ピックアップトラックのタンドラとプラットフォームを共有する、トヨタ自慢のフルサイズSUV。
初代のデビューは2000年のことで、現在活躍しているモデルは2008年にフルモデルチェンジした2代目にあたる。ピックアップトラックとシャシーが共通とはいえ、こちらは多人数乗車をメインに想定されたフルサイズSUV。足回りではリアサスをダブルウィッシュボーン独立懸架に置き換えることで、快適な乗り心地を実現している。
最大の特徴はなんといってもそボディサイズ。その体躯はシボレータホにも劣らないもので、全長についてはむしろセコイアの方が長い(もっとも、向こうにはサバーバンという名のストレッチバージョンが存在するが…)。
またタンドラ譲りの台形グリルや力強い各部の造形も大きな魅力。ライバルとはひと味違うプレミアム感を漂わせている。
パワートレインはタンドラと同じく、4.6リッターと5.7リッターのV8 DOHCを搭載しており、とくに5.7リッターでは381psのハイパワーを発生させる。一方の4.6リッターも、2010年のマイナーチェンジで登場した新型エンジンとなっており、従来の4.7リッターを上回る310psの最高出力を発生させる。
組み合わされるトランスミッションはいずれも6速ATで、駆動方式にはともにFRと4WDが用意されている。
グレード展開はベーシックな「SR5」、パワーシートやパワーリフトゲートなどを備えた「Limited」のほか、2列目キャプテンシート・レザーシート仕様の「Platinum」の3種類。4.6リッターがラインアップされるのは「SR5」のみで、上位2グレードには5.7リッターが搭載される。
その昔、逆輸入車に関するムック本を作成したことがある。そのときのターゲットはずばり、インフィニティFXシリーズ。あの、小さくても流麗なフォルムとスポーティなバネを持ち合わせた、超ウルトラ素晴らしいSUVだ。
ちょうどデビューした直後のことだった。筆者は、その当時の衝撃をイチローに例えて紹介した。SUV界のメジャーリーガー・イチローが、大柄なアメリカンを駆逐する! と。
対して当時のトヨタ製逆輸入車には正直、目もくれなった。というか、あまりにも独自性なくデザインセンス悪く、どうしても二流アメリカンにしか見えず、そもそもタンドラという車名すら知らなかったこともあり、まったくの対象外。その当時は、あえて「トヨタの左ハンドル」に乗る意味を見出すことは出来なった。
ところが、さすがはトヨタ。FXシリーズの成功を尻目に、というかその以前から(だと思うが)着々と動き出していた。「独自性」をもたらしたリニューアル版の登場である。それが2007年に誕生したあの新型タンドラだった。それ以降の躍進ぶりは説明するまでもないだろう。
前置きが長くなったが、今回試乗したセコイアは、大人気トラック・タンドラとベースを同一にするフルサイズSUVである。
パッと見の印象は「もの凄いデカイなぁ」というもの。ベースはフルサイズピックアップのタンドラであるから当たり前といえば当たり前だが、タンドラと並べてボディ全体を比較すると、リアが荷台ではなくワゴンボディになっている分、塊感が強く、タンドラよりも大きく見える。
フロントマスクは、タンドラ同様に押し出し感の強いマスクとなっており、これまた「迫力」がもの凄い。この点においては「洗練」「品格」に軸足を置くキャデラックエスカレードやリンカーンナビゲーター以上と断言できる。
このクルマをひと言で語るなら、とにかく豪華。あえて後発としたセコイアには、他のライバルたちの評価が下された後にユーザーが求める機能をもれなく装備した感がある。たとえば、セカンドシートはグレードにより左右独立のキャプテンシート(7人乗り)やベンチタイプ(8人乗り)が採用される。このセカンドシートはこれまでのアメ車には無かった前後スライド機能まで備わり、クラストップのレッグスペースが確保できるのだ。
またサードシートは6対4の分割式ベンチシートで、スイッチひとつで床下に電動格納し、広大なフルフラットラゲッジスペースが出現する。リアドアのガラスがパワーウインドーとなっている点もこのクルマならではの機能である。
インテリアも機能重視のものになっており、質感が飛び抜けて高いわけではないのだが、ひと昔前の質素な空間を特徴とするアメリカンSUVと比較すれば、かなりデザインチックであり、プライス以上の満足感を得ることができるだろう。
とまぁ、第一印象はこんな感じだが、見た目の「大きい」という印象は乗ってからも変わらなかった。
インパネやシフト周りの雰囲気等はほとんどタンドラと変わらない。グレードやセレクトしたオプション内容に応じて見栄え等は変わるかもしれないが、基本的な印象は同じである。だが、乗り出して街に出ると少なからずの違いは感じられた。やっぱり「高級」である。これはあくまでもタンドラと比較した場合なのだが、車格というかなんというか、もしくは車両価格の違いとでもいおうか、走りが明らかに違う。これは恐らく、「トラック」か「SUV」かというリアの造りに起因しているのだが、セコイアの方が滑らかかつ静かである。
一方で、ライバルとなるタホやエクスペディションと比較しても、その走りの滑らかさは格上であり(さすがトヨタ製)、5.7リッターを有するエンジンパワーも確実に上回る。
街中でのドライブは、慣れてしまえば大きさも気にならない。またエンジンも低速から強烈なトルクが感じられるため、動きの鈍さや重さも感じない。走りの質に関しては、明らかに最新のSUVであり、総合力自体が非常に高く、タホやエクスペディション等のアメリカンSUVとの比較においても明らかに凌駕している部分が少なくないのだ。
大きくて大味なクルマは数あれど、セコイアはさにあらず。逆に大きいにもかかわらず、すべてにおいて緻密。そこが最大の魅力である。
一方でこれより上級のキャデラックやリンカーンが相手ともなると、さすがにそこまでの高級感は備えないが、造りの良さやおもてなしの機能美みたいなものは、さすが「ザ・トヨタ」。インフィティのような流麗なスタイルや優雅さなどは感じられないが、「本物」を凌駕する迫力と大きさを備えたトヨタの左ハンドル車としての安心感を優先するならば、セコイアの「価値」は明らかに高い。
人とは違うSUVを求めるなら、アメリカンな迫力とトヨタ製の安心感を備えたセコイアは、格好の一台となるだろう。
330,000円
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