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アメ車のチューニング・クライスラーHEMIエンジン編 その3

ダッジ・チャレンジャー SMS570 スーパーチャージャー vol.3

後付スーパーチャージャーでSRTヘルキャットを超えろ!

 アメ車のチューニングと言えばマフラーやエアクリーナーを中心とした吸排気系パーツの交換が定番。最近はそれにプラスしてコンピュータのリセッティングを行ったりもするが、国産車の有名チューニングショップがやる様な大掛かりなチューニングを行うショップというのはほとんど存在しない。理由は簡単で、大排気量エンジンを搭載するアメリカンハイパフォーマンスカーの場合、元々のポテンシャルが高いだけに、ちょっと手を加えるだけで十分なパワーを発揮する事が出来るからだ。
 とはいえ、アメリカにはシェルビーアメリカンやキャラウェイといった過激なチューニングカーを制作しているメーカーやショップはいくらでも存在するし、もちろん日本にもアメ車をベースに国産のチューンドカー並みのハイチューンを行うショップは存在する。ここで紹介するのは、筆者が知る限り日本国内で最も本気でアメ車をチューニングしているナインレコードが制作中のモンスターマシンである。

更新日:2016.04.01

文/田中 享(Tanaka Susumu) 写真/内藤敬仁(Naito Takahito)

取材協力/ナインレコード(9 RECORDS USA) TEL 0480-48-7157 [ホームページ] [詳細情報]

スーパーチャージャー以外もパーツを大幅変更

 で、ここからが本当の本題(笑)。
 まず今回のチューニングベースとなるSMS570であるが、先にも書いた通りこの車両のノーマルのパワー&トルクは404.6HP&52.3kg-m。これは5.7リッター+スーパーチャージャーという事を考えれば決してハイスペックとは言えない。
 ちなみに、このSMS570には通常のSMS570とは異なるマグナソン製のスーパーチャージャーが装着されていたそうなのだが、ナインレコードではまずは元の5.7リッターHEMI+マグナソン製スーパーチャージャーの状態でどれだけパワーアップ出来るか?という事から作業&検証を開始しており、最初からの経過は下記の通り。

(1)SMS570のノーマル状態でディアブロスポーツのデバイスを使ってECUをリプログラミングしてみる。
→最高出力411.9HP&最大トルク58.6kg-m

(2)排気系(ヘッダース)を変更してディアブロスポーツのデバイスを使ってECUをリプログラミングしてみる。
→422.3HP&最大トルク61.4kg-m

(3)スーパーチャージャーをケニーベル製に変更し、ディアブロスポーツのデバイスを使ってECUをリプログラミングしてみる。
→最高出力477.6HP&最大トルク78kg-m

(4)さらにセッティングを詰めようとする
→エンジンブロー

 以上が今回の1000馬力を目指すプロジェクトの前段階。(4)でエンジンブローしたのはナインレコードとしてはある程度は織り込み済みの結果で、この時はコンロッドが千切れてしまったとのこと。ナインレコードのパワーチェックで約480HPを計測したという事は、メーカーのカタログスペックであれば大凡600HPくらいに換算出来るので、5.7のHEMIベースではこの辺が限界だったという事になる。

このSMS570については、研究の意味もあって少しずつチューニング内容を変更&パワーチェックを繰り返し、最終的に1000馬力を目指しているが、通常は最初から目標値をクリアするためのチューニングを行うとのこと。

段階毎にパワーチェックしてグラフにしているので、チューニング内容に対して数値がどう変化しているか?が一目瞭然なのが嬉しい。

ただ単にパワーが上がれば良いというわけではない

 エンジンが壊れてしまった事で、いよいよ本格的なチューニングが開始されたわけだが、実はこれはまだ現在進行形。ある程度は形にはなってきているが、1000HP&100kg-mという目標値を実現したわけではない。とりあえず現時点での大まかな仕様は下記の通り。

 まず、エンジンが壊れたといってもエンジンが粉々になってしまったわけではないので、エンジンを丸ごと交換するのではなく、ヘッドとシリンダーブロックは元々の5.7のものを使用。クランクシャフトは6.1のものをWPC処理して流用。コンロッドは鍛造でワンオフ制作。ピストンもローコンプピストンを鍛造でワンオフ制作。カムはコンプカム製に変更。スーパーチャージャーは(3)のケニーベル製(2.8LC)をそのまま使用。といった感じでエンジンの中身を大幅リニューアル。

 さらにはより多くの燃料を送り込むためにフューエルポンプはツインポンプキットに変更。インジェクターもノーマルの3倍という大容量のものに変更し、ノーマルではリターンレス式の燃料配管を新たに配管を引いてリターン式に変更。スロットルボディはオーバル製ビッグスロットルに変更。

 熱対策ではオイルパンを変更してオイル量を増やすのは当然として、エンジンオイルクーラーを増設。さらにはフューエルクーラーも追加。

 その他、増大したパワーを確実に駆動輪に伝えるために、パワートレーン系ではミッションを1000馬力オーバー対応のパラマウントパフォーマンス製5ATに変更。アクスルシャフトとデフはダイナトラック製に交換。などなど。

 ここまでは主にハードの部分。これはこれで確かな技術と経験が必要なチューニングではあるのだが、現代の高度に電子化された車両で、しかも過給器付となればこれからのセッティング、つまりソフトの部分がより重要な作業となる。実はこのソフトの部分こそがナインレコードが最も得意とする部分。
 ナインレコードの場合、アメ車に関してはECUは主にディアブロやSCTといったメーカーのデバイスを使ってリプログラミングするのだが、今回の場合は5.7 HEMIにスーパーチャージャーをポン付けしただけのSMS570→スーパーチャージャーを変更→エンジン内部のパーツを大きく変更し排気量も変更→補機類も変更という経緯を経ている車両だけに、燃料マップや点火時期、ノックセンサーの設定などをベストな数値にセッティングしていくには、何度もトライ&エラーを繰り返し行う必要がある。
 しかも今回の車両はスーパーチャージャー付。最終的なブースト(スーパーチャージャーの加給圧)を何処まで上げられるか?という課題もある。当然ながらセッティングに膨大な時間がかかる事は想像に難くない。

エンジン本体のチューニングだけでなく、フューエルポンプやインジェクターなどの燃料系、オイルクーラーやフューエルクーラーなどの冷却系も大幅に変更し、最終的には仕様に合わせてコンピュータのプログラムリセッティングする。

最高出力1000ps以上が目標ではあっても、ただ単にパワーを上げるだけが目的ではない。ナンバー付で公道を走る車両である以上、まず第一は壊れないこと。次に扱い易いことも重要なポイントとなる。

今回のこの車両の場合、ECUのデータを書き換えるのはディアブロスポーツのデバイスを使用している。なお、燃料マップや点火時期といったプログラムを効率良くリプログラミングするためには、知識や経験だけでなくセンスも重要となる。

現代の自動車はコンピューターのセッティング次第?

 ちなみに、ノーマルのECU(コンピュータ)をリプログラミングする場合、普通であればベースとなるマッピングはノーマルのコンピュータの数値を利用するわけだが、そもそものHEMIユニットは5.7も6.1も6.4も全部NAであり、スーパーチャージャーを前提にしたマッピングにはなっていない。これがSRTヘルキャットの6.2リッターHEMIユニットであれば、最初からスーパーチャージャーを前提に設計されているので、ECUのプログラムの変更もいくらかは楽なはずなのだが、今回の場合はほとんどゼロからセッティングをしていかないといけないから、その労力たるやNAのままでのチューニングする場合の比ではないとのこと。

 なお、本来であればパワーアップにともないサスやブレーキといった足回りの強化も必要となるのだが、現状では足回りはSMS570のストック状態のままで、最終的にどういった方向に仕上げるのかはオーナーと相談中らしい。

この車両に関しては、車両全体の方向性などのプロデュースはナインレコード代表の長谷川氏が担当。実際の作業はメカニックの長池氏が行っている。

SRT8をチューニングしてSRTヘルキャットは超えられるか?

 で、そもそもの発端であった「果たしてSRT8をベースにチューニングしてSRTヘルキャット以上のパワーを得る事が出来るのか?また、その際にかかる費用は?」という疑問についてだが、これについては「十分に可能。かつ現実的」というのが結論。

 あくまで「パワー」という観点のみに的を絞った結論にはなるのだが、パワーアップのためのチューニングに必要なスーパーチャージャーキットや各種パーツを揃えるために必要な金額がおよそ200〜300万円。そこに作業工賃などの技術料を加えて、その合計費用がザックリ500万円。SRT8の中古車は程度によって多少の価格差があるにしろ、初期の6.1で300〜500万円。6.4で450〜750万円。チャレンジャーは比較的高値安定傾向にあるが、チャージャーであれば300万円以下の車両もあるし、これが300やマグナムになればもっと安い中古車も存在する。
 という事は、ごくごく大雑把に言えば、高めに見積もっても約1000万円の予算があれば、SRTヘルキャット以上のパワーを手に入れる事が出来る事になるし、既にチャレンジャーやチャージャーを愛車として所有している人であれば、500万円をかければヘルキャット以上のパワーが手に入る可能性が高い事になる。

 仮に1000万円かけても得られるパワーがSRTヘルキャットと同等というのであれば、わざわざリスクを背負ってまでチューニングをしようと考える人はほとんどいないと思う。しかし、それがSRTヘルキャットを大きく超える1000馬力となれば、もしかしたら「よし!一丁やったろうかい!」という人が居ても不思議ではないと思うが、どうだろうか?(笑)

>>ダッジ・チャレンジャー SMS570 スーパーチャージャー改 vol.1
>>ダッジ・チャレンジャー SMS570 スーパーチャージャー改 vol.2

ナインレコードの場合、チューニング作業の段階ではシャシーダイナモメーターを使ってセットアップするが、最終的には実走で最終確認を行う。この辺のコダワリはいかにも『実戦派』のチューナーらしい。

なお、取材後に軽く試乗させていただいたところ、現時点でもノーマルのSMS570よりは明らかにパワーアップしており、筆者の経験に基づく感覚的な予想では、現状は2013-2014yのシェルビーGT500のノーマルと同じくらい。600ps&70kg-mくらいではないか?と感じた。

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