更新日:2012.04.02
文/石山英次 写真/フォードモーター / ゼネラルモーターズ
90年代のSUVを振りかえると、それはまさに今日の黎明期とも言える時代だった。フルサイズとコンパクトというふたつのサイズはより「細分化」され、コンパクトサイズはミッドサイズとミニサイズに分かれ、フルサイズの上にはエクスカージョンのようなジャイアントサイズが追加された。
また、キャラクター付けという部分では、本来はカジュアルでスポーティさがウリのSUVに「高級化」が進んだ。装備を充実させたグランドチェロキーが、ビバリーヒルズを舞台にしたテレビCMを流すなど、それまでとは違ったアプローチが試されたのだ。
そしていくつかのメーカーが高級化のトレンドをいち早く嗅ぎつけ、商品化を進める。そう、そこで誕生したのがこのリンカーンナビゲーターである。
98年モデルとしてリリースされたこの第一世代のナビゲーターは、97年の夏に発売が開始された。アメリカ国内ではメルセデスベンツMクラスと同時期で、かなり話題となったのを記憶している。まだキャデラックエスカレードはもちろん、BMW X5やポルシェカイエンなんかが存在しなかったときの話だ。
リンカーンディビジョンを持つフォードがこの手のSUVの開発に着手したのは、グラチェロの好調な販売もあるが、自社製品でマーケットの手応えを感じていたことも関係する。たとえばエクスプローラーがそうだ。90年にデビューし、90年代の中盤には年間30万台にまで膨らんだコイツの売れ筋といえば、もっとも廉価版の3ドアモデル。だが、エディバウワーのようなゴージャスなモデルが、着実に販売台数を増やしていたことも確かだった。フォードはそうした傾向をにわかに感じていたのである。
また、高級SUV誕生の裏にはアメリカにおける税制上の変更も関連する。リンカーンやキャデラックといった高級セダン系が会社の経費として100%認められなくなったのがその要因だ。ただ、この税制には抜け道があり、トラック部門に対しては100%経費として計上できるという但し書きがあった。そこで、メーカーは高級なトラック部門のクルマをつくることでユーザーが逃げることをくい止める策を思いついたのだ……。
といった経緯でナビゲーターが生まれたと考えられる。まぁ本意はどれにせよ、様々なファクターが重なり合ったと考えるのが妥当ではないだろうか。
ちなみに、リンカーンはナビゲーターの誕生で、その年長年販売台数で負けていたキャデラックを抜いてしまった。
一方でキャデラックも黙ってはいない。彼らは2000年モデルとして用意していたエスカレードのプロジェクトを約1年半前倒し、98年に99年モデルとしてエスカレードをデビューさせることにした。初代エスカレードがGMCユーコンデナリとほぼ同じ内容だったのはそのためであり、半ば強引に発売に至ったのである。
実際のところ、当然ながらエスカレードは準備されていた。が、ここまで早く販売する計画ではなかった。99年のシルバラードを待って、そこから取り組もうと考えていたからだ。
ところが、ナビゲーターが予想以上にマーケットに受け入れられ、販売台数をどんどん稼ぎ出した。で、急遽タホの上に位置するGMCユーコンデナリに手を加え、初代エスカレードを登場させたのだ。初代はパワーユニットやサスペンションまわりはタホと同じ。外観でマスクやバンパー、フェンダー類、内装でゼブラノウッドを使った以外は、ほぼ共通パーツを使用する。これといって新しいところは何もなかった。そのため、ナビゲーターの圧勝を盛り返すための原動力にはまったくならなかったのだ。
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