強めのブレーキングを数度試してみても姿勢変化が少なく、これまた驚きの連続だった。この後、高速道路での試乗も行われたというが、オーナーさんの満足度はかなり高いという。
SRT-8のエンジンル−ムは、ノーマルでも華のあるエンジンルームであるが、タワーバーやエアクリーナー、ビッグスロットルなど、ひと通り手が加えられた状態を見ると、なお一層過激さが伝わってくる。
ひと通り名の通った一流どころのパーツが装着されていたが、求めるステージが異なれば、そういった高価なパーツもあまり意味をなさなくなる、という典型的な例だった。
もともとモパーのマフラーが装着されていたが、今回は新たにへダースを装着して中間パイプを作り直したことで、アメ車らしい濃密なフィーリングが手に入ったという。トルク特性も中低速を重視したことで、街中での実際の加速感にもかなりの違いが出ている。
「まぁもちろん、以前の状態と比較すれば、超高速域での性能は落ちているかもしれないですが、あくまで一般的な使用範囲で、しかもストリートで楽しむなら、まずはこの程度で試してみる…。逆に『この程度』のレベルの高さが分かると思いますよ(笑)。それにマグナムや300、さらにチャージャーなんかはメルセデスのパーツを使用しているわけですから、そんなクルマたちが安っぽい異音を発するクルマになってはいけないんですよ」とは高橋氏。
続いてオーナー氏いわく「以前は高速道路で飛び跳ねて、ちょっとスピードを上げるとどこかに行っちゃいそうな感じで、速度が上がるたびに逆に怖さが増していたんですが、今のSRT-8だと簡単にアクセルが踏めてしまいます(笑)。『しなやかさ』っていうんでしょうか? 衝撃の強さは確実に減ったのですが、不安定な感じがしないんですよ〜。それにエンジンのサウンドがダイレクトに聞こえてきて、『あ〜、SRT8かぁ』って感じがしますね。あと、室内の異音がまったくなくなったのには、驚きです」
へダース交換が効いて、エンジンフィーリングも随分変わったという。それによって低速から中速にかけて一気に吹け上がるセッティングが、オーナーの求めるアメ車像にかなり近づいたのだろう。
初期の状態でも、もしかすると血気盛んな若者やアメ車初心者の方々なら、「楽しい」となったかもしれないが、やはり求めるモノは人によって違うわけで、硬ければいいと人ばかりではない、というのが現実のようである。
「元気がいいのがアメ車の取り柄」とはよく言ったものだが、元気=硬いというのは明らかに間違いであり(もちろん求める状況によって異なるだのが)、しなやかさを持たせても十分に速くて楽しいアメ車を造ることが可能なのである。しかもそういうクルマなら、上質な欧州車から乗り換えたとしても、それほど違和感を感じることはないだろう。
路面からの衝撃が確実に減って、段差や凹凸を何事もなかったようにクリアするSRT-8。柔らかくなったような印象をもたらすが、コーナリング等はしっかり締まっているから驚き。「ストリートでは、どうしても凹凸が激しいから、しなやかさを持たせないと楽しめないんですよ」と高橋氏は教えてくれた。
撮影時には異音がまったくなかったが、オーナーに言わせると「まったくの別物」になったという。センターコンソールやドアパネルはどは、知識のない方が脱着を行うと必ずと言っていいほど異音などの原因となるトラブルを起こすと言う。特に最近のクルマは、昔よりも脱着が複雑になっているから。
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