現代のアメ車は、昔ほど壊れなくなったというのは周知の事実。というか、昔からアメ車は丈夫であって、適切なメンテナンスが施されているクルマは今も昔も壊れない。だが…。そうは言っても機械モノだけあって「絶対」ということはない。特に2005年以降のアメ車は、コンピューター化が進み、人の手の届かないところで原因不明のトラブルを起こすこともある。
ということで、一般整備から難題修理までを的確にこなすクワッドドライブに、同社に入庫したアメ車のトラブル事例を聞いてみた。
「アメ車だから壊れる」ということが言いたい訳ではなく、実際に街を走っているアメ車に “何が起こったか” を知ることで、事前の “予測” と “予防” と “対策” を図るのである。
★クライスラー系 エンジンマウントの劣化★
クライスラー系エンジンマウントの破損例である。車体フレームに着色剤が付着していたら要注意という。写真がエンジンマウントが破損した合図。
エンジンマウント内部には細かい振動を吸収するために特殊な液体が封入されている。マウントが破断すると液体が漏れ出し画像のような状況になる。HEMI系エンジンはトルクフルなため、走り方にもよるが、早い場合で3万キロ前後で破損するケースもあったという。
★ダッジラムバンの修理★
異音修理で入庫したダッジラムバンである。原因はフロントのアッパーアームのブッシュから出ていたという。車両からアッパーアームを外して専用プレスでブッシュを交換を行うことで対処。
ブッシュ交換作業は地味に大変だが、作業後は激変した走りに驚くこと間違いない。足回りのメンテナンスとしてはブッシュ以外に、各ボールジョイント、アーム類、スプリング、ショック等の定期点検を行うことが望ましい。
★2013年型 ダッジチャージャーの修理★
ダッジチャージャーの電動パワステが効かない症状での故障診断である。故障の原因はセンサーからのシグナルに不具合が生じ、フェイルセーフでステアリング機能が停止してしまったこと。このフェイルセーフとは、なんらかの装置・システム において故障・誤動作等による障害が発生した場合、安全策として安全に基づいた制御を行うことである。
ちなみに、最近は電動パワステ車両が増えてきているが、この電動にすることでエンジンへの負荷を低減させ、車速や路面からの負荷に応じてステアリングレートを細かくコントロールできるメリットがある。従来のパワステはファンベルトでポンプが駆動し、油圧で機能していたが、エンジン回転の影響を受けやすいのが欠点だったから、この先電動パワステが増えていくことが予想される。
★O2センサーの重要性★
O2センサーとは、マニホールド、触媒後に付いていて、ECUがエンジンをマネジメントする上で重要な情報源となる。
O2センサーは大きく分けて下記の2つの役目を果たしている。
①排ガス中の酸素濃度を測定する。
②触媒の浄化状態を監視する。
①のセンサーはマニホールドに装着されており、最適な燃料噴射量にコントロールするのに必要である。②のセンサーは触媒後に装着されており、触媒の機能が悪化するとエンジン警告灯を点灯させる。
今回はエスカレードのセンサーを交換。燃費を悪化させないためにも、センサーのトラブルが起きている車両は、修理を行うことが必要である。
★キャデラックエスカレードの修理★
メーター内の警告灯が多数点灯したことで入庫。エスカレードは車両全体で25前後のコンピューターが装着される複雑な車両という。
早速、GM純正テスターにて診断を行うと、各コンピューターとの通信ができずデーターバス系のトラブルであることが判明。各配線の点検を行い絞り込んでいくと、エンジンルーム内のハーネスカプラーの配線に異常が見つかった。
その配線はコンピューター間のデーターを通信している大事な配線だった。たかが配線だが、不良配線を車体全体から探し出す作業はとても大変である。
★トヨタセコイアの修理★
エンジンチェックランプ点灯で入庫したトヨタセコイア。コンピューターの制御プログラムの問題だったため、コンピューターのアップデートで対処。
★06年型 フォードマスタングの修理★
このマスタングは、ウィンカーが一切出なくなる症状で入庫。診断した結果、リアのライト周りを日本仕様に変更する際の作業ミスによりGEM(ボディコントロール系のコンピューター)が故障していることが判明した。修理工場を何箇所か廻った後に最終的にクワッドドライブにたどり着いた1台だった。
日本仕様への変更は電気的知識、応用力、コンピューターの知識が必要であるという。安易な作業は人為的なミスを誘発する可能性もあるため、専門知識のあるショプでの作業が必要である。コンピューターを交換し、正しいライト周りの改善を行い完璧なコンディションに戻りました。
★ダッジチャレンジャー SRT8 392の修理★
2013年型チャレンジャー SRT8 392がチェックランプを点灯させたため入庫。そのトラブルには、カムポジションセンサー系のエラーコードが入っていたという。ただし、入庫時点では何も症状が出ていない。
とりあえず一週間、毎日30分程度のロードテストを行ったがそれでも症状がまったく出ないため、今度は徹夜でのロードテスト&診断。
すると、約3時間走行後にようやくエンジンチェックランプが点灯し、そこから故障診断のスタートとなった。その後約1.5時間の診断作業から原因を特定!
追加オイルクーラー用のサンドイッチブロックと指定外のオイル粘土指数(392HEMIの指定は0W-40))の使用が原因だった。
サンドイッチブロックとは、エンジンブロックとオイルフィルターとの間に挟み込み、追加オイルクーラーや油温センサー装着時に使用するアダプターである。そして気筒休止システム(MDS)やバルブタイミングは油圧でコントロールされているため、粘性の違いがエンジン制御に影響を及ぼすことがある。
粘性の違いにより、このサンドイッチブロックがオイルの流れの抵抗となり流量が制限され、パーシャルでの走行時に油圧が規定値よりわずかに低下するという。すなわち、だからこそ、微妙にタイミングが合った時だけエンジンの警告灯が点灯したのである。
カムシャフトのタイミング(進角、遅角)は油圧でコントロールされているから、油圧低下が原因でバルブタイミングに異常が発生し、エラーコードがコンピューター内にストアする仕組みである。
今回の対策としては、サンドイッチブロックのオイル流量を392に適合するように加工するか、ブロックを諦めるかという選択肢となる。さらにオイルは指定粘土のタイプに抜き換える。
原因を知ってしまえば簡単なトラブルであるが、カムポジションのエラーコードから油圧の異常、さらにオイル粘土まで辿り着くことが、クワッドドライブならではの技術力と経験値となるのである。
<関連情報>
>> キャデラックCTS-V カスタム プロジェクト VOL.1 を見る
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