外観と内装のチェックが一通り終ったところで本題の試乗に入る。再びドライバーズシートに腰を下ろし、まずはシートポジションを合わせる。シートの左下にあるパワーシートのスイッチとステアリングのチルト&テレスコピックを調整する。8Wayのパワーシートはオーソドックスなタイプで使い勝手は上々。比較的すんなりとベストに近いポジションにセットできた。レザーステアリングは握りがやや太く、小柄な日本人女性には少し大き過ぎるかもしれないが、筆者的には問題なし。
シートベルトをし、ブレーキに軽く足をかけエンジンをスタートする。エンジン音やアイドリング時の振動についてはとくに語るようなことはなし。普通のトヨタのV6といった感じで可もなく不可もなしといった感じである。停車したままの状態でウインカー、ハザード、ライト、パワーウインドーといったスイッチを一通り動かしてみるが、これについても特筆するようなことは何もなし。いたって普通。唯一感心したのはアルパインのナビゲーションで、まるで純正オプションのようにすっきりと違和感なくインストールされている上に、バックモニターにもきちんと連動されており、この辺の完成度の高さはさすがにエクスプライドといった感じを受けた。
スイッチ類の確認が終ったところでいよいよ試乗を開始する。ATセレクトレバーをDレンジに入れ、サイドブレーキを解除。ゆっくりとフットブレーキを離し、じわっと前進を開始する。動き始めには少しクルマの重さを感じたが、徐々にアクセルを踏み込んでいくと実にスムーズに加速していく。シエナの車重は約2トン。決して軽いクルマではないが、最高出力266hp、最大トルク245lb-ftを発揮する3.5リッターV6ユニットは、重量級のシエナを走らせるのにも必要十分といった印象。とくにパワーがあるとも思わなかったが、逆に不足も全く感じなかった。現行シエナには2.7リッター直4ユニットの設定もあるが、V6搭載車に乗った限りで言えば、直4だと少しパワー不足を感じるのではないか?という気がした。
現行モデルから採用された6速オートマチック・トランスミッションの完成度は非常に高く、変速タイミングや滑らかさなどは秀逸の一言。アメリカと道路交通事情が大きく異なる日本の市街地でも、走行時に変速に起因する違和感は一切感じなかった。この辺は「USではあってもさすがにトヨタ車」といったところだろう。
パワーステアリングの重さには好感が持てた。最近のクルマの中には軽過ぎるパワステの設定に違和感を覚えるモデルも存在するが、シエナの場合、かなりがっしりとした操作フィールで安心感がある。この辺は好みの問題ではあるのだが、筆者的にはある程度大きなクルマにはそれなりの重さが欲しい。
ステアリング操作に対するタイヤの応答性や路面からのインフォメーションについては至って普通だが、シエナのハンドリング性能自体は悪くない。というか、ミニバンとしてはかなり良好な部類。ボディサイズがサイズだし車重もそれなりに重いので、慣性モーメントはそれなりに大きいはずなのだが、日本のトール系ミニバンよりも低い全高と低重心な設計が功を奏してか、コーナーリング時に安定感=安心感があるのだ。今回の試乗車の場合、ホイールが軽量なWORK製アルミホイールに交換されていたことも、コーナーリング性能の向上に一役買っていたかもしれない。
インプレッションの最後は乗り心地について。実は今回の取材は、ショップで車輛を借り受けてから最後までずっと自分でステアリングを握っていたので、セカンドシートやサードシート乗車時の乗り心地は試せなかった。したがって、ここで言う乗り心地はあくまでもドライバーズシートで運転しながらの感想となる。
今回約2時間ほどシエナに試乗した印象としては、「乗り心地に関してはごく普通のミニバンだな」という程度。高速道路などを使ってロングドライブをしてみればまた違った感想も出てくると思うが、市街地での短時間の試乗では、特筆すべきポイントは正直とくに見当たらなかかった。
とはいえそれだけではあまりに不親切なので、もう少し詳しく書いてみると、例えば日本で最も売れ筋のミニバンであるノア&ヴォクシー、セレナ、ステップワゴンといった2リッタークラスのミニバンと比較すれば、シエナの乗り味はあらゆる面で上質。軽快感以外で劣っている要素はないと思われる。しかし、逆にアルファード&ベルファイヤやエルグランドといったラグジュアリィ系ミニバンの上級クラスと比較した場合、車内に入ってくる走行音やシート造り、インテリアの質感などに少し不満を感じる人もいるかもしれない。という感じを受けた。
日本というのは世界一のミニバン大国である。下は軽自動車から上は3.5リッターの高級ミニバンまで、あらゆるクラスのミニバンがユーザーの使用目的に応じてラインナップされている。経済性に特化したモデルもあれば、積載力や使い勝手に重点を置いたモデルもあるし、高級感を全面に押し出したモデルもある。それだけ需要があるということで、要するに日本人はミニバンが大好きなのだろう。
それに対してアメリカという国はミニバン不毛地帯。ミニバンの発祥地であるにも関らず、ビッグスリーのミニバンですぐに思い浮かぶのは、クライスラーのボイジャーか既に絶版となって久しいシボレー・アストロくらいしかない。おそらくアメリカ人にとって、ミニバンというのは重要なカテゴリーのクルマではないのだろう。
そんなアメリカで発売されているモデルだけに、シエナは1台でユーザーの様々な要望に応える必要がある。おそらくシエナの開発陣は、ボディサイズ、乗車定員、積載力、使い勝手、パワー、乗り心地、燃費(経済性)といった要素を高次元でまとめようとしたと思われる。そしてそれが十分に成功したことは、今回の試乗でよく分かった。シエナというクルマがバランスよくまとめられた完成度の高いミニバンであるのは間違いない。ミニバンとしての総合力で言えば、シエナは日本で発売されているどのミニバンよりも高いと思う。
しかし、汎用性を追求する(1台のクルマに色々な要素をバランスさせる)ためには、どうしてもベストよりベターを選択することが多くなる。そういう意味では個々の要素の完成度の高さにおいて、シエナが日本のミニバンに及ばないのもまた仕方ないところ。要は自分がそのクルマに対して何を求めるか?ということだろう。
円高が続く現在、逆輸入車に限らずアメリカからの輸入車は非常に買い得感が高い。シエナの車輛本体価格は最も安いベースモデルで330万円前後。SEで400万円前後。オプションや保証内容などによって多少は異なるが、乗り出し価格は400万円以下から選べる。
逆輸入車というのは、所有するだけで独特の優越感を感じることのできる不思議な魅力があるが、シエナの場合はミニバンとしての完成度が高く、道具としての使い勝手も良好。コミコミ300万円以下といった2リッタークラスのミニバンをターゲットにするような人には向かないと思うが、アルファードやエルグランド、エリシオンやオデッセイといった国産高級ミニバンを求める人であれば十分に検討する価値がある存在だと思う。
>> トヨタ・シエナ 試乗レポート part1へ
>> トヨタ・シエナ 試乗レポート part2へ
>> トヨタ・シエナ の販売車両を見る
REGULAR ARTICLES
ハーレーダビッドソン尾張清須
REGULAR ARTICLES
ハーレーダビッドソン尾張清須
REGULAR ARTICLES
ハーレーダビッドソン尾張清須
REGULAR ARTICLES
ハーレーダビッドソン尾張清須
12,810円
PERFORMANCE
6DEGREES
17,298円
PERFORMANCE
6DEGREES
18,420円
PERFORMANCE
6DEGREES
2,090円
MAINTENANCE
6DEGREES